決心が鈍るからと空港への見送りを断られた。アメリカ留学。やっぱり宮城はすげーやつだ。自慢の後輩で最高のチームメイトで大好きな恋人だった。だったっと云うのが悲しい。向こうでそれなりの結果を出すまで帰らないと決めた宮城は二人の関係を一度終わりにしようと言った。「待っててなんて言えないっスよ。」今までで一番下手くそな、めいいっぱい平気な顔に「そうか。」としか返せなかった。人のいない浜辺で流木に腰掛けて空を見上げる。この砂浜で戯れ合いながら大きな相合傘を書いたことがある。人のいない冬の夜だった。誰かに見られたらどうするなんてその時は頭から消えていて、笑って見つめあってキスをした。朝には波に消されて跡形もなかったあの文字が、地上絵みたいにずっと残っていればあの空から見えただろうかなんてらしくもない想像に思わず笑ってしまう。足元の砂に小さく二人の名前を並べて書いて、消えたって何度でも書き直せるんだぜ宮城よ、と心の中で呟く。そう、こっちの方が俺らしい。待たねぇよ、進むんだよもう一度二人で並んで立つために。
「砂に書いた文字」リョ三
お題.comさんからお題お借りしました。