『オッペンハイマー』を観ました。原子爆弾は原子核の「連鎖反応」(核分裂)、というワードから連想されるように、オッペンハイマーやその周囲の科学者たちが追求してきた"美しい"数式・理論が、WWIIにおける技術革新の飛躍と国家的兵器開発競争の連鎖反応でどんどん己の手中に収まるものでなくなってゆき、「おぞましい新世界」の幕開けをしてしまった、その抗えない「どうしようもなさ」を描いた作品だった。そして、その後の「赤狩り」の諮問シーンが入ることで、それが後世の彼の「語り」なのだと判明することによって、ノーランお約束の「過去・現在・未来」の三部構成の物語なのだとわかる、国家・思想・政略の入り乱れた激動のアメリカを見せられる、とても見応えのある作品でした。
ゲゲゲの謎を観ました。「戦後」という舞台設定の中で「残された者に未来を託す」というテーマ設定はとても良かったのですが、展開が急速なのに伴う人物関係の描写不足がずっと尾を引いて終盤のカタルシスがどこか薄かったかなと思いました。個人的にバトルシーンより水木と沙代の描写にもっと重きを置いてほしかった。