政治家、企業トップの劣化に思うこと。
ハンナ・アレントは「全員が独自の異なる意見を持ちながら全員が平等な社会」、つまり複数性がある社会について思考した。そして「巨大で複雑な問題は複数性の前提=対話を破壊する」と考えた。巨大すぎ複雑すぎる問題を前に、人はうまく思考・対話できなくなってしまう。
ハイテク分野:
個人:イーロン・マスクのご乱心は続く。マーク・アンドリーセンのテクノ楽観主義宣言はお話にならない。Google社内の差別思想は危険水域。Web3系企業からは巨額損失、巨額罰金、逮捕者の事例が相次いでいる。ビル・ゲイツはエプスタインと交流。OpenAIの内紛はサム・アルトマンの資質への評価めぐるトラブルだ。
全体:世界は「テクノ封建制」へと移行しつつある。
政治分野
個人:トランプはまだ元気。バイデンは言動が怪しくガザ戦争で判断を誤る。アルゼンチンではトンデモ極右のミレイが勝利。日本の政界もトンデモ議員の話ばかり。
全体に:世界的な極右の台頭、人権バックラッシュが続く。
人間の脳は1万年前と同じ。だが組織トップが抱える課題はあまりに複雑化し思考が追いつかない。「トップに任せる」やり方は欠陥がある。大勢の普通の人々が力を発揮できるメカニズム——「複数性を取り戻すメカニズム」が必要ではないか。
複数の話題を連投しているので、立ち止まってメモ。
我々がガザやヨルダン川西岸の人々を支援できる手段は次の3種類ぐらいだろうか。(1) デモなどの活動で日本政府や国際社会にアピール、(2) SNS上のニュース拡散、プロパガンダ否定、(3) 国連機関や国境なき医師団への寄付やパレスチナ物産の購入。
SNS活動の観点では「ガザの人道危機は深刻、イスエラル軍の非道が止まらない」「イスラエル軍が提示する"証拠"は粗雑で信用ならない」という大事な情報はもっと拡散されてほしい。
アルゼンチン大統領選でトンデモ極右候補ミレイ勝利。影響の予測が難しいが、アルゼンチンの人たちは大変な目に遭いそうだ。
OpenAIの内紛。従業員らの反乱を受け役員会は孤立している。なぜ役員会はアルトマンCEO解任を正当化する理由をはっきり言えないのか? まだ外に出ていない情報があるのかもしれない。
イーロン・マスク氏のご乱行は続く。X/Twitterのヘイト放置を指摘したメディア監視団体Media Mattersを訴訟、さらに州司法長官による捜査を示唆して脅かす。マスク氏は態度を改めるどころか先鋭化している。私たちはいま、人を極右に追いやるメカニズムを目にしているのかもしれない。
くらやみのなかに、ともしびを。
パリ・オペラ座バレエのダンサーらによるパフォーマンスアート。この世界の暗闇に心を痛めている人にお勧め。
パフォーマンス全篇を観て、映画『愛と悲しみのボレロ』のクライマックスシーンを思い出しました。
https://youtu.be/hSIBwARHyXc
https://twitter.com/MasayukiTsuda2/status/1726403307688824979
イーロン・マスク氏は、反ユダヤ言説放置を指摘したメディア監視団体Media Mattersを訴えた。しかも、どういう訳かミズーリ州司法長官が動いている。
「イーロン・マスクの不始末を暴くと行政機関の捜査を受ける」という「オーウェル的」な展開となった。
感想:訴えても、IBMやAppleら広告主は戻ってこない。
OpenAIの取締役会は、ライバルの大規模言語モデル開発会社Anthropicの共同設立者兼CEOであるDario Amodei氏に、両社の合併の可能性について打診した。Amodeiはすぐ断った。
https://www.theinformation.com/articles/openai-approached-anthropic-about-merger
OpenAIの従業員770人のうち710人以上が、同社の役員会の辞任と、前CEOのSam Altman氏と前社長Greg Brockman氏の復職を求める書簡に署名した。実現しなければ従業員らはMicrosoftの2人に加わる。
https://www.theinformation.com/articles/the-vast-majority-of-openai-employees-ask-the-board-to-resign
感想:これが11/20(月)夜時点での状況。従業員からの圧力に対し、役員会が考えを変えるかどうか、がポイント。
役員会がアルトマンを解任した理由、それに「サツケバー氏の後悔」の真意がどうも腑に落ちない。このあたりも、いずれ論評が出てくるだろう。
11/20、OpenAIに最初に投資した1人、ビノット・コースラ(シリコンバレーの伝説的ベンチャーキャピタリスト)はThe Informationに寄稿し、OpenAI役員会を批判。
「OpenAIの役員たちが信仰していた効果的利他主義(effective altruism)とその誤用は、人工知能がもたらす多大な恩恵への道のりを後退させることになりかねない。すべての人に無料の医者が、地球上のすべての子供には無料に近い家庭教師が与えられることを想像してみてほしい。それこそが、AIの約束に賭けられているものなのだ」
https://www.theinformation.com/articles/openais-board-set-back-the-promise-of-artificial-intelligence
OpenAIの顧客は、競合のAnthropic、Microsoft、Googleへの離反を検討。この週末、100以上のOpenAIの顧客がAnthropicにコンタクトした。
https://www.theinformation.com/articles/openais-customers-consider-defecting-to-anthropic-google-cohere
元GitHub CEOのFriedman氏、Scale AI創業者のWang氏がOpenAI CEOのオファーを断っていた。
https://www.theinformation.com/articles/former-github-chief-nat-friedman-declined-openai-interim-ceo-role
(続く
OpenAI劇場は続く。11/20月曜時点で、「アルトマンが復帰せずMicrosoftに入社」というニュースで決着かと思われたが、その後、「従業員の反乱」「サツケバーの後悔」が続き、状況はいまだ流動的だ。
この件を詳しく報道しているThe Informationの記事から(無料分だけだが)要点を抽出して並べてみた。
11/19の夜、「アルトマン復帰ならず」を聞いた数十人のOpenAIスタッフが会社を辞めると発表。
https://www.theinformation.com/articles/dozens-of-staffers-quit-openai-after-sutskever-says-altman-wont-return
11/20月曜日の朝、(クーデター首謀者と見られていた)イリヤ・サツケバー氏は「取締役会の行動に参加したことを深く後悔している」「会社を再結成するため全力を尽くす」とツイート。月曜日までに、OpenAIの700人以上のスタッフのほぼ全員が、アルトマンが復職しなければマイクロソフトに移籍するとする文書に署名。サツケバーも署名した。
https://www.theinformation.com/articles/microsoft-strikes-back-at-openai-hiring-altman-and-brockman
(続く
まだまだ続く、OpenAI劇場
770名のOpenAI従業員のうち500名以上が「サム・アルトマン復帰と役員会辞任がなければ、退職する」と署名して意思表示。 クーデター首謀者とみられていたイリヤ・サツケバー氏も署名。
https://www.wsj.com/tech/openai-employees-threaten-to-quit-unless-board-resigns-bbd5cc86
トンデモ候補のハビエル・ミレイが、アルゼンチン大統領選で勝ってしまった!
以前の投稿を読み返してみて、もうお腹いっぱいです。
"南米アルゼンチンで19日、大統領選の決選投票があり、第三極の極右ハビエル・ミレイ下院議員(53)が与党連合の中道左派セルヒオ・マサ経済相(51)を破り、当選を確実にした。"
7日金曜日、全世界に突然伝えられたOpenAIのサム・アルトマンCEO解任劇は、19日日曜日の夜に「アルトマン復帰ならず」、20日にアルトマンのマイクロソフト入社の形で決着した。
非営利団体が創業者や投資家らに逆らう構図の、珍しい事件だ。
通常の企業役員解任劇は、利害の対立や不正に関わる場合が多い。だが米国報道を見ると今回は「AI倫理への姿勢の違い」が主因だったと思われる。解任劇を主導したイリヤ・サツケバーはAIの安全性を重視する側と考えられている。
解任劇では投資家や一部幹部を敵に回した。ビジネスへのダメージは避けられないだろう。それでもサツケバーらはAIの安全性を優先した。そこまでして守りたかったものは何か。当事者はまだ多くを語らない。
AIの安全性/危険性、あるいはAIアライメントがここまで大きな話題になったことはない。今後のOpenAIが打ち出す施策や、内部情報のリークには気を配りたい。
OpenAIお家騒動の全体像。
非営利団体が運営するOpenAIは、ビジネスの加速よりAIの危険性への取り組みを優先したと思われる。
11月17日(金)、役員会がサム・アルトマンCEOを解任。グレッグ・ブロックマン社長も辞意を表明。役員でAI研究者イリヤ・サツケバー(Ilya Sutskever)が解任劇を主導。サツケバーは「AIの社会的危害を制限する」役割を担う役員。
The Informationの記事によれば、従業員にも「内紛の理由はAIの安全性」との認識があった模様だ。
https://www.theinformation.com/articles/before-openai-ousted-altman-employees-disagreed-over-ai-safety
アルトマン解任直後に開かれた全体集会で、社員からの「クーデターか」との質問に対し、サツケバーは「この言葉を選んだ理由は理解できるが、同意できない。これは、OpenAIが全人類に利益をもたらすAGI(汎用人工知能/超人工知能)を構築することを確認するという非営利団体の使命に対して、理事会がその義務を果たしたということだ」と述べた。
https://www.businessinsider.com/3-open-ai-researchers-resign-sam-altman-dismissal-ceo-2023-11
11月19日(日)、投資家らの圧力を受け、サム・アルトマン本人もOpenAI本社に入構し、役員会が行われた。結果、サム・アルトマンはCEO復帰はならなかった。
その後、さらに急展開。
マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは20日、更迭されたOpenAIのサム・アルトマンとグレッグ・ブロックマンがマイクロソフトに加わり、新たな先進AI研究チームを率いることになったと発表した。
サティア・ナデラCEOのツイート
https://twitter.com/satyanadella/status/1726509045803336122
「マイクロソフトとOpenAIとのパートナーシップに引き続きコミットする」と記している。
OpenAIお家騒動、その後。
事態は11月19日日曜の夜に急展開。取締役会は投資家らの圧力に従わなかった。前CEOのサム・アルトマンはOpenAIのCEOに復帰せず、元Twitch CEOのEmmett Shearが暫定CEOに就任する。
The Informationが最初に報じた。「決定が社内で発表された直後の午後9時過ぎ、サンフランシスコにあるOpenAI本社から、取り乱した社員たちが流れ出した」
https://www.theinformation.com/articles/breaking-sam-altman-will-not-return-as-ceo-of-openai
サム・アルトマン追放の主導的役割を果たしたのはAI研究者のIlya Sutskever(サツケバー)氏だ。対立の原因をめぐり業界筋はワイガヤ状態だが当事者らは多くを語らない。
New York Timesの記事は「サツケバーは、アルトマンがOpenAIのビジネス構築に集中するあまりAIの危険性に十分注意を払っていないと懸念していた」と書く。
https://www.nytimes.com/2023/11/20/technology/openai-altman-ceo-not-returning.html
OpenAIのガバナンスは特殊だ。通常のスタートアップ企業なら、多数派の投資家に逆らうことはありえない。だがOpenAIは非営利団体の役員会が営利企業を管理する珍しいガバナンス。役員会の決定を、投資家連合も覆せなかった。
その後。
X/Twitter上でブランド広告とヒトラー賛美など反ユダヤ言説が並んで表示されたことを受け、IBMに続きAppleなど大手広告主が広告出稿を取りやめた。
https://www.theverge.com/2023/11/17/23965928/apple-x-ads-elon-musk-antisemitic-posts
イーロン・マスク氏は18日、X/Twitterで監視団体Media Mattersに対し「核爆弾級の訴訟を起こす」と息巻いた。
https://www.theguardian.com/technology/2023/nov/18/elon-musk-to-file-thermonuclear-lawsuit-as-advertisers-desert-x
「月曜日に裁判所が開かれるやいなや、X社はMedia Mattersと、当社に対するこの詐欺的な攻撃に共謀したすべての人々に対して熱核訴訟を起こすだろう」
感想:反省なし。
(何ヶ月か前に書いたゆる〜いメモをお焚き上げ)
多くの日本人は、自分の尊厳、人権をないがしろにされてきた経験を持っている。人権も自由と平等も、すぐ破られる建前にすぎない、と思っている人もいるだろう。現実が辛いので、ネット人格では好きな事だけをしたいと思っている人もいるだろう。
しかし。日本に労働基準法がない時代、普通選挙がない時代、人々はもっと過酷な環境に生きていた。イライラするほどゆっくりとだが、人権という建前は世の中を「コツコツ」と変えてきた。ときおりバックラッシュで「ドカン」と状況が悪くなるのだが。
人権とは建前だ。人権とは概念だ。だからいいんだ。
抽象的・哲学的な思考から生まれた概念だからこそ、歴史的背景が違う人たちが人権を理解し受け入れることができる。1948年に世界人権宣言が採択されてから75年。ちょっとずつ、少しずつ、ゆっくりとではあるが、人権は世界を変えてきた。
人はみな平等な尊厳を持ち、差別されない権利を持つ。私たちの人権と、世界中の人たちの人権はつながっている。
追記:この文章を書いた後、巨大な「ドカン」の人権バックラッシュであるガザ虐殺が起きた。世界は不公平だ。それを言語化し、正していこうと思い考えること、声を上げることの重要性を思う。
ゆるーいメモです。
最近、見えてきたことがあって。
「金持ちが貧乏人を救う」
「専門家が無知な一般人を導く」
「優秀な人を集めたテック企業がイノベーションで社会を変えていく」
この種の考え方は、もはやうまく機能しない。はっきりいうなら、これは優生思想や植民地主義や差別思想の変形版だからだ。
当の金持ちや専門家は、このことをほとんど理解しないだろう。しかし一般人の立場に立ってみれば自明のことだ。
「すべての人」の視点を忘れたメリットクラシー、テクノクラシー、テクノ封建主義、etc.は、もはや有効でも持続的でもないと考えています。
そうではなく、対等な人間どうしで対話することで、次のステップに進むことができると考えています。
ポリタスTVの内藤正典教授 @masanorinaito 登場回を視聴。
自分なりのメモ。
- ハマスをテロ組織と認定したことにより、交渉できなくなってしまった。
- 今のイスラエルはジュネーブ条約はじめ国際法無視のテロ国家状態
- 「哲学を作らないとダメだ」
- かすかな希望は、アメリカがイスラエルのネタニヤフに引導を渡し、トルコとカタールがハマスに引導を渡すこと
https://www.youtube.com/watch?v=cWhzMGClL_A
理工学の教育を受けた者として非常に残念なことだが、すべての科学技術は価値中立で、善用も悪用もできる。人権状況を良くする/悪くするものは、常に人の営みだ。そこで重要なものは目的、原則、プロセスを言語化したガイドラインを作ることだ。
人権状況を良くも悪くもできる技術的産物の例として、例えばSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)がある。SNSの設計と運営によっては、ヘイトスピーチは取り締まりつつ、社会を改善する「異議申し立て」の手段として使うこともできるはずだ。その一方で、広告ビジネスのための数値指標の向上に血道を上げるなら、多くの場合、人権を侵害する方向に向かう。
安全工学、リスク学のような技術と人の営みの越境分野はすでに存在する。既存の知識、思考のフレームワークを援用しつつ、人権フレームワークを深く考えることで、人権状況を改善する「科学技術の使い方」を確立することはできるはずだ。
とりあえず、SNSをなんとかしてほしい。
イーロン・マスク氏にSLAPP訴訟されているデジタル・ヘイト対策センター(CCDH)が対抗手段を取った。
「デジタル・ヘイト対策センター(CCDH)は11月16日、カリフォルニア州の裁判所に、私たちに対するこのばかげた根拠のない訴訟を却下するよう申し立てた。これには、カリフォルニア州の反SLAPP法に基づく提訴も含まれる。成功すれば、私たちは費用を取り戻し、X社がこの軽薄な報復訴訟の金銭的負担を負うことを確実にすることができる」
マスク氏は7/31、CCDHによるヘイトスピーチ放置の指摘によりX/Twitterの収益が「数千万ドル」失われたとして訴えていた。
https://counterhate.com/blog/elon-musk-v-the-center-for-countering-digital-hate-nonprofit-researchers-file-motion-to-strike-lawsuit-under-california-anti-slapp-law/
WHO leads very high-risk joint humanitarian mission to Al-Shifa Hospital in Gaza (WHO)
https://www.who.int/news/item/18-11-2023-who-leads-very-high-risk-joint-humanitarian-mission-to-al-shifa-hospital-in-gaza
WHOによるガザ地区のアルシファ病院の状況報告。滞在時間1時間という限られた機会に、状況の確認と、患者の退避に向けた計画策定に必要な情報を把握して、一人でも多く救うための努力を続けている様子が伺える。
既に病院としては実質的に機能できなくなっている状況も報告されていて、言葉がない。
“The team saw a mass grave at the entrance of the hospital and was told more than 80 people were buried there.”
ITジャーナリストです。
仕事リスト:https://note.com/akiohoshi/n/nebac412b6c12