さん喬「応挙の幽霊」
これはどなたでも初聞きの噺だったが、めちゃくちゃ楽しい! 大好き、これ! しかもさん喬師匠によーく合っている。掛け軸の絵の美人幽霊、久々に巻物の状態を解かれて愛でてもらったお礼にと、絵から抜け出てきて古道具屋と酒を酌み交わす。その可愛らしさ、楽しさ。ご機嫌でヨーデルやら(ユ~レヒ、ユ~レヒ♪)自作の都都逸やらを披露する。幽霊が酔っていくさまは「棒鱈」の酔客のようでもあり、でも美人の女性だからしゃっくりもああいう「ヒック」ではなく可愛く「ヒッ」。それを織り交ぜながらの都都逸、なんて芸の細かい。だんだん目が据わってくだを巻くさまは「らくだ」の屑屋のようでもあり、実際はあまり酒を飲まないらしいさん喬師匠は酔っ払いが本当にうまいから不思議。あらすじで見るサゲのちょっと手前で終えたが、大満足。これ、絶対に寄席でかけたらいいと思う。ぜひともまた聴きたい!
で、この「絵から抜け出る」が前日の「抜け雀」と対応すると。符号その①。
さん喬「宮戸川(前半)」~「笠碁」
もうすっかり頭は「今日のテーマは怪異」と決めつけていたので、仲入り後に始まった「お花半七」に驚き、そうか、「宮戸川」を通しでやるのかとゾクゾクワクワク。あれは怪異でこそないけれど、終盤は陰惨な噺だから(喬太郎が通しでかけたのを二度ばかり聴いたことあり)。でも、予想は裏切られ、お花半七の色っぽい部分が終わったら場面が切り替わり、「お花と半七は駆け落ちしたらしいなあ」なんて世間話をしながら碁を打つふたり。こんなリレーはびっくりの「笠碁」が始まる。この噺は何度聞いても心温まるというか、細やかに移り変わる表情の一つ一つ、老夫婦が猫を可愛がるしぐさの一つ一つを見ているだけで、もう頬が緩みっぱなし。ニッカニッカしながら終わる。なんて優しく可愛らしい噺だろか。
じゃあ、これは昨日の何に符合するのかというと、ペケッターの方の分析では、半七が締め出し食らったのも「碁」に夢中で遅くなったからだし、笠碁はもちろん「碁」の噺。で、その「白と黒」の石が、前日の「鴻池の犬」の兄弟犬「シロとクロ」に対応しているんじゃないかと。えーーーーっ!!
@torajiyama 厳選すると言いながら、顔づけみたらホイホイ出かけていくに違いない😆
さん喬「お若伊之助」
調べてみたら、さん喬師匠で聴くのはなんと16年ぶり。喬太郎師がときどきかけているのは何度か聴いていて、その場合は必ずすでにお若が根岸に行っているところから始まるが、この日は一番初めからのほぼ通し(ただし狸の子を産むところはやらなかった)。前段はこうなっていたのかと興味深く思いつつ、母、お若、伊之助、頭領、根岸の隠居と、それぞれの人物像が際立っていて、さすがだと思った。ちょっと妖しいこういう話を一時間語り通して一瞬も飽きさせないってすごいなあ。
で、これは根岸に実際にあるらしい「因果塚(狸塚)」の由来なので、前日の回向院・猫塚の由来である「猫定」と対応する。符号その②。