高校演劇の脚本は、多くは顧問(中高年)が書いて審査委員(中高年)が評価するためのものなので、必ずしも高校生の口話のリアルを反映しているとは限らず、また、仮に生徒創作の脚本であってもやはり高校生が審査委員(中高年)に評価されるために(上位校であれば実際されているわけである)書いたものであるという点に注意が必要で、さらに言えば現代の高校生は、創作物だけでなくSNSなどで流通するフィクション化された現実を含む「高校生を描いたフィクション」に触れながら高校生をしているわけであって、高校演劇部の生徒はとりわけそうした影響は多いだろうと考えられるし……とまでいくと複雑になりすぎ、リアリティの基準点とすべきは想定される読者のほうになりそう。(早口)
『圏外通信2024転』(反‐重力連盟)読んだ。毎回全作読んでいるわけではないものの、反重連の既刊がみなそうであるように、今回も全作書きたいものを書いているのが伝わってきて、正統に同人誌という趣きがあり良かったです。一方で、同じコインの裏面として読者としては不親切を感じもして、たとえば分量を1.5倍せめて1.2倍くらいにしてみるとどうでしょう、というワガママは言いたくなりました。こちらが感想を抱く前に次の展開が来てしまい、それをアイデアと筆力で読ませてしまうのは凄いのですが、とはいえ物寂しい感じは残るという。何回も読めって? そうかもしれない。その点で、ショートストーリーとして釣り合いが一番良かったのは佐久間真作「死を回避する昆虫について」でした。
あと『ガール・ピクチャー』は『ブックスマート』とほぼ同じ「意味」のシーンで同じ曲(Perfume Genius「Slip Away」)がかかっていたので笑いました。どちらも名シーンになっていましたね。
作家(阿部登龍)。第14回創元SF短編賞受賞作「竜と沈黙する銀河」(紙魚の手帖vol.12)、「狼を装う」(同vol.18)。SFとファンタジーと百合とドラゴンとメギド72が好き。
お仕事のご依頼は東京創元社までどうぞ。