📗宇月原晴明『安徳天皇漂海記』
馬伯庸『両京十五日』の解説で鄭和さん関連図書として『廃帝綺譚』があげられていたので、そろそろ潮時とぽちったついでに前段(というか本編?)の本書もぽちりました。宇月原晴明作品は、デビュー作の『信長:あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』以来約四半世紀ぶり。(え?)
安徳帝と源実朝とマルコ・ポーロと南宋最後の少年皇帝趙昺とを高丘親王航海記の夢でつなぐ流離譚といった趣き。『信長〜』はとても面白かったけれども、何かの濃い原液みたいで読みづらかった印象がうっすら残っていたのだが、本作は薄いというのではなく、うまい具合に醸された清酒のようなさらさらした味わいで、とても読みやすいのが意外だった。参考文献が沢山あげられているのも良き。実朝関係と宋元関係の本が多い中に布石みたいにルイーズ・リヴァシーズ『中国が海を支配したとき:鄭和とその時代』が紛れ込んでいて、思わずにやりとしてしまった。『廃帝綺譚』も読もう。
https://www.chuko.co.jp/bunko/2009/01/205105.html
📔:鄭和「忠直」考
馬伯庸『両京十五日』での鄭和評に触発されて1か月くらい前に前半だけアップした「鄭和「忠直」考」、3章以降と参考文献を追記してとりあえず完成しました。
創作用の研究ノートみたいなものなので、自分以外の人が読んで面白いかは正直よくわからんのですが、とりあえず最初の試掘孔は掘れたかな…?という感じです。
お疲れ気味なのでSNSをぼーっと眺めているよりは、と読めない明太宗実録で鄭和さんの記事をぐぐっていた。初出は洪武35年(建文4年)の11月で(翌年が永楽元年)、「癸卯遣太監鄭和祭乳母馮氏」とある。朱棣の乳母の名前が馮氏ってこと? そしてすでに亡くなっている自分の乳母のことを鄭和さんに命じて祭らせたということ? ここだと鄭和さん割と宦官らしい仕事している。
ちなみに乳母のことは永楽3年に「保聖賢順夫人」に追封して、その時は自分の息子に祭らせている。他の皇帝の実録を「乳母」でぐぐっても、ナントカ夫人に封じるというのは幾つかあるけれども、自分の息子に自分の乳母を祭らせた記事はなさそう。とすると、朱棣の乳母への愛はかなり深いような気がするし、それを即位直後の時期に鄭和さんに祭らせているの、思った以上に朱棣と鄭和さんの関係近いのかも知れない…? どうかな…
不思凡監督の「ストーム(大雨)」を見たら、何度も頓挫して諦めかけていた前作「DAHUFA」の二次創作が書けそうな気になり、勢いで書き始まってしまった。どうなることやら。
本日までの進捗:とにかく文字を数えると8375字。繋がっているところは3555字。左がver.2、右がver.3。
どうなることやらと言ってはいるが、文字数カウント始めた以上は完成させたい。
明日の夕方と明後日の午後だよ、と言いつつ会場の位置を確認している。池袋HUMAXシネマズの並びかな…?(ほうこうおんち)
https://animefestival.jp/screen/list/2024feature3/
https://www.youtube.com/watch?si=DmbGjRej04mZSMCg&v=oAvdsmsCqoA&feature=youtu.be
📗読書メモ:鈴木真弥『カーストとは何か:インド「不可触民」の実像』
鄭和さんの航海に同行した馬歓が、「瀛涯勝覧」のインド関係の項目で、住民の階級は5つに分かれるとか、最下層の者は住居、服装、態度等に種々の制約がある旨書いていたり、その関連で南インドの古典音楽について調べていたら「声楽系と器楽系では演奏者のカーストが異なる」などとあって、カーストについてちゃんと調べねばと思っていたところに出版された本。
副題の通り、カースト制度全般というよりは、各種施策にもかかわらず現在でも「不浄」(直接死や屎尿等に触れる)として差別が消えない不可触民=ダリト、特に掃除カーストを中心に、カースト制度の歴史、反差別の取り組み、具体的な施策制度、フィールドワークを踏まえた生活の実態、若い世代の動向等を紹介している。主にイギリス植民地時代以降の話で、差別はマジョリティの心の問題&不可触民の職業の衛生状態改善で解決派ガンディーとそもそもヒンドゥー教が悪いラディカル派アンベートカルの対立、アファーマティブ・アクションではあるが極めて政治性の強い指定カースト政策のあり方、経済発展等による地域秩序の揺らぎがもたらすダリトへの凄惨なヘイト事件(下手すると事件にならない)、映画の中のカースト表象紹介など、わかりやすくて入門に良かった。
📔:鄭和「忠直」考
馬伯庸『両京十五日』での鄭和さん評「忠直耿介」の根拠史料について語っていたら長くなったので、くるっぷに投稿しました。3200字くらいありますが、まだ途中です。朱瞻基の御製詩を書き起こしていて力尽きた。しかも、調べるほど、朱瞻基と鄭和、ちゃんとコミュニケーション取れてた?と心配になって来て、歓喜の舞を踊るような内容でもない。まあ、半分心の目で読んでいて読み直すたびに感想変わるので、次には全然別なこと言っているかもしれないけど。
✏️:
先日発売された馬伯庸『両京十五日』1巻には鄭和さんがちらっとだけ登場するのですけれども、そのせいか、ここしばらく気づくとついニコニコしてしまったりして、メンタルの底上げ効果がすごい。自分がハマっている史実(もしくは歴史もの)の人物が別の作品に出るだけでこんなに楽しくなるとは思わなかったし、三国志なんか関連作品がすごい量あるから、毎日ハッピーで健康に良いのではないだろうか。それとも作品数が多いと解釈違いとか多くなって、むしろストレスになったりするのかな。
ちなみに(これは別段ネタバレにはならないと思うので書きますが)、作中で鄭和さん「その人となりは忠直耿介」云々と評されていて、「…それは史実に根拠あるの…???出典があるなら教えてください!!!」になっていたところ、少なくとも「忠直」部分の出典は見つけたので、この喜びを共有させてください…!!朱瞻基(宣徳帝)が多分鄭和の7回目(最後)の航海の前に賜った詩、らしいです。『両京十五日』はその数年前が舞台だから厳密には史実の先取りかもだけど、まあ普通に考えて、そういう評価が確立していたんでしょうね。そうでないとあんな大金の動きまくる事業(しかも皇帝の目の届きにくい)をあんな沢山任せないだろうし…
(後でさんざん語るかもしれません)
自分的に気に入ったのは、インドのジャラタランガムという楽器です。
「水を入れた中国製のどんぶりを棒でたたく楽器」!!!
https://www.geidai.ac.jp/labs/koizumi/asia/jp/india/jalatarangam/000491.html
東京芸大の小泉文夫記念資料室が「アジアの音楽図鑑」という(子供向けの?)サイトを作っていることに気づいた。これはありがたい。(一時、資料室がなくなるような話があった気がするけど、無事存続しているという認識で良いのかしらん?)
https://www.geidai.ac.jp/labs/koizumi/asia/jp/index.html
📙「三宝太監西洋記」読書メモ:
体調が悪い間に馬歓の「瀛涯勝覧」の古里国(現コーリコード)の章を読み直して、ここだけで短編の二つ三つ余裕で書けそうな情報量…と唸っていた。現地の音楽にも言及あって、ひょうたんの殻で作った弦楽器があって耳傾けさせられる音律と言っているのだけれど、ヴィーナか、シタールか、タンプーラか…?と色々聴き比べたりしている。わからん。それはそれとして、「三宝太監西洋記」で古里国のこと何か書いていないかなと調べてみたら、「瀛涯勝覧」のひょうたん楽器のところなどを取り込んでいて、ほお、そう作りますかと思った。「三宝太監西洋記」の鄭元帥は「逆らうものは攻め滅ぼす!」メンタルの人なので、ここも明の大軍にびびった古里国王が宴会で一同をもてなす場面に化けてしまっているが…
(左が「瀛涯勝覧」、右が「三宝太監西洋記」の該当箇所です)
マキノヤヨイです。創作集団こるびたるの中のひと(もしくは外のひと)。ここは、主に創作活動のゼミ発表的な使われ方をしている場です。