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慣れろ、おちょくれ、踏み外せ 

著者の二人が創作物や実際の事例も交えながら、二人がLGBTQ+やフェミニズム、ジェンダーなどを取り巻く社会に現在抱えているモヤモヤや理想を丁寧に言語化して語りあっている一冊だった。

会話の中で、森山氏は問題に対して学術的な観点(であってるかな?)で話しているのに対して、能町氏は自身の心情を思いのまま話しているという印象を受けた。(どちらがいいとか言いたいわけではなく、どちらも重要であり、軽視してはいけない点)

ただ、一点文句をつけるとすれば、装丁や帯が若干過激かつマジョリティに対して喧嘩腰では?と思ってしまった。界隈の人ならそれくらいでいいだろと思うだろうし、実際私自身も中身が喧嘩腰である分には別にいい(実際チョイチョイ喧嘩腰なとこはあったし)んだけど、私としてはこの本自体が能町みね子氏というネームバリューのある方(この言い方も本当は良くないけど)を起用しているのもあって、内容的にもこれまで全然興味のなかったマジョリティ側にクィアのことを知ってもらえるきっかけになりうる本だと思ったので少し勿体ないなあ…と思ってしまった。

埋没した世界 トランスジェンダーふたりの往復書簡 

トランスジェンダーである著者二人が性別移行を経験して男と女の社会的に置かれている立場や状況の違いの言語化が秀逸だった。

個人的には、的確かつどこか俯瞰的に見ている感じでの言語化はこの二人が単にトランスジェンダーだというだけではなく、五月氏は現在女性として生きてはいるものの実際にはノンバイナリーであること、周司氏は現在男性として生きているけれど明確な性同一性は持たないことや、二人とも性別二元論や異性愛者至上主義、モノガミー至上主義により苦しい思いをして、それらを小馬鹿にしていることからきたように思えた。

マストドンにいるゲイと繋がりたい

ハンチバック 

社会的に性とは結び付けられにくい清い存在として見られがちな障害者女性である(そして実際清い人生を送っている)主人公のゲスいとも言える性への執着心が、「生きづらい世の中になった」と嘆くヤフコメ民や文化人、スポーツ界をマッチョだと毛嫌いしながらもそんなスポーツ界よりも遥かにマチズモの象徴である紙の本に執着する読書文化といった社会全体を薄ら小馬鹿にしているようで小気味よかった。

その中でも中絶への強い羨望が印象的だった。単に中絶を巡って衝突していた女性団体と障害者団体の両団体や古くなっても変わらず美しいままのモナリザのような存在への当てつけというだけでなく社会全体への抵抗のように私には思えた。

布団の中から蜂起せよ 

アナーカーフェミニストである著者が抱える社会への不満、そしてその社会へのささやかな抵抗やそれでもそんな社会に迎合してしまう部分について痛いほど伝わってきた。

他にも自身が抱えている暴力性や一見政治性の無さそうなイベント事や創作物へのモヤモヤを余すことなく書き出していて面白かった。

特に一番好きなのは、安倍晋三の私邸に武装して侵入した女が逮捕された事件に対して興味を抱いたところ。確かに無差別殺人とはいっても大体狙われるのは女性や子どもといった「狙いやすそうな」人たちが犠牲になるケースが多い中、わざわざ権力者を狙ったのは興味深いしその件については私自身も感心した。(もちろん、行動は褒められたものではないけど)

社会に不満を抱えているけれどもうまく吐き出せない人にはぜひおすすめしたい本。

トランスジェンダー入門 

トランスジェンダーに対してよくある誤解や「素朴な疑問」に対して丁寧かつわかりやすく答えるだけでなく、シスジェンダーにとっては問題なく過ごせていても当事者にとっては障壁となる場の説明や、特例法や医療の問題点も解説していて「入門」として適切な本だった

特例法は文字通り救われた当事者もいたんだろうけど、私的には戸籍や異性愛至上主義といった問題点から目を逸らしていて当事者を家父長制の枠からはみ出ないようにした法律だと思ってるし、医療において特に自分史の必要性ないだろと(医療に対して)言いたくなる。
本にも書いてある通り大事なのは今までの人生よりもこれからの人生だし、第一医者からジャッジをもらう必要性を感じない。

一方で、当事者といっても多種多様だから障壁の部分とかで一概に当事者はそうみたいな書き方や、ノンバイナリーの説明が申し訳程度だったのが気になった。

Fedibird

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