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「物理学および化学の法則のうち、生物体の内部で、あるいは生物体とその周囲の環境との相互作用において関与する法則ならば、どんなものでも例として選ぶことができるのです」36頁

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「莫大な数の原子が互いに一緒になって行動する場合にはじめて、統計的な法則が生まれて、これらの原子『集団』の行動を支配するようになり、その法則の精度は関係する原子の数が増せば増すほど増大します。事象が真に秩序正しい姿を示すようになるのは、実はこんなふうにして起こるのです。生物の生活において重要な役割を演ずることの知られている物理的・化学的法則は、すべてこのような統計的な性質のものなのです。そうでないようなどんな法則性や秩序性を考えても、それらはすべて原子の絶えまない熱運動によってかき乱されて無効になってしまうのです」25頁

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「われわれの身体は原子にくらべて、なぜ、そんなに大きくなければならないのでしょうか?」21頁

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「生きている細胞の最も本質的な部分——染色体繊維——は『非周期性結晶』と呼ぶにふさわしいものだ…
…有機化学は、ますます複雑な分子を研究することにより、かの『非周期的結晶』のごく近くにまで到達しました。私の考えでは、非周期性結晶こそ、生命をになっている物質なのです」14-5頁

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Schrödinger, Erwin. (1944) What Is Life?: The Physical Aspect of the Living Cell, Cambridge University Press.
=1951→2008 岡小天・鎮目恭夫訳『生命とは何か——物理的にみた生細胞』岩波文庫

「生体についてのこの概念は不完全ではあるが単純な比喩として軍隊の例をあげることができる。このような隊の1つは幾つかの点で成熟した生体に似ている。その大きさは狭い範囲でのみ変化し高度に組織化された構造を持っている。他方ではこの隊を構成する個人は絶えず変化している。人員は加わり職務が代わり昇進したり降職し、いろいろな兵役期間の後に最終的には去ることになる。入るものと出るものとの人の流れは数値的に等しいが構成は変化する。入隊者は食物のようなものである。退役と死は排泄に相当する。
 この比喩は生体構造の動的状態のある面だけしか語っていないので必然的に不完全である。構造単位の絶えることのない置き換えを記載してはいるがそれらの相互作用については論じていない」

まさに方丈記…しかしシェーンハイマーは福岡とは違って、これこそが生命だ!!などと仰々しいことは一言も言ってないですな😅

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「生体内に存在する複雑な有機分子の維持には非常に多くの多様な反応が絶えず起きていなければなんらない。特異的な基が常に移動していて分子の急速な再生が起きているという発見は生体系は密接に結び付けられた化学反応の1つの大きなサイクルであることを示唆している。この考えは生体が燃焼機関であるとみなす古典的な考えとも代謝に内因性および外因性の形の代謝があるとする理論とも両立することはできない。
 燃焼機関の比喩は燃料が絶えず固定したシステムに流れこみ燃料が燃えて老廃物になる図式を描いている。ここに示した新しい結果は燃料だけでなく構造材料もまた流れている定常状態(ステディ・ステイト・オヴ・フラックス)にあることを示している。古典的な図式は身体構造の動的状態を説明するもので置換えなければならない」

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「動物体の諸成分は急速に特異的な分子グループに分解されこれらはある場所から他の場所に移動する。化学反応は微妙に釣り合っていて再生により体成分の総量および構造は一定である。このように一定であることは生体の構造物質が非活性であり代謝に関与していないことを示していると考えてはいけない。
…代謝サイクルはもちろん生命過程の一部であり生きているあいだに中断することはできない。したがって代謝物の絶えることのない新生を食物から同じ種類の分子を大量に供給することによって止めるのは不可能であり、多くの体内成分の再生は食物摂取と無関係に進行する。…
…一般的に自由エネルギーの増加を起こすすべての再生反応は他の過程と共役しなければならない。崩壊する傾向に対抗して構造を維持するためには仕事をしなければならない。壁から落ちた煉瓦を修復するにはエネルギーが必要であり生体においてエネルギー負債は化学反応によって払われる」

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「脂肪についての同位体研究の結果を要約するとしたら、正常動物の脂肪は質的および量的に一定であるにもかかわらず急速に流れている(フラックス)の状態にあると結論せざるを得ない。主として量または比較的な組成変化の測定に限っていた古典的な代謝研究方法がこの動的状態を見いだせなかったことはすぐに理解できる」

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「貯蔵脂肪の脂質は…絶えず種々の複雑な化学反応を受けている。すなわち合成、相互変換、および分解である。有機化合物が量も構成も最終的に変化していないこれらの生物的反応の総和は『分子再生』と呼ばれるものであろう。貯蔵されている脂肪およびその脂肪酸の成分はこのように絶えず急速に再生されている」

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[以下、本文]
「生体のすべての構成物質は機能的であれ構造的なものであれ、構成が単純であれ複雑なものであれ、急速に流れている定常状態にあることを示唆している現代生化学の幾つかの結果…」

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[ハンス・クラークによる『サイエンス』シェーンハイマー訃報記事から]
「シェーンハイマーの研究の結果から代謝的な『再生』という概念が生まれてきた。これにおける中心的なアイディアとは、絶えず組織において化学物質は循環している代謝『プール』に放出されるとともに代謝『プール』から取り込むことである。これらの循環的過程にともなってプールの諸成分のあいだで数多くの反応が起きているがそのうちで廃棄物の除去に関する反応は数が少ない」

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Schönheimer, Rudolf. (1942) “The Dynamic State of Body Constituents.”
=水上茂樹訳『生体構成物質の動的状態』青空文庫

福岡伸一が動的平衡論の元ネタと自ら公言している論文…まさか青空文庫にあるとは😅

「生命という名の動的な平衡は、それ自体、いずれの瞬間でも危ういまでのバランスをとりつつ、同時に時間軸の上を一方向にたどりながら折りたたまれている。それが動的な平衡の謂いである。それは決して逆戻りのできない営みであり、同時に、どの瞬間でもすでに完成された仕組みなのである。
 これを見出すように操作的な介入を行えば、動的平衡は取り返しのつかないダメージを受ける。もし平衡状態が表向き、大きく変化しないように見えても、それはこの動的な仕組みが滑らかで、やわらかいがゆえに、操作を一時的に吸収したからにすぎない。そこでは何かが変形され、何かが損なわれている。生命と環境との相互作用が一回限りの折り紙であるという意味からは、介入が、この一回性の運動を異なる岐路へ導いたことに変わりはない。
 私たちは、自然の流れの前に跪く以外に、そして生命のありようをただ記述すること以外に、なすすべはないのである」284-5頁

がんと闘うな近藤的な結末😅 人類史上延々と続けられ多大な効果を上げてきた家畜化・栽培化による「自然」の改変(人為淘汰)をどう考えてんのかねえ

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「機械には時間がない。原理的にはどの部分からでも作ることができ、完成した後からでも部品を抜き取ったり、交換することができる。そこには二度とやり直すことのできない一回性というものがない。機械の内部には、折りたたまれて開くことのできない時間というものがない。
 生物には時間がある。その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度、折りたたんだら二度と解くことのできないものとして生物はある。生命とはどのようなものかと問われれば、そう答えることができる」271頁

「機械」のカリカチュアないし藁人形論法では…そんなに単純な機械ばかりじゃないでしょ😅

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「<ドミナント・ネガティブ現象>
 タンパク質分子の部分的な欠落や局所的な改変のほうが、分子全体の欠落よりも、より優位に害作用[dominant negative]を与える。部分的に改変されたパズルのピースを故意に導入すると、ピースが完全に存在しないとき以上に大きな影響が生命にもたらされる。
 ドミナント・ネガティブは、分子生物学の現場ても広く知られるようになった生命という系固有の現象である」266-7頁

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「致命的な欠落ではなく、その欠落に対してバックアップやバイパスが可能な場合、動的平衡系は何とか埋め合わせをしてシステムを最適化する応答性と可変性を持っている。それが ”動的な” 平衡の特性でもある。これは生命現象が時に示す寛容さあるいは許容性といってもよい。平衡はあらゆる部分で常に分解と合成を繰り返しながら、状況に順応するだけの滑らかさとやわらかさを発揮するのだ。
 ところが動的な平衡系にとってこの許容性が、逆に作用することがある。平衡系は、偶発的なピースの欠落に対してはやわらかくリアクションする。しかし、平衡系は人工的な紛い物までは予定していない」265頁

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「生命現象にはあらかじめさまざまな重複と過剰が用意されている。…
 ある遺伝子をノックアウトしたにもかかわらず、受精卵から始まって子マウスの出産にまでこぎつけることができたということは、すなわち動的な平衡が、その途上で、ピースの欠落を補完しつつ、分化・発生プログラムをなんとか最後まで<折りたたみ>えたということである。リアクションの起結、つまりリアクショニズムとして新たな平衡が生み出されたということである」264頁

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「さまざまな分子、すなわち生命現象をつかさどるミクロなジグソーパズルは、ある特定の場所に、特定のタイミングを見計らって作り出される。そこでは新たに作り出されたピースと、それまでに作り出されていたピースとの間に、形の相補性に基づいた相互作用が生まれる。その相互作用は常に離合と集散を繰り返しつつネットワークを広げ、動的な平衡状態を導き出す。一定の動的平衡状態が完成すると、そのことがシグナルとなって次の動的平衡状態へのステージが開始される。
 この途上の、ある場所とあるタイミングで作り出されるはずのピースが1種類、出現しなければどのような事態が起こるだろうか。動的な平衡状態は、その欠落をできるだけ埋めるようにその平衡点を移動し、調節を行おうとするだろう。そのような緩衝能が、動的平衡というシステムの本質だからである。平衡は、その要素に欠損があれば、それを閉じる方向に移動し、過剰があればそれを吸収する方向に移動する」263頁

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「膜に対してタンパク質がどのような方向で結合しているか。これもまた細胞生物学における重要なトポロジーの問題である。トポロジーが場所を特定し、その局在性が機能を特定するからだ。
 細胞は自分自身の内部に別の内部を作ってそれを外部とした。このような区画分けはそれだけで秩序の創出となる。区画の内外で、別々の環境を作り出し、それぞれ個別の反応や活動を営むことがてきるからである。タンパク質のトポロジーもその役割に応じて、どちらの世界に面して生きるかが厳密に決められることになる」225頁

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