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「構造的な一致と伝播
 家族構造とイデオロギー・システムとの一致は絶対的であり、人類学的な分布図と政治学的な分布図が性格に重なることが示しているように必然的な関係であった。だが家族構造と文化的な成長の関係は、実際にはそれよりはるかに緊密性が少ない。
 イデオロギーは夢や感情の領域のものである。平等と不平等、自由と専制といった理想は、頑強であり理屈で説明できるものではなく、地球上にはそれらの配置分布にしたがって厳格に分断され、互いに相いれない空間編成が創りだされているのである。それぞれの人類学的システムは、隣接するシステムとの交流を最小限に抑えながら自らの政治的価値を生きているのである。まさに家族構造と支配的なイデオロギー構造とが、実際上見事に一致する所以である」324頁→

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「<兄弟の関係が平等主義的であるシステムは全体的に女性主義的な傾向は少ない、反対に不平等主義的なシステムはより女性主義的なのである>。これは一般的な傾向であるが、無視できない例外もある。兄弟の平等と男性の連帯という理想を特徴とするいくつかの家族タイプが、かなりの女性主義的な偏向を示しており、それらは、成長の現実を分析するうえで重要な傾向と認められるのである。とりわけロシア・モデルがそうである」323頁

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「驚くべきことに、当時の知のシステムの外にアウトサイダーとしていたル=プレの研究を例外とすれば、過去150年間の家族に関する社会学的構築物がいかに経験的な根拠を欠いたものであったかが見えてくるのである。コント、デュルケーム、ウェーバー、エンゲルスを読み返してみると、<事実に基づいたものではない>にもかかわらずみんなに受け入れられたこの仮説[大家族の解体]を使って、紛れもなく現実を発明し、擬似情報を構築していくひとつのプロセスが稼働しているのを理解することができる。明らかに、コンセンサスがあったが故に事実が必要とされなかったのである」322頁

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「母系制というものが現実には両親の権威の分裂を意味するものであるために、アフリカ諸社会は、その母系的な性格にもかかわらず強い母親の権力の確立に至ることはなく、そこから発現する文化的な潜在力も弱い。しかしアフリカ諸家族システムがアンチル諸島へ移植された結果もたらされたいくつかの変化は、母系的傾向の確立、一夫多妻制の消滅、親の権威の再統合、さらには迅速な文化的成長を可能にするに至っている」321頁

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「組み合わせと類型
 親の権威を現す変数——縦型か非縦型——と女性の地位というもうひとつの変数——父系制・双系制・母系制——の組み合わせは、6つのケース、成長についての適性が異なる6つの家族タイプを生み出すことになる」316-7頁

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「仮説——<家族システムの教育的な効率性は、母親の権威の力によるであろう>。この母親の権威は、人類学的な2つの異なる要素に依存している。一般的な親の権威の水準、そして家族システム内での女性の相対的地位がそれである。
 親の権威そのものが強く主張され、さらに女性の立場が高ければ高いほど、子供たちに対する母親の権威は強力なものになるのである。
 この2つの人類学的変数——親の権威と女性の地位——の組み合わせによって、さまざまな家族システムの教育的な潜在力を<先験的に>定義し得る類型を想定することができる」314頁

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「文化的水準の高いところは女性が晩婚のところであり、女性が子供として遇されることもなければ、物として扱われることもないところである。…夫婦の年齢差が小さいところでは、識字率は高いのである(相関係数はプラス0.55)。文化的テイクオフとは、女性が子供として遇されることがなくなり、妻が子供として処されることがなくなることでもあるのだ」313頁

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「<女性の結婚年齢と識字率>の相関係数(プラス0.83[0.82?])は、事実、男性の結婚年齢と識字率のそれよりもはるかに高い。一般的な結婚年齢よりも女性の結婚年齢の方が鍵となる変数なのである。
 とりわけ顕著に見られることは、女性の結婚年齢と男性の識字率の相関係数(プラス0.79)は、男性の結婚年齢と男性の識字率の相関係数(プラス0.65)よりはるかに高いことである」312頁

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「<1970-1980年頃の女性の結婚年齢と識字率の相関係数は非常に高く、プラス0.82である。世界で人々が読み書きができる地域というのは、女性があまり早く結婚しない地域であり、成長期間が長い地域である>」311頁

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「20世紀の歴史を決定したイデオロギー分布の源には、家族の存在があったのである。しかし地球におけるイデオロギーの歴史とは、人類学的な条件を基底にしながらも、偶然が介入することによって生まれた目的を持たない運動なのである」292頁

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「いかなる規則、いかなる論理とも関係なく地球上に散らばっているように見える諸家族構造の配置が示す地理的な一貫性の欠如は、それ自体ひとつの重要な結論なのである。この一貫性の欠如は、社会科学によって疑わしいものとして捉えられているが、遺伝学によって次第に認められてきたあるひとつの概念を想起させるものである。つまり偶然という概念を。家族システムとは、情緒的なものであり、理性の産物ではない。それはいくつもの小さな共同体のなかでなされた個人的な選択を経て何世紀も前に偶然に生まれ、次いで部族や民族の人口の増加とともに広がり、単純な慣性力によって維持されたものである。誕生した家族システムのすべてが生き延びるわけではなく、その多くが消滅したのである。…確定できない過去からやって来たこれらの人類学形態の集合は、20世紀に入って近代という理想にいたずらをしたのである。この人類学形態が、近代という理想を捉え、変形させ、各地域の潜在的な価値体系にそって畳み込んだのである」292頁

「遺伝学」や「選択」を吉川浩満的に誤解していると思ふ。また、種は「慣性力」により「維持」されるものではないし😅

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「イデオロギー的にイスラムに対応する内婚制共同体家族だけが、唯一おおよそ気候的にひとつの地域に存在しており、大西洋からアフリカと中近東を経て中央アジアへと広がる乾燥地帯にまたがって確認される。しかしながら、すべての乾燥地帯が内婚制共同体家族と呼応するわけではない」291頁

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「家族は下部構造の役割を果たす。家族とは、定住した人間社会の表現である統計上の大衆の性格とイデオロギー・システムを決定するものである。しかし多様な形態を見ることができる家族それ自体は、いかなる必然性、論理、合理性によっても決定されてはいない。家族はひたすら多様なかたちで存在するのであり、数世紀あるいは数千年にわたって存続するのである。生物学的、社会的な再生産の単位である家族は、その構造を存続させるために歴史や生命からの意味づけを必要とはしないのである。家族は歴史を通して、同様な形態として再生産されるのである。子供たちが家族の面々を無意識のうちに模倣するだけで、人類学上のシステムが継続するには十分なのである。愛情と分裂の場である家族の繋がりを再生産することは、DNAーRNAの遺伝子サイクルのように、意識的な操作も必要としない作業なのである。それは盲目的で、非理性的なメカニズムてあり、まさに無意識的で目に見えないものであるために強力であり、揺るぎないメカニズムなのである。しかもこのメカニズムは、それを取り巻く経済環境、エコロジー状況から全く独立しているのである。家族システムのほとんどの類型が、地形、気候、地質、経済の全く異なるいくつもの地域に同時に存在している」290-1頁

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「西アフリカ家族は母と子の絆が強く父が不在であるという特徴を持っており、いわば家族の中核が分裂した状態を基盤としているのである。
 地球上の人類学・社会システムの大半では、識字化はまず男性に現われる現象である。…この男女の格差は、イスラム教の国々では圧倒的であり、中国型の外婚制共同体型社会においても非常に大きい。核家族型、権威主義型、そしてアノミー家族システムにおいては、この両性間の隔たりは少なくなるが、消滅することはない。
 アフリカ型家族モデルでは状況が逆転して、文化的発展の過程で女性が男性よりも優位に立つのである」285-6頁

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「父不在の世界?
 アフリカにおける遺産の相続は、それが物であれ女性であれ、ヨーロッパやアジアの定住共同体において実行されている縦系列の相続の論理を取らない。相続は多くの場合、縦系列よりは横系列にそって行なわれる。遺産は父から息子へ受け継がれるよりもむしろ、兄から弟へと受け継がれるのである。この慣習は、アフリカで最も人口の集中した地域であるギニア湾の沿岸地方と内陸部の西アフリカにおいて殊に頻繁に行なわれている。
 横系列にそった相続の仕組みは、イスラム法においても萌芽的なかたちで存在している。コーランによれば、兄弟たちも相続に預かることができるからである。それが西アフリカにおいては支配的な社会的慣習となっており、家族における重要な関係が父と息子の繋がりよりも、むしろ兄弟同士の関係であることを明確に示している。このような横系列の相続システムでは、親の権威に対する姿勢は曖昧で、その権威は弱い。多妻家族の構造は、それぞれ独立した複数の下部家族からなり——それぞれの妻が自分の子供たちとひとつの住居に住んでおり——親の権威を解体するかたちになっている。父親は遍在する存在だが、これは父親がどこにもいないことでもあるのだ。
 この西アフリカの諸家族システムが奴隷売買によりアメリカに移植された」284頁

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「近親婚の禁止においてキリスト教よりも寛大なイスラム教ですら姻戚婚のタブーにおいては十分厳しいのである。イスラムは妻の妹との複数結婚、そして義理の母との結婚を禁止しているのである。数多くの例外を含みながらも、一般的にアフリカは、近親婚を厳しく禁止しながら、姻戚婚についてはその禁止が弱いという逆のモデルを示しているのである」283頁

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「アフリカ型諸家族システムの一般的な特徴
 ——家族グループの不安定さ。
 ——複数婚」282頁

そんだけかよ😅

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「アノミー家族システムのもっとも特徴的なイデオロギー形態を実現しているのは、イスラム教ではなく仏教なのである。
 ヒナヤナ[小乗]仏教がそれである。なぜなら集団的な救済よりは個人の救済を説き、修道のための放浪の徳を説いているからである。ヒナヤナ仏教は、核家族で個人主義的な構造によく適合している。神聖なものの概念が確実ではないこの仏教は——ひとつの神の存在を断言しておらず、しばしば不可知論または無神論と考えられる——父にわずかな権威しか与えない縦型構想の弱い家族構造の産物であることは非常に明確である」272頁

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「家族の構造と人格の構造
 それぞれの家族構造には、それぞれ呼応する人格的構造が対応している。人格構造というのは、心理社会学的な意味での<基本的な人格>(様態)であり、個人の人格の意味ではない。権威主義家族には権威主義人格が、外婚制共同体家族には共産主義的人格といえるものが対応する。
 アノミー家族は、殊に興味深く分析が難しい平均的な人格を生み出す。…アノミー・システムでは、その環境を構成する人々を認識するのに、平等主義や不平等主義の観念、対称もしくは非対称の原理に基づかない」271頁

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「母系権威の尊重というのはすべての核家族システムに特徴的な傾向であり、アノミー家族はその変調した一形態にすぎない。南アジアの家族システム——ビルマ、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア——は、相続に関して女性に男性と同じ権利を与えている。人類学の慣例的な用語では、これらのシステムは明瞭に双系制であり、外婚制共同体家族が女性を相続から排除しているベトナムや中国のそれとは反対である。
 南米のインディオ地域や殊にアンデス山脈では、男女の平等的な関係は相続の規則に常に現われてはおらず、しばしば女性を排除していることが確認されている」265頁

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