ファリアが犬を見つめる眼差しが羨ましかった。そりゃあ俺にだって優しい目を向けてくれるけど、どちらかといえば厳しいことの方が多い。それは一歩間違えば命に関わることだからそれだけ真剣に俺を思ってくれてるからだとわかっているけど、羨ましく思う気持ちは止められなかった。この世界にこれほど愛おしいものはないって気持ちで溢れてて犬の方もそれに応えるようにファリアに甘えていた。離れ離れになって思い出すのはそんなことばかりだ。
そのファリアがやっと帰ってきた。ファリアがいる部屋に俺は飛び込んだ。俺が何か言う前にファリアが優しく微笑んだ。その眼差しを俺は知っている。
羨ましかったものはとっくの昔に俺にも向けられていたのだ。
『あなたの眼差し』
お題.comさんからお題お借りしました。
決心が鈍るからと空港への見送りを断られた。アメリカ留学。やっぱり宮城はすげーやつだ。自慢の後輩で最高のチームメイトで大好きな恋人だった。だったっと云うのが悲しい。向こうでそれなりの結果を出すまで帰らないと決めた宮城は二人の関係を一度終わりにしようと言った。「待っててなんて言えないっスよ。」今までで一番下手くそな、めいいっぱい平気な顔に「そうか。」としか返せなかった。人のいない浜辺で流木に腰掛けて空を見上げる。この砂浜で戯れ合いながら大きな相合傘を書いたことがある。人のいない冬の夜だった。誰かに見られたらどうするなんてその時は頭から消えていて、笑って見つめあってキスをした。朝には波に消されて跡形もなかったあの文字が、地上絵みたいにずっと残っていればあの空から見えただろうかなんてらしくもない想像に思わず笑ってしまう。足元の砂に小さく二人の名前を並べて書いて、消えたって何度でも書き直せるんだぜ宮城よ、と心の中で呟く。そう、こっちの方が俺らしい。待たねぇよ、進むんだよもう一度二人で並んで立つために。
「砂に書いた文字」リョ三
お題.comさんからお題お借りしました。
三井寿、行儀作法が身についてるファンの集団幻想を私も推してますが、その一方でグレてる時に知った、片膝立ててちゃぶ台で食べるカップラーメンとか頬杖つきながら食べる夜中のポテチとかのちゃんとしてない楽しさもすっかり自分のものしてる三井寿ってのも好きです。
ザファで彩子のことをアヤちゃんと呼ばなかった宮城リョータ、同じく三井のことも三井サンと呼ばなかった。この二人の共通点について調べるために我々はアマゾンの奥地へ向かった
とある2分間をループするSD…
残り時間2分17秒の少し前からのループだったらどうなるか。堂本監督がタイムをとるのをやめたあたりで戻るから結末を知らないままのループか。まず花道のアレを止めるか止めないかだよね。そしてその後のプレイがバレてるからどうなるかな。
改めて花道の回想の喧嘩シーンはガチで花道の強さが感じられるよね、全ての攻撃が重い。リョータも勢いつけてのジャンピングパンチ、身長差を利用して頭突きとダメージ与える気満々。ひるがえって、三井のパンチってそれほど体重乗ってないから軽い感じなのよ。左膝があれなのに右手で殴るからだよ。
流川も強いけどあれは多分加減とか考えてないから。そこそこでかい体で遠慮とか余計なこと考えずに殴ってる。
「これ一口サイズに切ってくれたら食べやすいのにな。」
「上品かよ?!お嬢様か、アンタ?」
でっけー口してるくせに大口開けて食べるのが下手とか可愛い…何より溢れそうないちごを舌で受け止めようとしたり、口開けたままどこから齧るかな迷ったり、エロすぎない?
いやいやいや、ちょっと待て!なに今の俺の思考?落ち着け俺、いま目の前にいるのは三井サンだぞ?!可愛いとかエロいとかおかしいだろ!
俺は三井サンには気づかれないようにスーッと深呼吸してから変な想像を追い出して、食べ物のことに集中した。
「アンタ、ハンバーガーも食べるの下手でしょ?」
よしよし、普通の感じで喋れてるぞ俺。
「なんでわかんだよ。」
「フルーツサンドよりハンバーガーの方がハードル高いじゃん。」
「そういや鉄男はハンバーガー溢さねーで食ってたなぁ。」
「出たよ、鉄男!昔の男の話今ここでするかなー?!」
「その表現やめろ。なんか潰してから食うといいらしいけど、俺はできねーわ。」
このお上品な元ヤンはそう言いながら指についてた生クリームを舐めた。
「舐めるなバカ!」
俺の咄嗟のセリフに、馬鹿っていう方が馬鹿なんだよと返される。その後はいつものような子供の口喧嘩みたいな応酬が続き、この時の俺の変な想像はすっかり忘れ去ることができた。
『フルーツサンド』
三井サンはご両親の躾が厳しかったのか、ああ見えてご飯の食べ方が綺麗だ。グレて不良っぽい所作を身につけても箸の持ち方や魚の食べ方みたいなところに育ちの良さが見え隠れする。しかしそんな三井サンにも食べるのが下手なものがある。シュークリームやエクレアだ。なぜか大抵中身をはみ出させてしまう。そして俺は今そこに新しいものが加わる瞬間に立ち会っている。
「うわぁ、三井サン、いちごはみ出してるよ?」
「んんっ!」
三井サンは俺のその言葉に慌てていちごを抑えている。この人は今フルーツサンドにハマっているそうなのだが一口目で案の定生クリームと共にいちごが押し出されてこぼれそうになっている。
「中途半端に齧るからだよ。こんなのは思い切り良くこうガッと食べちゃえば手も汚さないよ?」
俺はそう言いながらお手本とばかりに何種類かの果物が挟まれたやつをガブガブと食べきってみせた。
「そんなに急いで食っちまったら果物と生クリームの絶妙なハーモニーを味わえないだろーが。フルーツサンドに謝れ。」
三井サンはどこで覚えてきたのか安っぽい食レポみたいなことを言う。いやフルーツサンドなんてそんなに味わうもんじゃないだろ、これはどちらかと言うと飲み物だ。
追いかけてくる気配を感じるが捕まるほど間抜けではないし姿だって見られてない自信がある。そしてこの状況で喧嘩を続けるほどあの人も馬鹿ではないだろう。いや、どうでもいいんだけどね。
次の日、部室に行こうとすると向こうから三井サンが歩いてくるのが見えた。俺も三井サンも一人で、こういう時は声をかけてこないので目線を合わせにようにしながらすれ違う。しかし今日は「おい。」と声をかけられる。因縁をつけられるのは面倒だなと思ったが俺の返事を待つこともなく「落とし物だ。」と言いながら何かを放り投げてきた。俺は反射的にそれをキャッチする。それは擦り傷と一部へこみが入ったポカリの缶だった。
「な!?」
思わず驚いた声を出してしまった俺に、悪戯が成功したとばかりに軽く笑い声を上げて三井サンはそのままスタスタ歩き去っていった。
「落とし物」
学校以外で、あのロン毛の三井サンを見るのは初めてだった。まぁ自分は何かと絡まれやすいタイプだと自覚があるのでヤンキーがうろつきそうな場所には寄り付かないよう気をつけている。今日はたまたま家に誰もいないので外食ついでに大きめな本屋と服屋をのぞいていたら思ってたより遅くなった。家までの近道と選んだ道が、あ、ここヤバい感じという場所だった。俺は近くにあった自動販売機でポカリを買うとそれを手に持ったままランニングを始める。ただ歩いているよりランニングをしている方が絡まれにくいと学習していた。そしてその途中でサラサラのロン毛が遠目に見えた。なんで見つけてしまうのか。三人くらいのガラの悪い男達と三井サンが睨み合っている。声は聞こえないがあれは今から喧嘩が始まりそうな雰囲気だった。放っておけばいい。喧嘩しようが何しようが知ったことではない。ただいつもは側に侍っている番長達の姿が見当たらない。思わずチッと舌打ちが漏れた。これはそう、一対三みたいなのが気に入らないだけだと自分に言い聞かせながら手に持ったポカリを大きく振りかぶる。俺の投げたポカリは今にも三井サンを殴ろうとしていた男の側面に見事に命中した。「誰だコラァ!」と想像通りの台詞をそいつらが吐いてこっちを見た時には俺は全速力で逃げ出していた。
追いかけてくる気配を感じるが捕まるほど間抜けではないし姿だって見られてない自信がある。そしてこの状況で喧嘩を続けるほどあの人も馬鹿ではないだろう。いや、どうでもいいんだけどね。
次の日、部室に行こうとすると向こうから三井サンが歩いてくるのが見えた。俺も三井サンも一人で、こういう時は声をかけてこないので目線を合わせにようにしながらすれ違う。しかし今日は「おい。」と声をかけられる。因縁をつけられるのは面倒だなと思ったが俺の返事を待つこともなく「落とし物だ。」と言いながら何かを放り投げてきた。俺は反射的にそれをキャッチする。それは擦り傷と一部へこみが入ったポカリの缶だった。
「な!?」
思わず驚いた声を出してしまった俺に、悪戯が成功したとばかりに軽く笑い声を上げて三井サンはそのままスタスタ歩き去っていった。
fkmt作品(南赤南)/ジパング(草松)/洋画(コリファリ/🍋🍊) 最近はSD(714)多め
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