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 静岡家裁の特例法判断について、トランス排除派は本当に低い解像度で「批判」やってるのだなと驚いた。いわゆるFTMだと外性器形成なしで閉経後に戸籍変更したケースが既にあるのだが、この件に関する反応を見ていると、活発に当事者に絡み、仲岡弁護士に説教?するようなアカウントですらそれを知らないのだ。さらに「手術してないのに"望む性に近似した外性器"になっているとは?」と混乱しているが、これはテストステロンが身体にもたらす極めて基本的な変化もわかっていないということ! 
 もちろん、FTMの外性器の「見なし」について、法律制定初期に家裁によって判断が分かれたことも知らないだろう。望む性の外性器に近似させることを法律で定めたはよいものの、テストステロンによる変化を「これなら"男性器"っぽい」「いやそうでもない」と裁判官の価値観で揺らいだというのが実態。だからナンセンスなのだし、法律で性器の形状を決めることは「標準」に力を与えてしまうことだなのだ。
 それにしてもこの程度の「批判」だから効力がないんだなーとよくわかった。

 これは古い論文だが07年時点の特例法周辺について書いた。ちょっとだけ直したものは単著にも収録している。
r-gscefs.jp/pdf/ce04/yy01.pdf

 今日は中秋の名月らしい。
 イチオシの中秋の名月映画と言えばなんといっても『激戦』(2013、香港・中国)。
 挫折と再起あり、鬱のしんどさあり、筋肉あり、恋愛化しない男女あり、名子役あり、さらに少しのクイアみまであるのに、迷走せずに成立している傑作。公開時神戸まで行って号泣した思い出。しかも劇伴もめちゃいいので.....アラフォー付近にはかなり刺さるはずで、大型犬系男子とかわいいオッサンが好きなひとにも間違いなく刺さるはずで......
 監督ダンテ・ラムはキャラクタを追い込んで困難の鶴瓶打ちにするので『ビースト・ストーカー』『密告・者』あたりは観る側にもかなり緊迫感があるが、これは滅多にない後味ではないか。近年は大陸資本の国威発揚大型アクションばかりで寂しいのだが......

写真1、勤務帰りの立命館のバスターミナルから見えた満月
写真2、『激戦』の香港版ポスター。筋骨隆々のニック・チョンとエディ・ポンと、「怖れれば人生すべてを失う」「お前のリングに上がれ」というキャッチコピーが書いてある。

〈続き〉

『出産したパパ』(2019、英)
 子どもを産むことに決めたトランス男性のフレディ。ホルモン投与をやめ、いくつかの破綻を経験しながらも出産へ向かう。子どもを望む気持ちと受け入れ難い身体の苦痛はどちらも真実で、誰かとの関係の中でではなく、個人の選択として出産を選ぶのが本作のポイントか。ただこういう作品を観るときは必ず、産みたいひとは産めばいい/どうしても遺伝的な子どもでないといけないか? の気持ちが同時にある。相当の条件が揃ったひとにしか実現できない話だということも。

海外短篇集の中からひとつ『GMT+9』(2022、ドイツ)
 サキとマキ、終わりつつある2人が互いに語りかける形で物語は進む。生育環境、実家の経済状況、譲れないプライド、すれ違いの原因はよくあることだが、環境を変えてもそのズレが埋まるわけではない。不本意な別れに際して相手に少しの傷を残そうとする独白の応酬が、ザラリと苦い後味を残す。

 今年は〆切等で首が回らず、4プログラムの鑑賞でした。スタッフの皆さん、ありがとうございました。

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関西クィア映画祭2023で観たものの感想

『私たちの場所』(2022、インド)
 劇場公開されるRRRやランガスタラム、KGF、PATHAANでは描かれないが、これもまたインドの姿。2人のトランス女性の部屋探しを軸に、トランスが受ける普遍的な差別や日常的な傷つきを極めてリアルに拾い上げる。クソみたいな奴、いい感じの友人、興味本位の人間…。そこに暴力はあるが救ってくれる英雄はいない。隣り合って生きる人々の少しずつの厚意が不安定に明日を繋いでいる。困難を描きつつ連帯の可能性や力強さも感じさせる名作! RRRでインド映画に興味を持った人にも是非観てほしい。

『ココモ・シティ』(2023、アメリカ)
 セックスワークで生計を立てる黒人トランス女性4人が次々とまくしたてる。客として来るのは「イケイケ」の黒人男性や妻子持ちも多いこと、そういう客に限ってボトム(「ウケ」)であること……そして黒人の客ほどトランス女性との関係を隠したがること。もちろん背景には黒人社会の男性性信奉や同性愛嫌悪があり、黒人社会で女性に性別移行することの困難や路上暮らしに追い込まれる理由とも関係する。語りは極彩色だがフィルムはモノクロ。なお出演者の1人はこの4月に命を落としている。

〈続く〉

(承前)
 昨日、立岩真也botのお陰で、ジャニスへの言及があることを偶然知った。「彼女は、このコンサートのあった1967年に最初のレコードを出しているが、それは売れなかったのだそうだ。で、このコンサートの「ボール・アンド・チェイン」で有名になった、ということのようだ。(…)その声と、跳ねて、というよりはかかとをサンダルから浮かせ、小さく膝を曲げて、そして膝を伸ばして、足を真下に蹴るようにして、歌う姿は、しんに心揺すぶられるものがある」。

 俺が少年に送ったリンクも完全にそれだったんだけど、結構いいセンスしてるだろ? じっくり音楽の話なんかする暇もなかったし、駒場の自治会の話も全然してくれなかったね、もっと時間があると思ってたよ
youtu.be/X1zFnyEe3nE?si=0lG11h

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 立岩真也追悼記事が続々と出ているが、読むのには勇気がいる。私の中ではシュレディンガーの立岩真也があって、あの北山の違法建築を訪ねて窓を開ければ、普通に座っていて「ああ、吉野」と言いそうな気がしている。死に顔まで見たのに不思議なものだが、窓を開けてみるまではわからないという感覚がある。この脳内で完全に再現できるイメージを、過去や思い出という決定的な方向に処理することを躊躇っている。
 一方で助手の事務は、常に彼の死を前提に進んでいる。担当教員が立岩真也の院生の処遇、担当が立岩真也のプロジェクトの対応、書類のサインやハンコ、………

 盆に立岩邸を訪ねたとき、社会人院生とその息子さん(17才)も来ていて、年季の入ったレコード棚を一緒に見た。ストーンズ、ビートルズ、ボウイ、キース・ジャレット、ジャニス・ジョプリン、ジミヘン、T・レックス(クィーンやラモーンズ、ピストルズはなかったな)
 まぁ少年はビートルズくらいしか知らないわけで、どれか聴いてみたいなというのでジャニスのリンクを送っておいた。10代男子、カッコいいオトコの曲はこれからいくらでも聴けるので。(続)

@otonashi_haya
 音無さん、コメントありがとうございます。私は昔から氏の調査が苦手ではあったのですが(FTMの過剰な「男らしい仕草」を話し手と一緒に笑う描写など)、明確な名乗りがある当事者の扱いについては本当に問題があると思います。調査者が(実質話していることがほとんど同じだな)と思っても、ノンバイナリと無性とXジェンダーの当事者を、同じアイデンティティとしてまとめてはいけないわけで。
 noteのテンションも、己の無謬性を前提に書かれているような印象を受けてかなり苦痛でした。私は「みんなも大丈夫だよ」とか「生き延びようね」みたいな位置からは決して話せないですね。過去の投稿を見ていただければわかるように、責任の持てる個としての「提案」にとどめるようにしています(というか、自然とそうなります)。

(承前)
 あのとき鶴田さんは既に専任で私はただの院生であり、明石書店の本に収録されてしまったその記述についてわざわざ編集部に連絡をとり、先方の見解も聞いたのだが、「トランスと性同一性障害の使われ方は過渡期にある」というような、釈然としない弁明しか返ってこなかった。当時非常に重い鬱であった私は、やりとりを継続することができなかった。
 鶴田さんが「正規医療」側の医師と診察を参与観察できるような関係まで築いており、「ひどい裁判だったらしい」「手術にリスクはつきもの」と傍聴にも来ずブログに記述するような「大御所」と懇意な状況にあると知っていた私が、あれ以上なにをすることができたろうか?

 あのときは自分も苦しかった、ということで済まされるのであれば、それは研究者としても人間としても誠実な態度とは言えないだろう。自分は新天地に逃げられても、過去の言動はここに残されている。そういうキャラクタとして日本での研究者を演じたならば、最後のセリフまで述べてから舞台を降りてほしい。

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(長文)
 早い時期からトランスジェンダー(特にFT 系)のエスノグラフィーを手がけてきた研究者の鶴田幸恵さんが、新たにnoteを始め、カナダに移住した経緯やご自分の背景を語り始めたことを知った。
 非常に複雑なアイデンティティを持ちながらそれを抑圧し/させられてきたようだが、なぜそれだけの苦労をしてきたはずの人が、かつて私のことを「性同一性障害の吉野靫」と学会レジメや論文で記述できたのか、それは何年経っても引っ掛かっているし、当時は十分に傷ついたし、どうしても解せない。
 そもそも私は「自分にとって性同一性障害は便宜的なもの」と公言していたのだし、「性同一性障害の診断を受けたことを明らかにしている吉野靫」と、「性同一性障害の吉野靫」が全くの別物であることくらい、明確にわかっていただろうに。そして正規医療で事故に遭い、裁判で被告から「壊死は原告が術後に不適切な生活をしたせい」と主張され、古参の当事者から激烈にバッシングされた私にとって「性同一性障害」の語がどういう意味を持つかくらい、簡単に推し量ることができたろうに。
(続)

@szk3nr @ikeitani
それはすごくわかります。ヤフコメ的な書き込みの場で、好意的な内容の中にも「ジェンダーの人」用法を見かけることがあります。たまーに気が向いたときは「ジェンダーは皆にありますよ」と返信したりしますね(笑)

@szk3nr @ikeitani
ジェンダーという語はそれとして広まりつつ、やはり「新しいもの」「欧米とかあっち側の価値観」という感覚で、自分とは関係ない向こう側の人たちというニュアンスは強いと感じます。
学生時代にバックラッシュを経験した身としては、引用で清水さんが書いてらした「フェミニズム系の主張をする人や組織に対する揶揄のニュアンスを込めて使われてい」たという実感が近いですね。

@ikeitani 私は20年前には既に、「ジェンダーの(活動をやっていてハラスメントとかに超うるさくて、でも当事者だから正面切って文句も言いにくいし教職員にもすげーキレてる厄介な)人」と呼ばれていました!

 各書店や注文した方のお手元に『われらはすでに共にある 反トランス差別ブックレット』(現代書館)が届き始めているようです。増補分の私のエッセイは手紙形式。昔は活動してたんだけど…若いときは頑張っていた…と思うことがある同世代の方へ、「ご機嫌いかがですか」。すでに読んだ方からは、拙著の「はじめに」の続きとしても読めるという感想をもらいました。

 書き始めるときには歌や詩、映画のフレーズから着想を得ることが多いのですが、今回は中島みゆき「御機嫌如何」と、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』でした。中島みゆきは人生の殆どの局面に対応していると思います。
youtu.be/MjVwVyM7XAk
 これは「なぜそのセリフがそこに入るのか??」ということを考え始めると、なかなか怖いような歌でもあります。

 立岩真也用の献本が宙に浮いたことを受け止めかねたまま、今日で大学の一斉休暇も終わりです。

吉野靫 さんがブースト

本日ふぇみゼミの講座「ポスト#MeTooの反性暴力運動」の第一回「ジャニーズの性暴力問題」で性加害当事者の会代表の平本淳也さんと話します。
基本平本さんに耳を傾けながら、
・芸能界の就労の問題
・メディアと芸能界の癒着
・性暴力被害に関する法制度・セラピーなどのケア
といった話もしたい。
postmetoo.peatix.com/

エトセトラ Vol.8の特集「アイドル、労働、リップ」(和田彩花さんと共同で特集編集)ではあまり掘り下げられなかったものの、男性被害に限らず、女性や、ノンバイナリーやジェンダークィアの人々とも、文化・芸術産業からエンパワーされてきた人たちとも関わりあると思います。
春に行われた、振付師で、現在基本的に女性向けながら、アイドルの心身のケアとしてのトレーニングやセラピーなどに取り組む竹中夏海さんと、和田さんとのトークでの内容も、芸能界での働き方という点から、ジャニーズ性加害問題と通じると思う。以下の記事など参考にしてみてください。
dot.asahi.com/articles/-/19066

芸能界なんて浮ついた、とせず、フェミニズムに関心ある人にぜひ参加してほしい。

@moriteppei
休薬期間以外のところで、次の注射までに効果切れそうなとき補助的に使うとよいようです。アルコール強いので繊細な部分に塗るときは気をつけてください!
前は一箱3000円ちょっとだったんですけど、物価高騰の煽りでかなり値上がりしていますね……

@moriteppei
またもや横からお節介すみません。
忙しくて病院に行けないときなど、ホルモン療法中のFTMはこうした製品を使ってしのぐことがあります。
okusurinavi.shop/detail.php?pi
血中濃度を安定させとくことが大事なので、補充療法の補助に使っている男性もいます。ご参考までに……。

@moriteppei
よかったです! ここで売ってないものについては、出版社に連絡したら電子ファイルを送ってもらえるようにしてあるんじゃないかと思います。

@moriteppei こんにちは。
英語版の電子書籍に日本語版第二版のファイルも同梱されています。お役に立ちましたら……。
arsvi.com/ts/2016b2-j.htm

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