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ルネ・ナイト『夏の沈黙』創元推理文庫
[訳] 古賀弥生
2013年春。テレビのドキュメンタリー番組の制作者である「勇敢」な女性、キャサリン・レーヴンズクロフトの引っ越したばかりのメゾネットに置いてあった『行きずりの人』という題名の本。最初は気楽に読んでいたが、読み進めるうちに本のページに織り込まれた自分自身にばったり出会ってしまう。それは20年間隠し続けてきた「あの夏の秘密」について書かれた本だった。

📚 原題のDisclaimerは「責任を放棄すること」という意味だそうで、それを知るとこの作品の意味も良くわかるような気がします。というのも悪意に満ちた序盤の展開をどう結末に至らせるのか想像しながら読んでいたら、いつの間にか見えていた景色が全く変わってしまったから。しかも、悪意は継続したまま。

📚 登場人物の殆どに共感や同情ができないまま物語は進み、ある場面から見え方が変わったにも拘わらず、やはり共感したり同情するまでに至らない。それはつまり物語の根幹にあるテーマがそうさせているのだと解釈しました。恐らく再読すれば理解は深まるのでしょう。しかし、それを望んでいない自分がいます。長編ミステリとして素晴らしいこの作品は、私にとっては、そういう作品でした 😑

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