リメイク版『蛇の道』
オリジナル版の香川照之は割とフィクショナルな狂気を纏っていたけど、今作のダミアン・ボナールは頻繁にお菓子を口にしていたりと、人ゆえに状況に押しつぶされている感がありました。それに対して柴咲コウの平常時の冷静さは哀川翔よりも強くて、ふとした瞬間に滲み出る怒りや憎しみがより強調されいたので、メイン2人のコントラストがとても際立っていました。(もちろんビジュアル的な対比もすごい)
溶接シーンとか、オリジナル版の記憶に強く残るようなショットは割と再現されているのだけれども、柴咲コウがやっていることでその異様が際立っていてとてもよかったですね。
あとアクションの間抜けさとかっこよさのバランスも好きでした。
そして西島秀俊が「たまたまスケジュール空いてたので来ました」感のある出方をしている(実際に1日だけ空いてたらしい)んだけど、めちゃくちゃ不穏なのでさすがだなとなりました。
あーあとロボット掃除機を写したショットが本当に最高。
ただ今作の設定変更によって若干陰謀論ぽい感じになってしまっているのと、哀川翔の仕事(なんなのあの塾)と比べて柴咲コウの仕事が割リアル寄りなので全体の計画のガバさが目立につくようになってしまった感じがありましたね。
WWDCでチラチラ写ってたマット・デイモンとケイシー・アフレックの映画、ダグ・リーマン監督でケイシーが脚本なのか
https://www.youtube.com/watch?v=Q8bE6h9ScBI&t=136s&ab_channel=ONEMedia
『告白 コンフェッション』原作読んだ上での感想
上映時間74分だし、石倉が韓国人のジヨンに変わっている以外は大体原作まんまなのかなーと思っていたけど、覚えてる範囲でもエピソードが一つ削られてるのと終盤の展開は割と違った。
友達という対等であることが望ましい関係性の2者間で情報・感情・身体の様々な不均衡が積み方なっていくことで緊張感が高まっていくのはやはりすごく面白いし、相手の姿が見えている/見えていないという状態がダイレクトにそのパワーバランスに寄与するのは、映像化した意味があって良かった。
その点では、韓国人への設定変更は言語の壁という大きな情報の不均衡ができるので納得感ある改変だったかなと思う。
ただ、ジヨンの行動の見せ方が浅井寄りの目線であるとはいえあまりにもホラーすぎるし、最終的に浅井の方が悪いことしてましたとなった後で夢オチ×2みたいな感じになるのが反転がぼんやりしてしまう気がしてうーんとなった。
『バジーノイズ』人と関わらず孤独にDTMに打ち込む清澄が、同じ団地の住人・潮と出会ったことでミュージシャンとして人や社会との関わりが広がっていくという話
清澄の作る音楽が、最初は環境音を取り込んだ打ち込みのローファイミュージックだったのが、人間関係が広がるにつれベースやドラムが入って音色が広がったり、逆に感情を失った作曲マシーンと化した終盤ではつまらない打ち込み音楽になっていたり音楽の作り込みが作劇に生かされてたのが良かったです。あと、打ち込みをバンドサウンドでやるのガチアンチ人間としては、終盤で人に提供した曲がライブでバンドアレンジの更につまらない曲になっていたのがぐっと来ました。
(そもそも清澄の作ってる曲がlofi hip hop radioというかサクラチルビーツ過ぎてこれ売れるんですかねというのはあるんですが…)
そして、潮がマニック・ピクシー・ドリーム・ガールすぎるのでは〜〜と思っていたところにきちんとその回答があったり、高低差の活かし方とか、風間太樹監督作初めて見るけどたしかにそつなく上手いなと思いました。
『ありふれた教室』頻発する窃盗事件が問題となっているドイツの中学校で、新任の教師が生徒への疑いを晴らすために取った行動が予想外の波紋を広げていくというあらすじ。
舞台となっている学校がゼロ・トレランス方式を導入している(ドイツには公立校への導入が定められている州があるらしい)ので、窃盗事件の捜査が結構えげつない。男子生徒だけ教室に残して財布の中身を確認するとか、生徒を教師が取り囲んでチクリを強要したりとか、人権侵害の区域まで踏み込んだ犯人探しがされている。しかも万が一窃盗犯とみなされた場合のペナルティもその後の人生に影響を及ぼしかねないくらい重い可能性がある。そんな状況で自分の生徒が疑われていたら疑いを晴らしたくなるのが人情というもので、主人公は犯行の瞬間を捉えようと盗撮を試みます。結果として犯行の瞬間らしきものは撮れるんですが、その行動によって主人公がどんどん追い詰められることになっていきます。
「子供には学校と家しか居場所がないから追い詰められやすい」みたいなことがよく言われますが、この映画は学校以外の場所での出来事を一切映さないことで、主人公の逃げ場所のなさが強調されているのがいいなと思いました。
また、同僚との会話や授業のシーンなどちょっとした場面にも緊張感があって良かったです。
『パリ、テキサス』40年前の映画にどうこう言っても仕方ない話ではあるけど、主人公のやってることが今の価値観だとひどすぎてびびった。でも、今まで他のヴィム・ヴェンダース作品見てて「これどういうアングルでこの描写入れてんのかな」と思ってたことへの理解度は上がったので見てよかった。