安住敦『古暦』、読了。
今日から『現代俳句大系』は第十巻に入る。
この頃の安住敦は新興俳句色が抜けて、穏やかな叙情が流れている。久保田万太郎の影響も多分にあろう。身近な家族を材にとっても嫌味がない。
地味めだが、佳句が多い。
雁啼くやひとつ机に兄いもと 安住敦
花の雨買ひ来し魚の名は知らず
子を寝かせ湯にゆく妻に春の雁
春惜しむ食卓をもて机とし
しぐるゝや駅に西口東口
鳥渡る終生ひとにつかはれむ
秋風や夕餉すませて子と町に
冬の虹消えむとしたるとき気づく
ある朝の鵙きゝしより日々の鵙
冷かに壺をおきたり何も挿さず
舞ふ獅子にはなれて笛を吹けりけり
麦秋や箒かつぎて箒売り
水仙の枯れゆく花にしたがふ葉
涅槃図に束の間ありし夕日かな