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とある方の好意で、残雪がボルヘスやカルヴィーノについて言及している文章を読んでいます。しかしそこは残雪なので、エッセイや批評などと呼ぶのがはばかられるようなこの世のものとは思えない迫力で書かれております。

山尾悠子のエッセイ集『迷宮遊覧飛行』、国書刊行会のサイトに目次が上がっていますが、あまりに楽しみなので現物を手にするまでは見ないつもりです。シュオッブ、グラック、ミルハウザー、バラード「時間の庭」、高橋睦郎『動詞』、塚本邦雄、三島「軽王子と衣通姫」、鏡花、初期の荒巻義雄、渡辺兼人+金井美恵子『既視の街』、『眠りの国のリトル・ニモ』……寺山修司+落田洋子『だれが子猫を切り抜いた?』みたいに、工作舎「遊」の「今月私が買った本」のリストをきっかけにして手に取った本もいろいろ。

あけましておめでとうございます。振り返ってみると、2022年ほど「感謝」を感じた年はありません。メインの更新はSNSよりもブログあるいはほかの媒体にしていくつもりですが、今年もどうぞよろしくお願いします。

「文藝」22年春号のジェンダーSFブックガイド、イ・スヒョン「韓国SFと世界SFのフェミニズム」。オクタビオ・バトラーの翻訳は日本より韓国の方が多いと以前聞いたことがありますが、サンリオから出ていたジョアンナ・ラスについて、「まだ韓国では紹介されていないが」という記述があったりと、日韓の細かい相違が感じ取れて面白いです(私もラスの長編は読めていないことを告白しなければいけませんが)。なお、「海外SF」とありますがこの原稿では韓国以外のアジアの国のSFは採られていません。

アリエット・ド・ボダール『茶匠と探偵』を読み中。原文より格調高く訳しているんだとしたらどうしよう、みたいな疑念が頭をもたげてきます。そして大島豊さんの別の訳書、種村季弘がすごく好意的な書評を書いていてそちらも気になりまくりです。

Let us love this distance, which is thoroughly woven with friendship, since those who do not love each other are not separated.(シモーヌ・ヴェイユ) コロナ禍で人と会いづらい日々がいまだ続いているからこそ、吟味したい言葉のひとつ。

@biotit 著者が提出している視点のすべてに肯定的なわけではないのですが、『ベルリンうわの空』は面白いと自分も感じました。書物によって異文化理解を深められるとすれば、どういう風にか?とよく考えていて。登場人物たちがクリーチャーのような画で描かれるのは、外見や肌の色が異なることのメタファーであって、作品がマンガという形式で描かれる必然性があるのかなとも思いました。

イアン・マクドナルド『火星夜想曲』って、『火星年代記』を読んでおくほうが楽しめるのでしょうか(『百年の孤独』はさすがに既読ですが)。それとないパロディや引用が散りばめられている類の作品なのか、ちょっと検索した限りではわかりませんでした。

@Waterofmarch はじめまして、本の購入記録など何年も参考にさせてもらっています。『遠まわりして聴く』のタイトルは「を」は不要ではないでしょうか。収録されているタブッキ論とか、自分もとても好きです。

とある批評家はチュツオーラのある長編に対し、「破格の英語というが、この訳文ではとりたてて伝わってこない」という趣旨のことを雑誌でコメントしていた。自分が気になって仕方ないのは、かつて「リテレール」で天沢退二郎が述べていたこと。天沢や金井美恵子らによる60年代の伝説的な詩誌「凶区」で、文化人類学者の西江雅之が原文の破格の調子を伝える翻訳で「やし酒飲んべ」を訳出していたというのだ。「悪訳版」が出版されることで作家の像が根本から変わってしまう体験をひとり勝手に待望している次第である。

怪物的アンソロジスト、ジェフ・ヴァンダミアがナイジェリアの作家エイモス・チュツオーラに対しほとんど別格のような評価をしているのを目にした時、実を言うと少しだけ意外に感じた記憶がある。自分も以前読んで気に入ったけど、衝撃を受けたというようなニュアンスではなかったからだ。

現時点で考えているのは、これは「女子寮を扱った小説」と聞いて人々が想起するイメージを華麗に裏切り続ける所に魅力があるのではないかということ。スラング、(日本風に言えば)ギャル、ドラッグ、男性や規則への不服従……スーザン・ソンタグは女性作家によるポルノグラフィを称揚していたと思うけど、良家の子女とはこうあるべきだという世間が抱く像、それを抜群のユーモアと速射砲的なリズムでもって反転させることにかなりの程度この作品は成功していると思う。

少なくとも言えるのは、男女という二分法を前提とし、その制度に攻撃をかけるようなフェミニズムSFではないということ。登場人物たちの台詞の多さを加味すればけして多くはないページ数のなかに、レズビアニズムとか(疑似)獣姦とかセックストイとか、「父」や校長との倒錯した関係とか、多くの要素が氾濫している。幻惑的な書き出しでありながら、読み進めていくと信託子(トラスト・キッド)というシステムがどういうものか、雲が晴れるように少しずつ見えてくる構成にSFらしい趣きがある。

コニー・ウィリス「わが愛しき娘たちよ」(『わが愛しき娘たちよ』ハヤカワ文庫SF)。controversialな作品だと聞いていたので読んでみたら(SFマガジンのかの有名なポスト・フェミニズムSF特集に掲載)、たしかに傑作ではあるんだけど、どういう所に作品の思想的な側面があるのか、あるいはジェンダーSFとしてはどう把握すればいいのかということについてはうまく整理できずにいる。

ル=グィン一冊読み終えた!この季節に合いそうなので、イサク・ディネーセン『冬物語』を読み始める。翻訳は横山貞子。

@biotit こんにちは、twitterもあまり熱心には使っていなかったのですが、こちらのサービスもためしに登録してみました。気が向けば海外小説の話などしていきますので、よろしくお願いします。

ふと思い起こすと、英語圏のアヴァンギャルド文学好きには(この層はかならずしも「日本文学の愛好家」と一致しない)、『ドグラ・マグラ』は未訳のカルト長編として名のみ知られている。「異端」という言葉は以前ほど聞かなくなったとはいえ、熱烈な読者をいまも抱える以上の二つの小説の移入に際し、フランスはオノレ氏の奇妙な情熱によって英語圏に先んじたと言える。なお、氏が『定本夢野久作全集3』の月報に寄せた文章は日本文学の普及に関心のある方すべてに読んでもらいたいような素晴らしいものなのだけど、その話はまたそのうち。

澁澤龍彦の傑作『高丘親王航海記』、今年の9月にフランス語版が出版されていたことを知る。訳者はベストセラーのマンガから『ドグラ・マグラ』までをフランス語に移し替えてきたベテラン、パトリック・オノレ。

個人的に面白いなと思うのは、英語圏でも『高丘親王航海記』を紹介する動きがついここ一、二年でみられること。注目を集めた「文藝」2020年冬号におけるアンケート、「世界に拡がる日本文学の行方」でDavid Boydは一番好きな日本の作家として澁澤龍彦を挙げ、『高丘親王航海記』をベストとしている。2021年冬には柴田元幸ら編集の英語版「MONKEY」2号に氏による抄訳が掲載。ただし、現時点では単行本としては出版されていない。(続く)

アカウントを作った日の気分で、好きな幻想文学(広義の)10選。

山尾悠子『夢の棲む街』
マルセル・シュオッブ『モネルの書』
ボルヘス「王宮の寓話」
泉鏡花『春昼・春昼後刻』
永田耕衣『しゃがむとまがり』
橋本真理『幽明婚』
J・G・バラード『ヴァーミリオン・サンズ』
ハンス・ヘニー・ヤーン『鉛の夜』
ジュリアン・グラック「狭い水路」
D・G・ロセッティ「召された乙女」

Fedibird

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