ファリアが犬を見つめる眼差しが羨ましかった。そりゃあ俺にだって優しい目を向けてくれるけど、どちらかといえば厳しいことの方が多い。それは一歩間違えば命に関わることだからそれだけ真剣に俺を思ってくれてるからだとわかっているけど、羨ましく思う気持ちは止められなかった。この世界にこれほど愛おしいものはないって気持ちで溢れてて犬の方もそれに応えるようにファリアに甘えていた。離れ離れになって思い出すのはそんなことばかりだ。
そのファリアがやっと帰ってきた。ファリアがいる部屋に俺は飛び込んだ。俺が何か言う前にファリアが優しく微笑んだ。その眼差しを俺は知っている。
羨ましかったものはとっくの昔に俺にも向けられていたのだ。
『あなたの眼差し』
お題.comさんからお題お借りしました。