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梶龍雄『龍神池の小さな死体』徳間文庫
昭和43年9月、関東大学工学部の大学教授・仲城智一は最近亡くなった母に「お前の弟は殺されたのだ」と言われたことが気になっていた。23年前の戦争中、千葉の寒村・山蔵に集団疎開していた弟・秀二に何が起こったのか、そして彼は本当に殺されたのか。母と弟の供養、そして罪滅ぼしのため智一は現地へ調査に向かう……。

📚 恐らく……題名、装画、そしてあらすじ等で「初期の金田一耕助的世界」のイメージを膨らませた状態で読み始めると、早々に騙された :blobcatpuffyfearful: と思うであろう作品です。主人公・仲城智一の専門は建築材料学。作品中でもコンクリートの亀裂に関する実験に明け暮れており、およそ伝説や怪奇・怪異には縁のないリアリスト。更に地頭は良いものの推理・捜査に関しての能力は低く、職業柄か一般常識や家事等にも疎い。

📚 そんな彼がバディ役で推理小説好きの佐川美緒による手助け、或いは彼女の推理的想像を構築する過程を目の当たりにしたことから、自らの能力を開花させ推理を披露する場面は、今作のハイライトです。ただ巻末の三津田信三氏の解説にもあったように「重大な問題の説明不足」は、確かにありますが……私は結末も含め、ミステリとして楽しく読みました ☺️

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