そういや先日の話にはなるんですが、濱口竜介監督の特集上映にて念願の『ハッピーアワー』と『親密さ』を見てきたので、今更ながらの感想を。
『ハッピーアワー』は仲の良い4人の既婚(或いは元)女性の男女・女女の関係を巡る群像劇で、構成と脚本の妙がえげつなく、ワークショップで募られたほぼ新人の俳優陣(‼︎)と5時間弱の上映時間(‼︎)でもあっという間に終わる、すげ〜映画でした。2つのワークショップが基軸となっているのですが、その打ち上げシーンを延々と長回しで撮影して物語が一気に転回する様をまざまざと見せつける、会話劇が得意な濱口監督の真骨頂だな~と思わされましたね…
ラストまでこの4人の女性の行く末はどうなってしまうのかわからない、だけど観た後は不思議と絶望感を感じずすっきりした気持ちになる、納得の傑作です。
『パリ、テキサス』も観てきました。ロードムービーという前知識しか得ておらず、序盤の主人公と弟の会話中にずっと車窓を撮影していたり、バックミラーを撮って運転手の目だけでその車内の雰囲気を描こうとしているところが水…どうでしょうじゃ〜んと嬉しくなっていたのですが、中盤以降の生き別れていた主人公の息子と再会し、どんどん二人が"悪友"のように打ち解けてゆくところにどんどん顔が綻んでゆき、ラストでゲーゲー泣いてしまいました。やっぱりヴィム・ヴェンダースは強いぜ………
『オッペンハイマー』を観ました。原子爆弾は原子核の「連鎖反応」(核分裂)、というワードから連想されるように、オッペンハイマーやその周囲の科学者たちが追求してきた"美しい"数式・理論が、WWIIにおける技術革新の飛躍と国家的兵器開発競争の連鎖反応でどんどん己の手中に収まるものでなくなってゆき、「おぞましい新世界」の幕開けをしてしまった、その抗えない「どうしようもなさ」を描いた作品だった。そして、その後の「赤狩り」の諮問シーンが入ることで、それが後世の彼の「語り」なのだと判明することによって、ノーランお約束の「過去・現在・未来」の三部構成の物語なのだとわかる、国家・思想・政略の入り乱れた激動のアメリカを見せられる、とても見応えのある作品でした。