「近代の家族変動と社会変動をとらえるための理論的基礎は人口転換(demographic transition)とジェンダーであるべきだと考えている。…産業革命が『物の(生産の)近代』を出現させたとすれば、『人の(再生産の)近代』を生み出したのは人口転換であった…
人口転換は、近代家族の成立を可能にする条件を生み出した。…近代家族の子ども中心主義という心性のいわば人口学的下部構造である。
…人生の安定性と予測可能性が高まり、家族経験の同質性が高まったとマイケル・アンダーソンは言う…
…筆者[落合恵美子]が『社会の中にいくつかある家族類型のひとつ』でしかなかった『19世紀近代家族』と、『社会のどの位置にいる人にとっても、同型的な家族が成立しているはずだということを前提としている』『20世紀近代家族』を区別…山田昌弘も実態レベル(実際の家族が近代家族の性質を備えている)と制度レベル(社会が近代家族を前提として構成されている)を区別して、前者を『近代家族』、後者を『近代家族システム』と呼んでいる…人口転換は制度レベルでの『近代家族システム』の成立を可能にした」534-5頁
「韓国や台湾では1997〜98年のアジア通貨危機を契機に離婚率が急上昇し、出生率は日本を下回る極低出生率の水準にまで低下した…経済状況の悪化の中、人々はまさに自分にリスクをもたらしかねないものとして、結婚・出産を回避したのである」540頁
「半圧縮近代である日本は高齢化の開始が遅く、ヨーロッパ諸国が高齢社会(高齢化率14%以上)となった1980年代にも人口学的好条件を保っていた。80年代の日本の経済的優位は、少なくとも部分的には欧米諸国との人口学的条件の違いに寄っていた」541頁
人口ボーナス