以前軽く触れた Queer Games Bundle 2023 の販売が開始されました。 https://itch.io/b/1812/queer-games-bundle-2023 クィア当事者が作ったゲームのバンドル(無料作品もあります)。最低価格60ドルからですが、10ドルからの Pay What You Can Edition(投げ銭版)もあります(内容に差はない模様。少なくとも収録作品数はいっしょですね)。 https://itch.io/b/1813/queer-games-bundle-2023-pay-what-you-can-edition
🏳️🌈 Queer Games Bundle 2023 is live now! 🏳️🌈
Over 450 games, tabletop games, books, zines, albums, and art, from nearly 300 queer creators -- all for just $60, the price of one AAA game.
「アンドロイド娼婦は涙を流せない」のナタリア・テオドリドゥさんはゲーム(インタラクティブフィクション)も作っていると紹介文にありました。作者の方のHPにまとまっていますね。 https://www.natalia-theodoridou.com/games--if.html Choice of Games から出ている An Odyssey: Echoes of War は "A queer, feminist, interactive retelling of The Odyssey" とのことで、気になります。(ストアページ:https://store.steampowered.com/app/1199220/An_Odyssey_Echoes_of_War/ )
だいぶ前から手をつけていた『ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス』も読み終えました。ギリシャは独特な土地で、おそらく古典ギリシャ語のほうが現代ギリシャ語よりも読めるひとが多いという奇妙な言語/歴史状況にありますよね。いくつかの作品では実際にそういう歴史的重層性が扱われていて、しかもそれが観光を通じた世界的な階級性だったり、移民問題を通じたアイデンティティの問題だったりといった問題系と響きあっています。とにかく多くの作品を通じてさまざまな形で階級の話がされているという印象で、どれも面白かったです(と言っていいのか……)。
短編集ですし、元となった企画の性格を考えれば当然というべきですが、SF的な設定は基本的には舞台装置としての役割が主で、それ自体を深めるタイプの関心は薄そうですね。多くの作品がなんらかの喪失をSF的に組み込んでいるのが印象的で、これもおそらく上で書いたようなことと関係するのでしょう。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』感想(おおきなネタバレあり)
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』読み終わりました。相変わらずの読みやすさですね。悪くないとは思うのですが……『火星の人』のほうが好きではありました(『アルテミス』は未読)。これは主に、コンタクトものとしての側面があまり好みではなかったということに起因すると思います。擬人的に過ぎるように感じてしまうというか……まあ、バディものとして書くためにはしょうがないことで、コンタクトものとしてハードにやるつもりはないというのも理解はできます。作中で一応理由付けもされますし……それにしても言語まわりはちょっと素朴に過ぎないかとも思いますが、これはこれで「理解不能であってほしい」という私のファンタジーかもしれません(レムの読みすぎ?)。ともかく、大前提となる設定からしても既存の科学をおおきく踏み越えるところから始まっており、ウィアー節を楽しむことに特化した作品という印象です。
なんとなくコンタクトものづいたので次に読むのは本棚に入れたままだったテッド・チャン『あなたの人生の物語』でしょうか。
Project Gutenberg has joined the Fediverse!@gutenberg_org
テキストアドベンチャーといえば、昨日SNSの投稿がきっかけでイェイツの The Second Coming を読んだのですが、そこから派生作品を眺めていて Slouching Towards Bedlam というゲームを知りました。 http://www.peccable.com/if/slouching/ 異言を通じて感染する精神ウイルスがでてくる、ロンドンのベドラムが舞台のスチームパンクということでかなり興味を惹かれています。プラットフォームはZ-machineで、ゲームファイルも上のリンク先で配布されています。ただ、テキストアドベンチャーは体験としてはかなり好きなんですが、非母語話者にはなかなかしんどいんですよね。
Pentimentが日本語化されたとのこと。16世紀のバイエルンが舞台の歴史ミステリADVです。 https://store.steampowered.com/app/1205520/Pentiment/
残念ながら日本語版だとフルに体験することはできなさそうなんですが、ラテン文字のフォントデザインが非常に凝った作品でもあります。話者の階層によってフォントの種類が違い、しかもそれを新たにデザインしているようです。フォント開発を担当した人がその経緯を書いてくれています。 https://lettermatic.com/custom/pentiment
手書き感を出すために一つの文字にいくつもヴァリエーションを用意したり、ブラックレターは現代では可読性が低いのでローマン風にしたりなど、細かい仕事の様子が説明されています。文字に親しみのない人用のフォントをデザインするにあたって、日頃きれいな文字を書くのに慣れたレタリングデザイナーが左手(非利き手)を使ったというのもおもしろいですね。
Nightmare Temptation Academy(18+)
テイラーさんが何度か触れていたNightmare Temptation Academyを触ってみましたが……凄いですね。まず無料ゲームでファイルサイズが7GB越えというのも圧倒的ですが、冒頭からオリジナルのMVが流れて、以降人物が登場するたびにまた別のMVが始まるので納得ではあります。ちなみにダウンロードしたファイルの解凍が最初うまくいかなかったのですが、7zipを使うとできました。
ゲームとしてはアポカリプティックな高校を舞台にしたデーティングシムとなるんでしょうか。ゴスというのかエモというのか……あまり詳しくないのであれですが、ある種の高校文化を煮詰めたような趣があります。そしてそれがまあ言ってしまえばものすごく悪趣味な形で提示されており、極端に露骨なゴア描写やスカトロジックな要素が過剰に充満しています。ちょっとあまりにもという感じで、私は二日目あたりで諦めざるを得ませんでした……当然18歳以上対象です。
ちなみに、Good writers are perverts は Domino Club 名義で発表されています。Domino Club は匿名で行われるゲームジャムシリーズ……と言えばいいんでしょうか。 https://dominoclub.itch.io
Queer Games Bundle 2023の販売開始が近づいていますね(6月1日から)。クィア当事者の作るゲームを集めたバンドル(必ずしもクィア性そのものがテーマになっている必要はない)で、集まったお金は制作者にわたります。 https://itch.io/jam/qgb23
バンドルのレギュレーションとしてはテーマは自由なのですが、『Good writers are perverts』 https://dominoclub.itch.io/good-writers-are-perverts は作者のクィアな欲望に基づく制作を称揚するマニフェスト的な作品で、じっさい収録作の多くがそういった性格をもつかと思います。この場合の欲望とは必ずしも性的なものではなく、「ゲーム的にクィアな欲望」というものもあるでしょう。ともかく、他人の欲望を経験する装置としてのゲームという位置/価値づけは共感するところが多いですね。
コメント欄を見ると、この作品はオーガナイザーの一人であるテイラーさんの要望もあってバンドルに収録されたようです。そのコメントにある「QGBは、それぞれの年のゲームにおけるクィア性を写すスナップショットかタイムカプセルのようなものと考えています」という文が印象的です。
88 がネオナチのシンボルになってるの、アハトアハトかと思ったらHeil Hitlerの頭文字(H=8)からなんですね。https://www.adl.org/resources/hate-symbol/88
Japanese gamer, translator(EN/FR etc.), home cook
ゲームを紹介したり日本語化したりもしてます