「今回の作品では『○○』(過去作)で書き残した△△というテーマを~」みたいなコメントを見て、そういうもんかね~と思っていましたが、そういうもんですね。
近作「狼を装う」でいうと、「群れ(プライド、パック、など)」のモチーフを描きたかったのですが、現在の尺に収めるには自分の能力が足りず、十全には書ききれなかったと思います。ごく最初期のメモにはこうありました。
“毛皮を剥かれた犬たち、獣たちがたどってきた道、毛皮たちのシスターフッド:毛皮と人のシスターフッド”
本来であれば、時間的な広がりも、空間的な広がりも、もっと書きたかった――たとえば毛皮産業史、服飾史、ラストで示唆した「仲間(ウェアード)たち」――が、そうすると単独の短篇で収拾がつけられないのは、プロットの時点で明らかでした。よって、多くは飛び道具的な方法で触れるにとどまりました。それが成功していたかどうかは読者に委ねます。
「群れ」のモチーフは、単に自分の主要な関心事である「動物と人間の関係」だけでなく、現在の自分の人生実感にも繋がるものなので――ル・グウィン先生も群れ(プライド)としてのワークショップに言及しておられる――どこかで一度は、そして何度でも取り組みたいものです。
「第2回カモガワ奇想短編グランプリ」
厳正なる審査の結果、大賞1作品、優秀賞2作品を以下の通り選出いたしました。
大賞 レターパックで現金送れ/は詐欺です「くるぶし考」
優秀賞 春眠蛙「潰しに関する覚え書き」
優秀賞 藤井佯「幽玄の惑星」
【リマインド】今日までです。わたくしはこれから観ます。
QT: https://fedibird.com/@abe_dragonslay/113218531627304420 [参照]
今年の7月に出ていたパオロ・バチガルピの新刊、異世界ファンタジーで『ゴッド・ファーザー』や《氷と炎の歌》系で経済と外交のシノギの話らしいです。キーアイテムはドラゴンの眼の化石だそうですよ。
https://www.amazon.co.jp/Navola-novel-Paolo-Bacigalupi/dp/0593535057
作家(阿部登龍)。第14回創元SF短編賞受賞作「竜と沈黙する銀河」(紙魚の手帖vol.12)、「狼を装う」(同vol.18)。SFとファンタジーと百合とドラゴンとメギド72が好き。
お仕事のご依頼は東京創元社までどうぞ。