📗穴沢優子他(編)『佐藤史生傑作短編集:夢喰い』(河出書房新社)
同じく河出の『総特集 佐藤史生:少女マンガが夢見た未来』と合わせて出版された短編集。
傑作短編集を編むならまあこれは入れるねという作品(金星樹、阿呆船)、代表作「ワン・ゼロ」の雛型的短編(夢喰い)や作者の主な創作手法の一つである神話のSF的語り直し(レギオン)を軸に、他の作品は、それぞれの魅力だけでなく佐藤史生作品を貫くテーマやモチーフの変遷や特徴を見せるために選ばれたもののようで、全体として、2024年という今の関心を持ってはじめて佐藤史生作品を手に取る読者に応える尖ったセレクションになっていて結構驚いたし、オススメです。フェミニズム、今で言うならノンバイナリーだったりクィアだったりする登場人物たち、パンデミックと政治、カーゴ・カルト、文化人類学、等々の言葉にピンと来たら、何かの機会に読んでみてほしい。
個人的には、発表時には80年代風軽佻浮薄コメディとしてしか読まれなかったであろう「バナナ・トリップに最良の日」を(多分)当時は理解されなかったジェンダーの丁寧な解体の試みとしてピックアップしたところに編者の本気を見ました。時代の先を行きすぎてた作者で、読者が読めずに申し訳なかった。
ここ半年近く、なぜか微博にログインできず困っていたのだが、ひょんなことからまた入れるようになったので、今更ながら「大雨」公開時の大量の美麗イラストにイイネを押しまくっているところ。
貼ったイラストは「大雨」のスタッフによる現パロ。コメントに「大雨じゃないじゃん、東北の大雪やん」言われていて笑う。出典はリンク先ですがリンクされてなかったらURLコピペしてください。
見た展示は「ホー・ツーニェン:エージェントのA」
ホー・ツーニェンは映像表現が主体のシンガポールの現代美術作家で、パッと見、CGで作った省エネ系アニメ的ビジュアルを多用してキッチュでポップな感じがするのだが、音響も映像もテンポやリズム感がいいのか異様に気持ちいいというかついつい見入ってしまう上に、東南アジアの歴史をはじめ色んなリサーチをポリフォニックに重ねる作風で、ものすごく好みな作家だった。東南アジアの近現代史をテーマにすれば当然日本も避けては通れないので日本関係の表象もあちこちに顔を出し、「ヴォイス・オブ・ヴォイド:虚無の声」という作品は全編が京都学派テーマで、多様な立場を含みつつもアジアに対してある方向性を共有している…的なところが提示されていて興味深かった。
とにかく映像作品の量が膨大で1回では見きれなかったので、次回半額クーポンをゲットして再挑戦する予定。
見た映画は「リンダはチキンがたべたい」というフランスのアニメーション。
パパの得意料理だったパプリカチキンをもう一度食べたい…!だけどその日はゼネストでお店は全て閉店、という状況でなんとかチキンを手に入れようと奮闘するリンダとお母さんと団地の住人や周囲の人たちも巻き込んだドタバタコメディ。予告編見ていただくとわかる通り、とってもポップでカラフルでセンスのいい手描きの絵が縦横無尽に動くのでとても気持ちいいし、ストライキで困る話なんだけどストの意義はきちんと伝えるとか、テーマも話の作りも減点要素が見当たらないレベルの高さ。吹替版で見ましたが母ポレット役の安藤さくらさんはじめ声優陣もすごく良かった。機会があったらぜひ。
(個人的には、冒頭でお母さんが娘をフェアじゃない形で詰るシーンがあってそこでトラウマ抉られて辛かったのですが、それは作品の瑕疵ではないと思うので、おすすめはおすすめです)
昨日は朝から菊川のミニシアターで映画を見て、清澄白河の東京都現代美術館まで歩いて展示を見てお昼食べてまた展示見てしているうちに一日が終わってしまった。その途中にあった中華料理屋さんのイラストが良すぎて思わずぱちり。営業時間じゃなくて店は閉まっていたので、次に現美に行く時、帰りに寄ろうと思った。清澄白河の再来軒というお店です。
📗井上俊之・高瀬康司『井上俊之の作画遊蕩』
先日、不思凡監督の「大雨」の設定資料集を入手したのと、今後(待ちに待った)「羅小黒戦記」の設定資料集も購入する予定なので、今更ながら「アニメってどうやって作っているんだっけ…?」と思い始めて、羅小黒戦記関係で面白い話をしていたアニメーターの本、という程度の認識で読んでみた。
老若の優れたアニメーターと井上氏の対談集で、こちらは正直、名前も作品も聞いたことがあれば御の字位何も知らないので全然わからないのだが、井上氏の問題意識がぶれずに明確なので、それとの距離でわからないなりに地図が引けたりした。
本書における井上氏の関心は、絵コンテ工程と原画工程の間のレイアウト工程をアニメ制作の中にどのようなものとして位置づけるべきかで、この段階では(昨今主流の)原画寄りの詳細なものでなく、あくまでも演出意図を確認する最低限のものであるべきとの考えらしい。アニメ制作に限らず、組織の仕事で上の意図をどこでどう反映させれば手戻りなく手戻りなく質の高い成果を出せるかというプロジェクト・マネージメント全般のあるある問題なので、問題意識は理解できるし、あまり深掘りはされていなかったけど面白かった。アニメ業界の労働環境にも直結する話だし。
ということで、とりあえず完成しました。ぴよぴよ進捗にあたたかいご声援ありがとうございました。これまでに二度挫折して、今回三度目の正直だったので、何とか書き上げることができてとても嬉しい!
https://fedibird.com/@machino_y/112380029931970981 [参照]
📘「雁は南へ」
不思凡監督「大护法」(邦題:DAHUFA 守護者と謎の豆人間)のファンフィクション。2年半ごしにようやく書き上がりました。約26,000字。
映画のラストで生き残った登場人物たち(太子、大護法、小鳴)のその後の物語です。ほぼオリジナルと言ってもいい独自設定ですが、映画を見た時から気になっていた太子の行く末を(勝手に)見届けることが出来たので、肩の荷が一つおりた気持ち。
しばらく寝かせて、年内あたりにはうすい本にできればと思っています。
https://crepu.net/post/6785763
西早稲田の甘露さんの姉妹店の虫二さん、茶席の予約とお菓子の販売のお店らしい。とても気になる。
通販ではだいぶお世話になっているけど、実はまだ甘露さん本店にも行ったことがないので、平日休みが取れたらいずれ行ってみたいな。
https://twitter.com/KanroNishiwased/status/1783996142000406870
📽今年のアヌシー国際アニメーション映画祭長編部門に不思凡監督の「大雨」がノミネート。歓喜の舞を踊っています。
なお、長編部門には「トットちゃん」他複数、Contrechamp部門(マイナーだがキラリと光る長編発掘部門みたいな感じ?以前羅小黒戦記がノミネートされたのはここ)に「ゲ謎」と、今年は日本アニメの進出が著しく、そういうことしか報道では話題にならないのだろうなとは思うが、多彩であろう外国の作品もきちんと紹介されて欲しい。
★長編部門ノミネート作品一覧:
https://www.annecyfestival.com/en/the-festival/official-selection/competition/2024/feature-films
★Contrechamp部門ノミネート作品一覧:
https://www.annecyfestival.com/en/the-festival/official-selection/competition/2024/feature-films-contrechamp
マキノヤヨイです。創作集団こるびたるの中のひと(もしくは外のひと)。ここは、主に創作活動のゼミ発表的な使われ方をしている場です。