富士川 過去とか歴史との関わり合い方というのは、60年代頃まではわりあいと権威主義的に伝統論をふりかざしていくというのかな、重々しく見ていく、とらえていくという姿勢が濃厚だったのじゃないかと思うのですが、どうも80年代になって若い世代の作家たちが登場してきてから、過去に遊ぶというのかな、重々しくとらえていくのではなくて、過去と現在を自由自在に、ミックスさせたりシャフルさせたりして、そこに何か新しい、従来とは異質な文学空問を作り出していくという、そういう姿勢が、いま言われたようにアクロイドとか、あるいはバーンズとか、それにアンジェラ・カーターの『夜ことのサーカス』なんていう作品もそういう例の一つじゃないかと思いますけれども、そういった作家たちの作品の中に顕著に出てくるということがあると思いますね。
青山 いまおっしゃった、純潔と呼べるかどうかわからないけれども、とりあえず純潔のイギリス人の作家たちが過去に関心を持ってきたということなんですが、富士川さんの文章を読んできましたところでは、その過去への関心の持ち方というものは、ちょっと非常に変わったものですね。過去を遊んでいるというところがあります。
富士川 そうそう、遊んでいる。
青山 二つほど富士川さんが紹介したものを挙げますと、一つはピーター・アクロイドが、実在した作家、あるいは実在した建築家等をネタにして、ミステリーっぽい小説をつくっている。あともう一つ非常に面白かったのは、ヤング・フォーギー現象という、こういうふうな言葉で言ってしまうと誤解があるかもしれないけれども、一種の日本のレトロプームみたいな現象。
敬愛してやまない菅野昭正が少し前まで館長を務めていた世田谷文学館のサイト。連続企画・館長対談として「世田谷文学館ニュース」のバックナンバーを無料で読めるのだけど、菅野昭正×蓮實重彦の対談とか猛烈に面白い。菅野昭正が蓮實重彦のフランス語の教師だというのは知らなかった。
https://www.setabun.or.jp/collection/publication_collection/publication.html
【情報募集】日本の作家(あるいは人名)をローマ字で表記するときに、表記ゆれを出さないために役立つサイトなどをご存じでしたら教えていただけないでしょうか。たとえば谷崎潤一郎の潤一郎は、Junnichiroではなく、Jun'ichirōと表記されることが多い気がします。
Shiguéhiko Hasumi のDirected by Yasujiro Ozuという本が今年になってUniversity of California Pressから刊行されましたが、Shiguéhikoのgとeの間にuを挟んでいるのは軟音として読ませないためだと理解していますが、自信がありません。また、この書き手の場合、以前からフランス語圏で文章を書いていることが表記と関係している可能性もあります。
本好き、旅行好き。 海外詩/翻訳文化論/日本文学普及/社会言語学etc.文章のアップはSNSよりも主にブログのほうで行っています。よろしくお願いします。https://air-tale.hateblo.jp/