『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』、これは一切の誇張なく言いますが、劇場で5回くらいマジ泣きしました。べつに泣かせれば偉いわけじゃないですが、この5回全部が、誰かが死ぬとか、誰かと別れるとか、そういうことから発生するエモーションではない、というところがミソです。
『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』を観ました。大傑作!!
音楽を縦軸に使っているのもあってか、基調としては、明るい感じなのもいいですね。当然、音楽、というか音の演出も序盤からバチバチキメてましたね。アヴァンタイトルは『アクロス・ザ・スパイダーバース』とも正面から戦えるよ! 「地球交響楽(シンフォニー)」の回収シーンは、「来る」と分かっていてもなお、マジで良かったです。戦場のハーモニカのアクチュアリティよ。なんて真面目なんだ……。
世界改変道具(あらかじめ日記)と時空間干渉道具(時空間チェンジャー)を同時出しして、どちらも重要ギミックとして使いこなすのも、SFとしても、なにげに物凄いですよ。傑作でした。
『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』を観ました。大傑作!!
まずもって脚本が上手い! 込み合った複数の問題(葛藤)を、伏線を巧みに使いつつ多重に解決する場面が複数箇所あるのでビビりました。新しい世界を楽しむ恒例の前半パートを、ちょっとダレるかなというレベルでしっかり取っているのに、これで115分は構成が緊密すぎる。ミッカはもちろん、ゲストキャラクターが皆かわいく、全編を通じてギャグも冴えてるし、「ファーレの殿堂」のステージ解放ギミックと「音楽家ライセンス」によって、「ゲーム性」が生じているのも、現代のキッズ向けにチューンしてて偉い!(おれは現代のキッズではないので実際は成人オタク向けなのかもしれないけど……)
空疎な説教臭さやシリアスさによって、結局は子どもを舐めているとしか思えない演出やストーリーではなく、物語の前後で「嫌いだった学校の科目が好きになれそう」「みんなで音楽をやるのって楽しいね」という着地なのも、子ども向け映画であることに真摯だと感じました。発掘された縦笛、音楽家の名前、「はやぶさ」ならぬ「はげわし」、重要なポイントで使われる科博、とかの目配せも、『ドラえもん』という、少年少女への科学啓蒙が確実にその軸のひとつにあるIPにおいて、真っ当も真っ当でしょう。
『アイヌ神謡集』を読んでいました。「人間などにいたずらを仕掛けた動物(カムイ)が人格神(オキキリムイ)の反撃を受けて死ぬ」というパターンの話が複数あるんですが、アイヌの世界観では、魂の座は「耳と耳の間」にあるので、流れとしては「(いたずらをオキキリムイに見つかる)」「(オキキリムイによる任意の暴力)」「(暗転)」「ふと気がついてみたら」「その(動物の死体の)耳と耳の間に私はすわっていた」になって、「ガッシ!ボカッ!」アタシは死んだ。スイーツ(笑)レベルのすごい速度感といい、死者(霊魂)の一人称視点による「死」の表現の巧みさといい、シュールさといい、超よくて、なおかつそれを色んな動物(カムイ)で何度もやられるので笑ってしまう。名著だ。
作家(阿部登龍)。第14回創元SF短編賞受賞作「竜と沈黙する銀河」(紙魚の手帖vol.12)、「狼を装う」(同vol.18)。SFとファンタジーと百合とドラゴンとメギド72が好き。
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