首…(ネタバレあり)
首、衆道の搾取・暴力的な側面を描きながら光秀・村重・利三周辺は衆道・武士道的な忠義・男性同士の性愛・ロマンスの境目を曖昧に描いてるけど、これに関しては北野武の同性愛解像度が高いからこういう描き方ができるんだろうなって思う
親愛・友愛・忠義・性愛・心酔が不可分で一体化してて、性愛だけがことさら不純なものとして低く描かれない感じがなんというかちゃんとしてる 理解に厚みがある
あと作中の秀吉は農民出身なので男同士の惚れた腫れたはわかりませんスタンスだけど、その秀吉を演じてる武は監督として村重とか利三のこと明らかに可愛く撮ってるし光秀村重の絡みもエロティックに撮ってるわけでなんかそこが凄いというかいっそ怖くない!?と思ってしまう もう明らかに男同士の惚れた腫れたを「理解(わか)ってる側」だろ…で分かってる側なのにそっち演じるんだ…みたいな
首の登場人物は全員ちょっとずつ武の分身というツイートをtwitterで見て首がもげるほど頷いたけどその中であえて秀吉を演じるんだなーっていう 2000%適役だったけど
でも武クラスの巨匠が自身の感性を存分に活かして今この時代にこういう内容の歴史大作を撮ってくれたことってやっぱ凄いなと思った 感謝の念すらある ディープ・感謝…
東方書店さんで『唐太宗全集校注』と『大唐創業起居注箋證(附壺關録)』買ってきた 読むのは来年
あと年内はお正月絵描くだけにします…
首の秀吉があの世界で頑張ってる(苦労してる)ように見えるのは、秀吉が「ホモソから逸脱しきってない」からじゃなく、「ホモソ社会で成り上がるためにはホモソに馴染めない人間の方が(精神的に)何倍ものコストを払わされる」ことのカリカチュアで意図的にそう撮られてるんだと思ってる
twitterの感想だとうまく表現できなかったけど
首の気付き(ネタバレあり)
首は衆道・武士道的な忠義・男性同士のロマンスの境目を曖昧に描きつつ、衆道≠BL(愛)と明確に描いてるのも良かった
蘭丸・弥助が受けてるのは寵愛ではなく性暴力だし搾取だし、だからあのラストの説得力がめちゃくちゃ高まってるわけで…
あと武士道的な忠義を美化せず、実は内心で信長を信じ心酔してたのに手紙読んで幻想から目が覚めてしまう光秀、忠臣から謀反人に転じ村重と、忠誠心がいわゆる「愛憎」的に叛心が転じる様子を説得力を持って描いてるのも良かった
逆に秀吉家康サイドが「武士道」とか愛憎から距離があってカラッとしてることを考えると、男を抱く信長・光秀↔︎男を抱かない秀吉・女を抱こうとする家康じゃなく、忠臣を求める・武士道を追求する信長・光秀と、武士道も忠臣を求めてない秀吉・家康の対比もできると思う
家康は忠臣ではなく使い捨ての影武者を駆使して身を守るし(半蔵にいう言葉も「すまんな」の一言と軽い)、秀吉も臣下のことを使い捨てる気しかなく、やる気は金で引き出す。秀吉の隣にいるのは「兄者が死んだら俺が大将だな笑」(うろ)とか官兵衛に言っちゃう秀長で、秀吉家康サイドには「武士道」のもたらす危うい愛憎が存在していない というふうに
首の天下人たち(ネタバレあり)
日本中の首を切ってその上に自分の首を置きたい(うろ)とか死ぬ最後まで首(介錯)にこだわる信長と甲冑姿で自ら首を切って死ぬ光秀に対して、下っ端の格好して顔に泥まで塗り影武者を多数用意し徹底して「死」を回避する家康の対比
首にこだわるのは信長光秀個人の問題じゃなくこの世界自体がそういうシステムなので、秀吉は清水宗治の「武士としての最期」にも付き合うし最後も首探しをしないといけないという滑稽さ
で「「首」に取り憑かれた秀吉」というシャドーとして茂助がいる(秀吉は「農民出身だから武士道はわからない」というスタンスをとるが、むしろ農民出身者だからこそ武士・侍に憧れ「首」に取り憑かれ破滅するという提示も含む)という配置
北野武…天才…
首の天下人たち(ネタバレあり)
すでにありそうな考察だけど首の天下人脱落ダービー、
人の命も体もおもちゃのように扱い最後も首を切ること(介錯)に固執して死ぬ信長
常識人に見せかけて家で蘭丸や信長に仮装させた男たちを撃ち殺して憎しみを発散させ村重も切り捨て、最期も「武士らしく」首を切って死ぬ光秀
信長や光秀のような残虐ショーはやらないし清水宗治の「武士としての最期」に馬鹿馬鹿しさを覚えてる、けど下っ端を使い捨てにする(おそらく将来的には腹心の官兵衛すらそこに含んでいた)秀吉(でも首なんかどうだっていいんだよ!が言える)
忍びの者(半蔵)にも「半蔵、すまんな😞 」と苦労をねぎらえるし、無数の影武者を用意し自分の死体=首の価値すらを曖昧にする家康 の順なのでは
首(ネタバレあり)
たけし秀吉かわいい
男たちの愛憎とか衆道・同性愛関係性とか打算とか業とか残酷さとか怒号とか流血とかスプラッター描写とか「侍」「武士」に象徴されるものの滑稽さとかをいっぱい描いてくれてるのに、泥まみれで汚くて怖くて人がたくさん死ぬ、ロマンを徹底して排除した戦場の描写とかサービス的な女体消費や男女のロマンスがないところとか「描かない」ものの選択もきちんとしてた この取捨選択のセンスがめちゃくちゃ「今」だなと思った
あとやっぱ歴史創作のオタクとしてここまでやっていいんだ…とかこういうこともやっていいんだ…という種類の感動があり、魂の一部がこの映画見て成仏した
総括:サンキュー北野武、フォーエバー北野武
shipper|she/they |歴史創作:隋唐(隋煬帝~唐太宗期)、隋末唐初、7世紀東部ユーラシア、李世民総受🍑