新しいものを表示

〝外に出してくれ! 自分の考えが聞こえてくる。だが閉じ込められているわけではない。獄中にいるわけではない。ここよりも〝外〟なんてありうるか?〟
マーガレット・アトウッド『オリクスとクレイク』より

アンナ・カヴァン著 安野玲訳『眠りの館』(文遊社)を頂きました。自伝的エッセイと〝夜の言葉〟で書かれた散文詩的な小説が交互に綴られた、白昼夢を見ているような本で、すばらしいです。カヴァン自身は、本書を『アサイラム・ピース』と対をなす連作短篇集として捉えていたそう。

〝昼のあいだわたしはずっと夜の世界に帰る時間を、館での密やかな生活という現実へと帰る時間を、待ちわびながら過ごしました〟

訳者あとがきで触れられていた、アナイス・ニン『未来の小説』のアンナ・カヴァン評も読み返した。

わたしは『服をめぐる』22号に掌編を寄稿しています。KCIの公式サイトでもお読みいただけます。

kci.or.jp/publication/public-r

KCI(京都服飾文化研究財団)の広報誌「服をめぐる」24号、「一人一品」が歌人の大森静佳さんで、選ばれた三点の収蔵品と短歌によるイメージの膨らみがすばらしいです。
1810年頃の乗馬服に添えられた歌がすごい…
〝青空の底を駆ければいれかわる馬の瞼とわたしのまぶた〟――

久山宏一訳 芝田文乃訳 スタニスワフ・レム著『捜査・浴槽で発見された手記』(国書刊行会)を、訳者の芝田文乃さんから頂戴しました。『捜査』は持っていたのですが、『浴槽で発見された手記』は手に入らず、図書館にもなく、長年読みたかった作品なのでした。ありがとうございます。すごく楽しみ。解説は沼野充義さん。3月11日頃発売だそうです。

夏来健次編訳『ロンドン幽霊譚傑作集』(創元推理文庫)を頂いて読み終えたのですが、どうして訳されてなかったの…! と驚くくらい面白かったです。著名なウィルキー・コリンズから、準男爵で法廷弁護士の唯一世に出た創作まで、ヴィクトリア朝に書かれたロンドン舞台のゴースト・ストーリー全13篇中、12篇が初訳。語り口の良さで、どれも引き込まれました。

どれも面白いのですが、何百年も絵の中に潜み、再び自分の存在に気づいてくれる相手を待ち続けた女性との束の間の愛を描く「黒檀の額縁」や、出版社社長の元を訪れる幽霊となった女性作家のキャラ立ちがよすぎて笑ってしまう「シャーロット・クレイの幽霊」など印象的でした。あと特異なのが、姿の見えない、でも実体のある幽霊が現れ取っ組み合う「ウェラム・スクエア十一番地」で、描き方が正に透明人間なんですね。面白い…。

現在『るん(笑)』のKindle版が〝このタイトルは現在ご購入いただけません。〟となってますが、配信がなくなったわけではなく、システム障害による一時的な現象のようです。

三月三日は上巳の節句ですが、『奏で手のヌフレツン』には初歯(ういし)の節苦や、五月(いつき)の節苦、腿(もも)の節苦など、痛みに関する儀式がいろいろ出てきます。痛みに耐えるほど苦徳(くどく)が高まると考えられている世界です。よろしくお願いします。
QT: fedibird.com/@dempow/111459371
[参照]

酉島伝法  
『奏で手のヌフレツン』の見本ができました。むちゃくちゃ格好いい……! 装丁は川名潤さんが手掛けてくださいました。太陽が歩いて巡る空洞世界に住む人々の、数世代にわたる物語です。河出書房新社より12月4日頃発売。

ダムで沈められる前に、言葉を沈められてるんですよね……

スレッドを表示

マルコ・バルツァーノ著 関口英子訳『この村にとどまる』(新潮クレスト・ブックス)、素晴らしかった……! 家族や村の過酷な運命を遠くにいるはずの娘への手紙として書かれた物語で、その語りかけるような言葉はページごとに書き写したくなる表現に満ち、最後まで引き込まれ続けました。

舞台は北イタリアのチロル地方の、ダム湖に沈んだ実在の村(徹底した取材を行ったそう)イタリアのファシストたちに母語を奪われるなか、ダムの建設計画が立ち上がるも、そんなこと起きるわけがない、と一部の村人以外は誰も気にとめない。ファシストから解放してくれるかに見えたナチスは移住政策を行って村人を分断していく。戦争が終わった後も、ファシストと変わらぬ企業がダム事業を蘇らせて強行しようとし――そんな激動のなか、語り手の女性は静かに抗い続ける。

言葉の持つ力と無力さが綯い交ぜになったような大きな余韻のなか、読者である自分もまたその渦中にいることを気づかされます。

堀晃さんの最近の日記を読んでたら、「梅田地下オデッセイ」の舞台を堀晃さんと歩く企画が行われたらしい。
sf-homepage.com/mad-j.html

これは以前、漫画『スティーブズ』原作の松永肇一さんが作ってくれた、『皆勤の徒』タロットカードです。

電子版のみですが、『皆勤の徒』設定資料集『隔世遺傳』もございます。

スレッドを表示

もし「皆勤の徒」短編版がお気に召しましたら、空から無数の生き物が降ってくる学園ものや、昆虫ハードボイルド、もふもふ隊商ものが連作短編として加えられた文庫版『皆勤の徒』もぜひ。
QT: fedibird.com/@dempow/111979766
[参照]

酉島伝法  
「東京創元社 短編SFはおもしろい!」という電子書籍の100円均一セールが主要電子書籍サイトで行われています。わたしの作品では「皆勤の徒」短編版と「黙唱」が対象です。3月7日まで https://k-kinoppy.jp/tokyosogensha/SF64_240223/web/

勝山海百合さん翻訳のオガワユキミさんの短編「さいはての美術館」が掲載されているのですが、扉絵が『金星の蟲』装画のねじれさんで、すごくいい…。

スレッドを表示

『SFマガジン4月号』の特集は「BLとSF2」(監修 瀬戸夏子 水上文)。書評コーナーでは、あわいゆきさんが『奏で手のヌフレツン』について書いてくださっています。〝読者の固定観念を鮮やかに覆す球地の世界観〟連載第47回となる「幻視百景」では、ある惑星の希少な生き物を描きました。

伊達聖伸 木村護郎クリストフ編『世俗の新展開と「人間」の変貌』(勁草書房)をお送りいただきました。目次を見ただけで、ちょうどいま関心のあることにつながるテーマがいろいろ。

小川公代さんが、『クララとお日さま』『her』『オーランドー』などかから、「ポストヒューマンとAI少女」というテーマに迫っておられ、書くことにおける流動的な自己についての考察が興味深かったです。 [添付: 5 枚の画像]

古いものを表示
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。