清水基吉『寒蕭々』、読了。
知らない作家だったが、小説「雁立」で第二十回芥川賞受賞者らしい。結社は「鶴」で石田波郷門。
句の調子は良いのだが、やや余情に乏しい。途中に入る家族詠は、やや粗い。
季語でない名詞+「や」という上五は、いまでもたまに流行る技法だなと思った。
体操や松の花散る松の風 清水基吉
渋谷川西日のなかの荒神輿
人待ちて立つや坐るや雁渡る
てつぺんの空澄んでゐる焦土寒む
酔曵いて戻る暗がり花咲けり
初燕旅の三飯あますなし
竹の皮散るよと見れば雀色
弟や恋の傘さす百日紅
玉の露呼べば応へて妻そこに
蝶交み飛ぶをしりへに薪を割る
パン食ふや時の記念日凡に過ぐ
行雁やなまぐさものを夕の膳
安住敦『古暦』、読了。
今日から『現代俳句大系』は第十巻に入る。
この頃の安住敦は新興俳句色が抜けて、穏やかな叙情が流れている。久保田万太郎の影響も多分にあろう。身近な家族を材にとっても嫌味がない。
地味めだが、佳句が多い。
雁啼くやひとつ机に兄いもと 安住敦
花の雨買ひ来し魚の名は知らず
子を寝かせ湯にゆく妻に春の雁
春惜しむ食卓をもて机とし
しぐるゝや駅に西口東口
鳥渡る終生ひとにつかはれむ
秋風や夕餉すませて子と町に
冬の虹消えむとしたるとき気づく
ある朝の鵙きゝしより日々の鵙
冷かに壺をおきたり何も挿さず
舞ふ獅子にはなれて笛を吹けりけり
麦秋や箒かつぎて箒売り
水仙の枯れゆく花にしたがふ葉
涅槃図に束の間ありし夕日かな
「信用」というものが「ハック」されてきているんだよね……。
後発薬4割、承認書と異なる製造 業界自主点検に「衝撃的」:東京新聞デジタル
https://www.tokyo-np.co.jp/article/368390
『俳句』2024.12は「特集 没後20年 田中裕明――句集未収録作品を読む」か……。
これはKindleではなく、紙の本で買おう……。
秦正樹『陰謀論』(中公新書、2022)読了。いったいどのような日本人が陰謀論に嵌まるのかを世論調査データと統計学で読み解いている。
「第三者効果」によって「私は陰謀論に騙されやすくはないが、多くの人は陰謀論に騙されやすい」と思い込んでしまう。「普通の人自認層」ほど右派的・排外主義的で陰謀論を受容しやすいが、「動機づけられた推論」にもとづけば、左派・リベラル派であっても受容する可能性が高い。政治や時事的な関心のある人ほど陰謀論を信じやすく、プライベートな出来事に没頭している人のほうが陰謀論を信じにくいなどなど、データ分析による説得力ある論だった。
私自身は政治や時事的な関心が割とある方だと自認していて、自分も陰謀論に嵌まり込んでしまう可能性は十分にあるな、と思った。
野矢茂樹の本を続けて読んだが、適度にユーモアがあり、面白い。内容はガッツリ濃いのだが、あまり疲れずに読める。『語りえぬものを語る』も読んでみようと思う。
西村義樹・野矢茂樹著『言語学の教室 哲学者と学ぶ認知言語学』(中央公論新社、2013)、読了。
認知言語学者の西村が哲学者の野矢に認知言語学について講義する対談形式の本。
西村の出す用例も豊かだが、野矢の要約力と批判力が極めてシャープ。
白眉は第4回「『死なれた』のか『死なせた』のか――使役構文の家族的類似性」と第5回「『村上春樹を読んでいる』――メトニミーをどう捉えるか」。
「使役」とは「因果」。「太郎が窓を開けた」は「太郎が窓に働きかけて(原因事象)、その結果窓が開く(結果事象)」こと。
「赤(い)」にあたる語はいろいろな言語にあるが、どの言語でも共通にその語で意味される赤さの範囲があり、それを「焦点色」と呼ぶ。「焦点色」は人間に共通している。
ラネカーによると、人間には「参照点能力」が備わっており、「メトニミー(換喩)」はその能力の現れ。「村上春樹を読んでいる」と言う場合は、村上春樹という人物が「参照点」で、彼の作品が「標的(ターゲット)」。などなど、自然言語の不思議さに立ち会える。
とても面白かったです!
#読書
拡散お願いします。
小説家の李琴峰さんが卑劣なアウティングによってカミングアウトに追い込まれました。この犯人は欧米の反トランスグループとも繋がって、情報を拡散しているようです。
こんなことはあってはならない。許せない所業です。
以下はスレッズの李琴峰さんのポストから。
スレッズが見れなければ。直接noteのページを。
俳人・岡田一実。俳句とか考えごととか。美味しかった話とか、読んだ本の記録とか、香水(主に量り売り)とか、旅のこととかいろいろ揺らぎつつ。幻聴があり、人生はだいたい徐行。リブ返しはちょっと苦手。体調によっては返せません。
HAIKU,for its own sake. she/they
句集に『境界ーborderー』(2014)、『新装丁版 小鳥』(2015)、『記憶における沼とその他の在処』(2018) 、『光聴』(2021)、『醒睡』(2024)。単著に『篠原梵の百句』(2024)。