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「近代家族論は、近代の2つの局面を区別することで、さまざまな理論的混乱を解決することができた。『半圧縮近代』ゆえに辛くも可能な理論化だった」543頁

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「現在の東アジア社会は、ジェンダーに関して、少なくとも2つのグループが見出せる。第1のグループは、現在の女子労働力率は比較的低いが上昇傾向にある社会で、日本、韓国、台湾が含まれる。第2のグループは現在の女子労働力率は高いが下降傾向(主婦化傾向)にある社会で、タイなどの東南アジア社会と中国である」542頁

この図はわかりにくい😅

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「小山静子が発見したように、良妻賢母はヨーロッパ起源の近代思想であり、子どもの教育における母親役割の強調は儒教思想では見られなかった…しかし、第1次世界大戦頃から、個人としての女性の解放を主張する第1期フェミニズムがさかんになると、そちらを欧米的な女性観と見なして、良妻賢母は東洋的伝統であったかのように思い込むという取り違えが起きた。興味深いことに、この取り違えは日本のみでなく同時期の韓国や中国でも起きている」541頁

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「半圧縮近代である日本は高齢化の開始が遅く、ヨーロッパ諸国が高齢社会(高齢化率14%以上)となった1980年代にも人口学的好条件を保っていた。80年代の日本の経済的優位は、少なくとも部分的には欧米諸国との人口学的条件の違いに寄っていた」541頁

人口ボーナス

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「韓国や台湾では1997〜98年のアジア通貨危機を契機に離婚率が急上昇し、出生率は日本を下回る極低出生率の水準にまで低下した…経済状況の悪化の中、人々はまさに自分にリスクをもたらしかねないものとして、結婚・出産を回避したのである」540頁

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「婚姻に関する指標のうち、同棲の増加と婚外出生率の増加はほとんど起きていないことが、[東アジア諸国と]欧米圏との大きな違いである」539頁

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「日本以外の東アジア諸国の近代化は、日本よりもさらに圧縮されており、欧米諸国や日本が経験したような『第1の近代』と『第2の近代』の区別なしに、近代をひと続きのものとして経験している。チャン[キョンスプ]がこの状態を『圧縮近代』と呼んだのだとすれば、まがりなりにも2つの異質な近代を意識することのできる日本近代はこれと同じではない。そこで筆者は近年、日本近代を『半圧縮近代』」として概念化することを提案している」538頁

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「注目したいのは、出生率低下は、わずかな例外を除いて、地域ごとにまとまって起きているということである」537頁

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「近代の家族変動と社会変動をとらえるための理論的基礎は人口転換(demographic transition)とジェンダーであるべきだと考えている。…産業革命が『物の(生産の)近代』を出現させたとすれば、『人の(再生産の)近代』を生み出したのは人口転換であった…
 人口転換は、近代家族の成立を可能にする条件を生み出した。…近代家族の子ども中心主義という心性のいわば人口学的下部構造である。
 …人生の安定性と予測可能性が高まり、家族経験の同質性が高まったとマイケル・アンダーソンは言う…
 …筆者[落合恵美子]が『社会の中にいくつかある家族類型のひとつ』でしかなかった『19世紀近代家族』と、『社会のどの位置にいる人にとっても、同型的な家族が成立しているはずだということを前提としている』『20世紀近代家族』を区別…山田昌弘も実態レベル(実際の家族が近代家族の性質を備えている)と制度レベル(社会が近代家族を前提として構成されている)を区別して、前者を『近代家族』、後者を『近代家族システム』と呼んでいる…人口転換は制度レベルでの『近代家族システム』の成立を可能にした」534-5頁

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「家族の社会史の領域では、アリエスの流れを汲む心性史に替わって、洗練された科学的な手法を用いる歴史人口学が主流となった。近代への移行という大きな絵を描くより、前近代社会のメカニズムの解明が中心的な関心となった。…欧米圏の研究において『近代家族』という概念化が後景に退いた理由は、学説史的偶然と、社会的現実の変化との、両方と言えるだろう」534頁

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「第1次人口転換と近代家族を単位とする『第1の近代』を作り、第2次人口転換と脱主婦化が個人化と家族の多様化を特徴とする『第2の近代』を開始させた」533頁

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落合恵美子「近代世界の転換と家族変動の論理——アジアとヨーロッパ」533-52頁

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「議論のベースは、アリエスからエスピン=アンデルセンへと世代交代した。その背景にあるのが、山田や落合のいう『第1の近代』から『第2の近代』への構造転換である」「特集『近代社会の転換期のなかの家族』によせて」531頁

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「特集・近代社会の転換期のなかの家族」『社会学評論』256号、Vol.64, No.4(2014)

石崎解説「レヴィ=ストロースの婚姻システム研究は、イトコ婚(内婚)の中でも母方交叉イトコとの婚姻を最も重視し、そこから有名な『交換関係の主要な一環としての女性の交換』という概念を打ち出した。ところがトッドによれば、この類型はイトコ婚の中では統計的にマージナルな形態であり、事例数としては圧倒的な父方平行イトコ婚(いわゆる『アラブ風婚姻』)がほとんど研究されていない。これを忖度するに、平行イトコ婚は、完全に家族内に閉じこもった『内婚の極致』となり、『女性の交換』そのものが成立しないため、理論構成そのものに不都合なところがあるからであろう」837頁

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石崎解説「インドの父系制が、中東からの影響で形成されたと考えられるとすれば、世界の父系変動の震源地は、中国と中東の2つ、ということになろう。その中東起源の父系制は、古典古代においてローマにまで至る東地中海に広がったが、ローマは、エトルリア人、ガリア人という双方性の民族を征服したことにより、双方性と核家族性へと逆行することになり、その中から平等主義核家族が出現する。…西欧の直系家族を生み出した革新の極は、パリである」836頁

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石崎解説「人類は太古において、単一の家族形態を持っていた。その起源的家族は、親族の現地バンドに組み込まれた核家族であり、親族システムは、父系にも母系にも分化していない未分化の双方性に立脚していた。やがて、父系原則が出現し、家族システムの父系化が起こり(父系変動ないし父系革新)、周囲に拡大していくと、それと接触した未分化的民族は、時として反動的な母系形態を採るものも現れる。…つまり、時系列的順序は、未分化・双方性→父系制→母系制ということになる」834頁

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石崎解説「新たな類型体系は、夫婦という最小単位がどの方向に所属するか(方向性)を示す『父方居住』、『母方居住』、『双処居住』の3つの概念の他、『統合核家族』『一時的同居(もしくは近接居住)を伴う核家族』という新たな概念をも組み込んでいる。…世帯そのものを見ると核家族であるが、親族の複数の核家族と近接して居住していたり、集住していたりするケースがしばしば見受けられる。この場合、世帯そのものだけでなく、それらの世界の集まりという一段上のレベルにも目を向けないと、重大な見落としをする危険がある」833頁

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石崎解説「人類史の大きな流れを考えるとき、かつてその軍事的適性によってユーラシアの大部分を征服し、いくつもの帝国を建設した共同体家族の世界制覇に抗して、ユーラシアの西北の果てにかろうじて生き残った核家族が、あるとき資本主義という新たなシステムへの適性を発揮して、やがて世界全体を己のシステムに組み込むことになる、という2つの原理の対立抗争の歴史としてそれを構想することも、不可能ではない。実際、近代世界システムを主導したのは、いずれも絶対核家族の国(オランダ、イギリス、アメリカ合衆国)であった」832頁

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