『キャラクターからつくる物語創作再入門』を読みました。3
ただ、「嘘」と「真実」/「WANT」と「NEED」/ポジティブなアーク、フラットなアーク、ネガティブなアーク/3種類のネガティブなアーク(失望のアーク/転落のアーク/腐敗のアーク)といったタームを得られたのは良かったです。お陰で色々なものの見通しがよくなりました。
また、アークから考えることで、登場人物それぞれに物語(アーク)があることを意識しやすくなりそうなのもポイント。特にネガティブなアークをやりたい時は、本書を必ず読み返すべきでしょうね。
余談ですが、自作でいうと「竜と沈黙する銀河」(の主人公)はフラットなアーク、「狼を装う」(の主人公)はポジティブなアークですね。後者は明確に参照元の物語構造があるのですが、それはまたどこかで……。
『キャラクターからつくる物語創作再入門』を読みました。2
たとえば三幕構成におけるTPやMPはあくまでイベントなので、ネガティブでもポジティブでもない。具体的な内容もなんでもいい。構成は器であってその中味は自由――というのはシド・フィールドも書いていたはず。逆に言えば、パターンが多過ぎて探索しきれないし、当然そのパターンの中には一貫しないものや魅力的でないものも存在する。さらに言えば、構成は登場人物と分離できるので、ともすれば棒立ちの人物たちの前でただ出来事だけが起こる、となりうる。
だとすると、「登場人物を中心にした」「成功率の高い(成功した作品から逆算された)」構成のリストがあると便利ですよね。
つまりそれがキャラクターアーク、ということでしょう。
本書のあちこちでプロットとアークを別物のように扱っておきながら、四章においては、キャラクターアークと(サブ)プロットが可換であるように説明しているのも(一読してかなり混乱しました)、そういう事情ではないかと思います。
個人的な収穫としては、当初目指していたキャラクターアークの理解という意味ではさほど成果はなかったのが正直なところです。それは事実上「三幕構成」を理解してさえいれば足りるので。
『キャラクターからつくる物語創作再入門』を読みました。1
「キャラクターアーク」の理解のために読んだので、キャラクターアーク、プロット、構成それぞれの違いに気をつけて読みましたが、本書単独で整理するのは難しそう、という印象です。キャラクターアークと言いつつ、ほとんど三幕構成に沿って説明されるのも大変で、同著者の『ストラクチャーから書く小説再入門』を先に読むべきかもしれません。それでも腑分けは労力がいる。
以下、おれの理解をメモします。
プロット:「構成」を含むもっと広い概念で、構成よりもマクロの意味もミクロの意味も含む
(三幕)構成:ストーリー中で起きるイベントの性質とその提示順
キャラクターアーク:ストーリー中で登場人物がたどる軌跡=経験するイベントの構成
なので、構成はプロットに含まれるし、キャラクターアークは構成に含まれる。究極的にはどれもプロットであると言える。
ここで、構成から「キャラクターアーク」をわざわざ切り出す必要があるとすると、(三幕)構成にはいわば「色がない」からでしょう。
ただ、正直言って途中までは、「シーン」を構成する6要素があり、それぞれにいくつかのパターンがあり、気をつけるところがあり……となると、結構しんどくなってきて、「向いてないかも……」と思っていました。
それが22章の「シーン構成のバリエーション」まで至ると、一気に展望が開けました。22章で語られるのは、これらのブロック、特にシークエル部分は極端に短かったり、省略したり、あるいは順番を入れ替えたりしてもよく、それによって要素(ブロック)が完全に揃った「シーン」とは異なる効果が狙える、ということでした。自由度が増す分さらに考えることが多くなりはするのですが、重要なのは、「要素を揃える」ことではなく、「(全要素の揃った完全な)「シーン」との距離を測る」ことなのではないか、という気づきがありました。
なので、いまの自分のスタンスは、「シーン」の要素は本著タイトルにおける「型」であり、それと比較することで、ぼんやりと思い浮かんでいる「シーン」を点検する、あるいは「シーン」が思いつかないときの取っかかりにする、という使い方をすべき、というものです。その意味ではタイトルの“「型」にはめれば”というのとはちょっと違いますね。
『ストラクチャーから書く小説再入門 個性は「型」にはめればより生きる』を読みました。うーんいい本! 今日は前半部(https://fedibird.com/web/statuses/112400260276835587)に引き続き、第二部「シーンの構成」第三部「文の構成」でした。
第一部「ストーリーの構成」の三幕構成は、おおむね理解できており、第三部もさらに詳しい類書が出ているので(文舵とか。とはいえ本著も簡潔に重要なことがまとまっていて良い。)、自分にとっては第二部が白眉でした。
第二部は、「シーン」をアクションを描く“シーン”とリアクションを描く“シークエル”に分割し、さらにそれぞれを「ゴール」「葛藤」「災難」と「リアクション」「ジレンマ」「決断」のブロックに分割し、それぞれの機能を解説していく、という構成です。自分にとって画期的だったのはこの“シークエル”でした。
特に心当たりがあったのは、“経験の浅い書き手の中には、リアクション描写が抜けていることに本人が気付いていないケースがよく見られます。(中略)人物の気持ちになりきって書いているうちに、読者も同じ気持ちだろうと思い込んでしまうのです。”という箇所。現在進行形で指摘されることが多いです。
いただいておいて積んでいた(そういう本が沢山あり、申し訳ないと思っています)『ストラクチャーから書く小説再入門』をPART1の三幕構成解説まで読みました。
オタク的にはトリビアルな疑念が何点か浮かびましたが、非常に簡潔でわかりやすい三幕構成の解説書で嬉しいですね。当然と言えばそうでしょうが、小説用の調整が考えられているのも嬉しい。個人的には、これもトリビアルな話になりますが、インサイティング・インシデントとキイ・インシデントを明快に(分けた)解説が好ましいです。自分では長い間ぼんやりしていた部分だったので。
以下、トリビアルな疑念の具体例です。
・ターニングポイント(本著ではプロットポイント)の位置は各幕「中」ではなく「前」なのでは?(第1TPは第2幕前・第2TPは第3幕前)
・セントラル・クエスチョン(本著ではドラマチック・クエスチョン)の提示は原則キイ・インシデントにおいてじゃなかった? 文章構成の都合かもしれませんが、本著だとかなり前で提示するのを前提にして見えました。それとも事前に提示して「明確化」がキイ・インシデントという意図かな。
・「まとめ」の中にそこまでで出てない話が入っていることがあるような気が……。
作家(阿部登龍)。第14回創元SF短編賞受賞作「竜と沈黙する銀河」(紙魚の手帖vol.12)、「狼を装う」(同vol.18)。SFとファンタジーと百合とドラゴンとメギド72が好き。
お仕事のご依頼は東京創元社までどうぞ。