「グーテンベルクの印刷術には歴史的意味はなかったのか?」
ここで蓮実重彦は、ルネサンス期のグーテンベルクの印刷術の画期性にこだわる林達夫を小馬鹿にし、「あんなものは、私の専門である19世紀に入らなけらば、ほとんど何の意味ももたなかった」という趣旨の発言をしている。
しかし、この蓮実の主張、現在の歴史学からは完全に否定されている。
グーテンベルクの印刷術は折からの宗教改革と絡まり合って、「聖書」の普及に巨大な影響を与えた。
アナ―ル派が統計的手法で明らかにしたところでは、聖書の普及率と識字率、それにプロテスタントの拡大が連動してドイツからフランス北部へと波のように拡大していったのが確認されている。
中世カトリックでは、聖書を読んだことのない教皇の方が多いくらいである。その代わりを務めたのは、カトリックという汎ヨーロッパ的組織を束ねていくための「教会法」。
プロテスタントは基本、家で聖書を読むことを重要視するが、カトリックは「一人で聖書を読んではいけない」とする。それでは教会の解釈からはみ出し、「異端」に陥る危険があるからだ。
いずれにせよ、近世における印刷術の普及は、18世紀には脱宗教化にも決定的な影響を与える。
要するに蓮実の林達夫批判は完全に間違っていたのである。
プルーストやネルヴァルに関する「研究」はその後、三世代を経てさらに進み、おそらく多くの若い研究者は「中村真一郎」の名前さえ知らないだろう。
しかし、仏でプルーストやネルヴァルに関する博士号を貰った仏文研究者に、決定的に欠けているのは、戦時中に殴られながらも洋書をバスで読むことをやめなかった中村さんの「気迫と気概」である。
であるから、中村真一郎は単なる「おフランス」にしか過ぎない有象無象の仏文学者とは根本的に異なる。
しかし、東浩紀系の自称「神々」@東大駒場の連中は、「おフランス」でさえないのはさらに問題である。
この「残念な」連中を生んだ中継者としては、渡邊守章、蓮実重彦、小林康夫の三人の駒場の「おフランス」達が挙げられる。
小林康夫などは学生時代「大学解体」を叫んだあと、仏でリオタールの授業に最前列で座り続け、帰国後は大学当局側にたって「大学解体」を推し進めた、かなり滅茶苦茶な男である。
しかし日本の仏文研究の流れを決定づけたのは、やはり蓮実重彦。
蓮実は自覚的にマチネのグループを「敵」として狙い定め、その言説は、仏文学の後続世代に圧倒的に支持された。
こうした歴史を振り返ると、日本のフランス学が再生するには蓮実・小林、つまり駒場表象文化論的なものと決別する以外にない。
中村さんと同世代の仏語仏文学の研究者としては森有正(1911生)や三宅徳嘉(1917生)がいる。
森有正は初代文部大臣森有礼の孫、江戸時代の御三卿徳川篤守の孫、岩倉具視の曾孫。であるから、まさに上流階級。
三宅徳嘉は仏語を習ったことがある人なら、誰でも「知っている筈」の、仏語辞典の監修者。この人の父は当時の最高裁である大審院判事である。
また当時の仏文科教授でマラルメやボードレールの岩波文庫の翻訳者である鈴木信太郎は江戸時代からの富裕な米問屋、そして埼玉の大地主の家の息子。
鈴木信太郎は戦時中完全に「八紘一宇」や「聖戦」を信じており、加藤周一さんによると、米軍機が皇居の上を飛行した場合は「神風」によって墜落すると本気で言っていたらしい。
戦時中助教授だった渡辺一夫は、「上司」である鈴木信太郎には随分苦い思いをさせられた。
さて中村さんに戻ると、東大在学中は食事代を節約するために、大学の水道で空腹を満たしながら、まだ翻訳がないプルーストを仏語で読み続けた。
また日米開戦以降は、せめての「抵抗」として公共空間で「洋書を読む」ことはやめなかった。
その行為によって、民間右翼に因縁をつけられ、バスから降ろされ殴られることもしばしばだった。
「中村真一郎さんのこと」
中村真一郎(1918ー1997)さんは、加藤周一、福永武彦と共に「マチネ・ポエチック」のメンバーであり、渡邊一夫が装丁を手掛けた『1946・文学的考察』の著者の一人でもある。この『考察』は仏文学者だけではなく、比較憲法学の樋口陽一さんにも大きな影響を与えた。
中村さんはプルースト、ネルヴァル、またヘンリー・ジェイムズの日本への導入第一世代でもあり、またジョイスなどを参照しながら「20世紀小説」の方法論を意識的に探究した人でもあった。
私は中村さんには学部学生時代、京都と東京で数回お会いしたことがある。その際は、加藤さんと同じく、「昔の書生さん」がそのまま歳を取られた、という感じの気さくな人柄。
ただし、小説家である以上当然でもあるが、自身の内に「深い闇」を抱えられている方でもあった。
今日8月15日に中村さんについて語るのは、彼の戦時中の体験がその「文学」の核心にあるから。
中村さんは早くに父を失くされ、当時ほぼ上中産階級出身者で占められていた東大仏文科では例外的に経済的苦労をされた。
大学院への進学を希望した際にも、「君の家は財産があるか?」と聞かれ断念。つまり、当時は仏文学を研究しても、それが「職」に繋がる可能性はほぼなかった。
「松川るいの消費税20%論」
先日のフランス旅行について、今井絵理子議員は、「内政の失敗は内閣を滅ぼすが、外交の失敗は一国を滅ぼす」と主張したらしい。つまり外交研修のためにフランス旅行に税金で行ったということだ。
それは真に筋が通っているが、欧州外交の「見聞」についてぜひ「説明責任」を果たしてほしい。
ところで、松川るいのフランスへのこだわりは「消費税19,6%、これを見習って日本も着実に上げていくべき」という所にあるようだ。
しかし、フランスの消費税、食料などの食料など生活必需品、電気・ガス、それに文化関係は5%以下の軽減税率。
また法人税は25%と日本より高く、課税ベースも日本より広い。また企業の社会保険料の負担も日本より大きい。
またフランスでは教育費は大学まで基本無料。グランゼコールでは給料が出る。
また安価な公共住宅は日本の比にならない程多い。
あれやこれやで、今や仏は日本よりはるかに格差の小さい国。
逆に日本は税と社会保険による国家の再配分によって格差が広がるOECD唯一の国。
この状態で消費税20%に向けてフランスをだしにするとはいい度胸ではある。
仮にも「自由・平等・友愛」の国が建前の国で、こんなことを言い出したら、革命が起こるだろう。
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「Experts say there is no evidence to suggest it causes any new Covid symptoms.
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"ある種のバッタは群れ化すると個体の性質まで凶暴に変わる「相変異」を起こす。人間も集団になったとき、水が氷へと性質が変わるような「相転移」を起こしやすい。「私」「僕」といった一人称単数の主語を失い、「われわれ」「国家」などの集合代名詞に置き換わると、人はやさしいままで、限りなく残虐になれるのです。
とくに恐怖や不安を感じたとき、群れは集団化を進めるために同質であることを求め、異質な者を見つけて攻撃しようとします。肌や髪の色、言葉、信仰、民族、何でもいいのです。自分たちと違う少数派を標的として攻撃することで、集団を守ろうとする。そうして虐殺や戦争が起きる。"
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