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梶龍雄『龍神池の小さな死体』徳間文庫
昭和43年9月、関東大学工学部の大学教授・仲城智一は最近亡くなった母に「お前の弟は殺されたのだ」と言われたことが気になっていた。23年前の戦争中、千葉の寒村・山蔵に集団疎開していた弟・秀二に何が起こったのか、そして彼は本当に殺されたのか。母と弟の供養、そして罪滅ぼしのため智一は現地へ調査に向かう……。

📚 恐らく……題名、装画、そしてあらすじ等で「初期の金田一耕助的世界」のイメージを膨らませた状態で読み始めると、早々に騙された :blobcatpuffyfearful: と思うであろう作品です。主人公・仲城智一の専門は建築材料学。作品中でもコンクリートの亀裂に関する実験に明け暮れており、およそ伝説や怪奇・怪異には縁のないリアリスト。更に地頭は良いものの推理・捜査に関しての能力は低く、職業柄か一般常識や家事等にも疎い。

📚 そんな彼がバディ役で推理小説好きの佐川美緒による手助け、或いは彼女の推理的想像を構築する過程を目の当たりにしたことから、自らの能力を開花させ推理を披露する場面は、今作のハイライトです。ただ巻末の三津田信三氏の解説にもあったように「重大な問題の説明不足」は、確かにありますが……私は結末も含め、ミステリとして楽しく読みました ☺️

ルネ・ナイト『夏の沈黙』創元推理文庫
[訳] 古賀弥生
2013年春。テレビのドキュメンタリー番組の制作者である「勇敢」な女性、キャサリン・レーヴンズクロフトの引っ越したばかりのメゾネットに置いてあった『行きずりの人』という題名の本。最初は気楽に読んでいたが、読み進めるうちに本のページに織り込まれた自分自身にばったり出会ってしまう。それは20年間隠し続けてきた「あの夏の秘密」について書かれた本だった。

📚 原題のDisclaimerは「責任を放棄すること」という意味だそうで、それを知るとこの作品の意味も良くわかるような気がします。というのも悪意に満ちた序盤の展開をどう結末に至らせるのか想像しながら読んでいたら、いつの間にか見えていた景色が全く変わってしまったから。しかも、悪意は継続したまま。

📚 登場人物の殆どに共感や同情ができないまま物語は進み、ある場面から見え方が変わったにも拘わらず、やはり共感したり同情するまでに至らない。それはつまり物語の根幹にあるテーマがそうさせているのだと解釈しました。恐らく再読すれば理解は深まるのでしょう。しかし、それを望んでいない自分がいます。長編ミステリとして素晴らしいこの作品は、私にとっては、そういう作品でした 😑

横溝正史『横溝正史少年小説コレクション1 怪獣男爵』柏書房
[編] 日下三蔵
瀬戸内海の真ん中にある離れ小島。大生理学者・古柳冬彦が兄・夏彦男爵の死後、無人島を買い取り西洋の城のような家を建てたことから男爵島と言われるようになった島なのだが、どうやらその島には得体の知れない怪物が隠れているという噂が……(表題作)。稀代の大犯罪者との対決を描いた長編三部作を収録。

📚 小山田博士や金田一耕助の敵役として異形のキャラクター・怪獣男爵が登場する長編『怪獣男爵』『大迷宮』『黄金の指紋』の3作品を1冊で読める作品集。夏に読みたかった横溝少年小説、漸く読み始められました 😆 ただ今後は、3連休とかの長目の休みに家読み中心で読み進めていくことにします。流石に持ち歩けない厚さの本なので…… 😅

📚 個人的には『怪獣男爵』に出てくる、ある病院の院長の名前が木常昏々(きつねこんこん)という、非常に印象的で度肝を抜かれる名前であったことは紹介させていただきます……因みに奥様はケン子さん。実に少年小説っぽいネーミングです :blobcatmeltthumb:

[2023年上半期ベスト本]
約10冊の感想等を修正し、まとめ直しました 📚

QT: fedibird.com/@NumiMele_horo/11
[参照]

幌 📚 :fedibird1:  
#2023年上半期の本ベスト約10冊 もう7月も終わりなんですが……😅 #読書 #fedibird

いしいひさいち『ROCA 吉川ロカ ストーリーライブ』(笑)いしい商店
ポルトガルの国民歌謡・ファドの歌手を目指す女の子・吉川露花がその類い稀な歌唱能力を見出され、花開いていく物語。

📚 基本は4コマで構成されたストーリー漫画。しかし……1コマだけでも成立する説得力ある絵と、漫画だからこそ表現できる展開、そしてそれだけでなく行間・コマの外にも登場人物たちの心模様・うつろう感じ・心の機微が明快に提示されているわけではないけれど込められており、それらが深く刺さります 🥲

それを老若男女に届き得る形で読む人を選ばず表現されているというのもまた凄い。こういう漫画を読めた喜びたるや…… 😭

📚 既に完成された作品であること、それにも拘わらず作者自身がその完成度合いに不満タラタラであること、更に今後エピソード集も読めそうということも踏まえ、もう少しこの作品世界が味わえるなら、ぜひ楽しみにしたい。とても素敵な作品でした ☺️

和田誠/平野レミ『旅の絵日記』中公文庫
1989年の夏、中学生と小学生の息子を連れて友人であるフランス在住の写真家・関原彰氏の運転でフランス・スペイン・モナコ・イタリアを巡った和田さん一家の旅行記録。因みに日記は妻のレミさん、絵とコラムは夫の和田さん。読むと心が軽くなる上に、お腹も空いてくる絵日記です ☺️

📚 更に……作中に登場する中学生の息子さんが「TRICERATOPS」のボーカル・和田唱氏で小学生の息子さんはキッチン用品ブランド「remy」を立ち上げた和田率氏です ☺️

セバスチャン・フィツェック『乗客ナンバー23の消失』文春文庫
[訳] 酒寄進一

家族に死なれてから恐怖心と無縁となり署では時限爆弾扱い、38歳で引退勧告されているものの敏腕な囮捜査官・マルティンに突然、ごく僅かな人間しか知らないはずの番号に非通知の電話がかかる。「できるだけ早く〈海のスルタン〉号に乗船してもらわないと」──それは5年前に妻子が消えた、大西洋横断客船の名だった。前代未聞の閉鎖空間サスペンス。

📚 かねてより乗客の失踪が相次いでいる〈海のスルタン〉号。船内の巨大な内部で次々と発生する謎、また謎。一体、何が起きているのか──。感想ですが……真相を知ったときは頭がクラクラしました 😩 そして読み流してしまっていた何気ないものに意味があったんだと気づき、少し再読……きちんと書いてある。最悪の悪夢を描いた上でフェアであり、更に読後感がさほど悪くないという、不思議な作品でした 🤔

📚 一応情報としまして、主人公マルティン・シュヴァルツはベルリンの囮捜査官。そのためかサッカークラブのヘルタ・ベルリンにまつわる記述も作品内に少しありました ☺️

[2023年 7月読了本]
約8冊の感想等をまとめました 📚

QT: fedibird.com/@NumiMele_horo/11
[参照]

幌 📚 :fedibird1:  
📚 2023年7月に読んだ本 #読書 #fedibird まだ7月は終わっていませんが……月末月初は忙しそうなので😭 書影で一気に紹介します。詳しくは参照を☺️ [参照]

津原泰水『たまさか人形堂それから』創元推理文庫

「人形よろず修復」を謳う玉阪人形堂には、国民的着せ替えドールや市松人形、縫いぐるみといった人形とともに様々な謎や騒動も持ち込まれる。店主の澪はそれらに直向きに対峙し、解決策を見出していく。全5編の短編と書き下ろし「戯曲 まさかの人形館」を収録した珠玉のミステリ連作集。

📚 〈たまさか人形堂〉シリーズ第2作目。前作で登場人物等、骨子の説明が済んでいる状態から紡がれている今作は、より強く心に響く物語が多かった印象です。台詞回しの一つひとつに深い意味があるというか、それが発せられた場所の空気にも感情が乗っているというか。行間から滲む、言葉では表しきれない味わいを堪能できた作品でした 😌

[追記] シリーズ作品ですので前作の感想等も返信で繋げます…… 😉

久しぶりに漫画買いました :blobcatthumbsup:
能田達規『あつあつ!スタグル旅』第1巻 ヒーローズコミックス

2部が舞台だった『ぺろり!スタグル旅』の続編といえる今作はついに、1部リーグのスタジアムグルメ 😋

📚 2023年7月に読んだ本

まだ7月は終わっていませんが……月末月初は忙しそうなので😭 書影で一気に紹介します。詳しくは参照を☺️ [参照]

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