SD連載時代の不良漫画のノリでいえば、屋上リンチなんてむしろ返り討ちに(三井だけだけど)してるから宮城強え!って印象だし体育館襲撃もまあヤバいんだけどあの暴力は後に残らないってお約束みたいなとこあったじゃないですか。だから三井のバスケ部復活からの宮城とのニコイチ感も普通に受け止めてたんだけど、ザファになって宮城リョータの背景が描かれたことで屋上リンチが激重案件になったし、選手生命に関わる感出たし、三井は初恋泥棒お兄さんだし、ここで原作を読み返すと宮城リョータお前よく三井を許せたな?ってなるしその謎を解明するためアマゾンの奥地に飛ばなくてもそうか恋か恋だな!ってなるの仕方なくない?より大きな事件の体育館襲撃エピを原作読んでる人にしかわからない程度に匂わせるだけにして復帰初日の横で頭下げる三井に驚くにするの宮リョの心を揺さぶる感出して二人の関係性をより深掘りさせるのすごくない?そして宮リョの背景が描かれたことで三井の罪が重くなってんの。なのにあの試合中に見せる宮城の三井へのあれこれで二人の過去現在未来が深く結びついちゃうの、ほんと何見せられてんのってならない?
三井サンの手には三分の一ほど欠けて銀紙が折り込まれた板チョコが握られていた。どう見てもバレンタインとは無関係のいつから鞄に入ってたのかも怪しい代物である。
「チョコには変わりねーだろ。」
そう言いながらチョコをバキッと割って半分手渡してくれた。
「あざーす。」
食べかけのチョコレートを半分こして夜の公園で食べるっていうのも青春ぽいよなーと俺は満更ではない気持ちでチョコを齧る。ミルクチョコレートの甘さが口の中に広がった。そんな細やかな幸せに浸っていると横から三井サンに肩を叩かれる。振り向くと三井サンがチョコをひと欠片口に咥えて「ん」と言いながら目を瞑った。
「ゔぉえーーーーーー!!」
俺の口から訳のわからない叫びが漏れた。ちょっともうやだこの人なんなの!!口移しだよね、これっ!?
「急にそういうのぶっ込まないでよ!無理っ、心臓がもたないっ!!」
「なんだよ、お前こういうのやりたいって前に言ってたじゃねーか。」
「言った、言ったけど!アンタね、自分の威力の高さを知らなすぎなんすよ!」
「はぁ?なんだよ、したくねーのかよ。」
三井寿のキス待ち顔の攻撃力に一番無自覚な本人が拗ねた顔をする。
「したいに決まってんだろ!!」
三井サンがチョコを再度咥えるやいなや、俺は噛みつく勢いで口付けた。
自慢じゃないが俺はチョコなんて肉親以外からほぼ貰ったことがない非モテ男なのだ。恋人ができて初めてのバレンタインにチョコをもらえると期待して何がおかしい?
「去年は、まぁお前のこと好きだったし卒業前で最後だと思ったからバレンタインに便乗してチョコを渡したけどよお、俺は元々もらうの専門の方だから今年はお前からもらえると思い込んでたんだよ!言っとくけど今日は学校で渡されそうになったの全部断ったんだぞ!恋人がいるから受け取れねぇって。」
「クソっ、さらっとモテ自慢しやがって!でも断ってくれてアリガトウゴザイマス!」
「なんでカタコトだよ、どういたしまして!!」
俺たちはここで吹き出して言い合いは終わりになった。ひんやりしたベンチに並んで腰を下ろす。
「あー、俺たち間抜けだな。」
「そっすね、直接やりとりできる最後のバレンタインだったのにね。」
俺は卒業したらアメリカ留学が決まっていて数年は帰国しない予定だった。
だから本当はチョコなんかなくってもこうして会えるだけでもいいのだ。ぎゃあぎゃあと言い合いするのも三井サン相手だと楽しい時間でもある。
「あ!」
「うわ、何?!」
三井サンが急に鞄を探り出したかと思うと、ドヤ顔で何かを取り出した。
「チョコレートあったぜ!」
「めっちゃ食いかけじゃん!」
『俺たちのバレンタインデー』
俺の名前は宮城リョータ。卒業を目の前に控えた高校三年生だ。
そして目の前にいるのは昨年奇跡的に推薦で大学生になれた元ヤンで元先輩の、そして俺の現恋人の三井サン。
恋人同士が二月の十四日の夜、人気のない寒い公園で何をやっているかというと、いつもならバスケットだが今日はちょっとしたトラブルの最中だ。。
バレンタインの日にお互いわざわざ時間を作って待ち合わせをしたら普通ならラブラブな雰囲気になると思うじゃん?俺だってそう期待してやってきたのになんということでしょう!俺たちどっちも相手から貰えるつもりで手ぶらでくるというアホなことをやってしまった。
「だって去年はくれたじゃん!」
これは俺の発言。そう、去年は三井サンからチョコレートを貰ったのだ。
まぁ部活で配られたチョコレートの自分の分を俺にくれただけなんだけど、実はそのチョコは三井サンがお金を出して部員全員に用意してくれてたものだと後で知った。その頃はまだ告白もしてないただの先輩後輩だったんだけど、勘繰っちゃうだろ?遠回しにチョコをくれたんだと思ったし、そのあと何やかんやで恋人同士になったんだから。
屋上で
三「なぁ徳男はあれやったことあるか?オレ下手なのか喉まで入れるのが難しくって」
徳「え?」
三「痛くはないだけど怖いからか無意識に奥まで入れられねーんだよ」
徳「三っちゃん?」
三「角度が悪いのかな〜、鼻から垂れるし涎も出て大変でよ、鏡で自分の顔見たらひでぇのなんの」
徳「…それは三っちゃんが望んでやってることなのか?」
三「あ?宮城がやれってうるさくってよ、いやオレもやった方がいいかなって。でも下手過ぎてこの間なんか宮城のやつ『オレがやってやる!』って無理やり奥まで押し込んでこようとしてよ。アイツ短気だよな」
徳「よし今から宮城シメる💢」
三「え?待て待て急になんでっ?!」
徳「三っちゃんに無理やりそんな酷いことさせるなんてオレは許さねぇ!」
三「いやいや、結構誰でもやってるだろ!オレも必要だと思うからやろうとしてるんだし」
徳「弱みに付け込んで無理強いするのは犯罪だよ!」
三「鼻うがい如きで犯罪って大袈裟だろ!」
徳「え?鼻うがい??」
三「そーだよ!風邪予防にって!!」
徳「なんだー鼻うがいかー!」
三「なんだと思ったんだよ?」
物陰から出てきた宮城「アンタの表現が紛らわしいから堀田さんが誤解すんだよ!!!」
(まだ二人きりの体育館にて)
三井「俺はサンタなんてもう信じてなかったんだけどよ、いたわサンタクロース」
宮城「え?は?ちょっ、いきなりどうしたの三井サン?」
ミ「赤い服着て俺がずっと欲しかったものをくれたなって思って」
リョ「三井さんにとってサンタの定義ってそれ?」
ミ「いや、あの、だから、俺にまたバスケをやらせてくれて、パスをくれた宮城がサンタクロース…だな…って、うわーーーーっ、無し無し!今の無しっ!!!忘れろ!!」
リョ「うわぁーっ!!途中から照れるなよ、こっちまで恥かしくなるでしょーが。なんだよそれ、恋人がサンタクロースってやつかよ」
ミ「こいびとっ?!そこまでは言ってねぇ!俺らただの先輩後輩だろうが」
リョ「ただの後輩をサンタ呼ばわりすんのかよ!俺にとっては三井サンはただの先輩じゃねぇんですけど?あ、よし、じゃあサンタから三井サンにプレゼントがあります!『好きです、付き合ってください!』」
ミ「は?」
リョ「告白っていうプレゼントっす」
ミ「いやいやいやっ、どういう展開だこれ?」
リョ「返事は『いや』なんすね…サーセン変なこと言いました」
ミ「待て待てそのいやじゃねぇ!好きなやつから好きって言われて嫌なわけあるか!」
リョ「えっ、好きなの俺のことっ!?」
ミ「そうだよ、好きだよ!」
fkmt作品(南赤南)/ジパング(草松)/洋画(コリファリ/🍋🍊) 最近はSD(714)多め
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