ANORAパルムドール受賞したし、早めに日本公開されるかな……
『胸騒ぎ』デンマーク人の一家が旅行先のイタリアで知り合ったオランダ人一家の自宅に招待される。週末を過ごすうちに違和感が積み重なっていき、という話。中盤までのオランダ人一家の絶妙な嫌な感じが積み上がっていく感じはすごく良い。
子供もいてイタリアにバケーションに行く経済的な余裕もあってベジタリアンにも理解を示すこの一家は自分たちと同質性が高いはずだという先入観だったり、デンマーク人家族の夫の事なかれ主義感だったり、まぁこっちに全く落ち度が無いわけではないしみたいな引け目によって逃げるチャンスを何度も逃し、引き返せない状況になってしまう、いわゆるゆでガエル的状況までに持っていくまでがすごく丁寧だし、冷え冷えとしたショットもかっこいい。
なんだけど、終盤でことが決定的になってしまってからが結構ご都合ぽいというかちょっと雑な感じがして少し心が冷めてしまった。まぁもう事態は決してるし、これ以上こねくり回しても仕方ないでしょってことなのかもしれないけど…。
『RHEINGOLD ラインゴールド』ドイツで活動するクルド人ラッパー・プロデューサーのカターの半生を描いた伝記映画。ファティ・アキン監督。
ラッパーの立身出世を描いた話って、苦境に立たされている人物がヒップホップという手段に出会って自身の境遇と戦いながら音楽活動に打ち込み名声を得ていくという流れのものが多い印象だけれども、本作はその型とはちょっと違いました。
カターの両親が著名な音楽家ということもあって、子どものときにピアノを習っていたりと生活の中で音楽との関わりは多いんだけれども、作中ではちゃんとした曲作りのエピソードは2つくらいしかありません。というのもカターはどちらかといえばミュージシャンよりもDr. dreのようなプロデューサーを目指していて、また音楽をメイクマニーの手段として見ている節もあるんですよね。なので、曲作りの描写が少ない分、レーベルを立ち上げてプロデューサーとして成功しようとするカターがその資金を得ようとして徐々に首をしめられている様子がメインとなっているわけです。
デデデデがつまんなすぎてこの後予約してるゴーストバスターズ見るのやめて帰宅しようか考えるくらいテンションが下がった
『12日の殺人』フランスの田舎で若い女性が生きたまま火をつけられ殺されるという事件が起き、昇進したばかりの刑事とベテラン刑事のコンビが捜査にあたるが空振りが続くというあらすじ
殺し方が残忍なので怨恨の線で捜査するんだけど、痴情のもつれがありそうな周囲の男性が全員被害者と肉体関係があり、かつその関係性も刑事側(と見ている人間)が思い浮かべるストーリーとは異なるので、刑事たちが常識を破壊されて徐々に壊れていくのがよかった。
常識では解決できない事件という観点ではドミニク・モル監督の前作『悪なき殺人』と共通する部分であり、事件にまつわるわかりやすいストーリーの否定という部分では『落下の解剖学』との共鳴を感じた。
『落下の解剖学』が犬の映画である一方で『12日の殺人』は猫が象徴的なモチーフとして使われているし。この2作品が続けてセザール賞を受賞しているというのはフランスの今の社会の反映なんですかね。