すでに秋の土用入りだというのにこの日射しはなんだ。南向きの窓のレースのカーテンには熱っぽい陽光がたっぷりと溜まっている。この子すっごい暑がりですぐ脱いじゃうのよ、と圭子さんが言って黙ると、エアコンの音だけが病室に残った。六十歳を過ぎた弟のことをこの子、と呼ぶのがおかしい。圭子さんがベッドに手を伸ばし、彼のはだけたパジャマを直してやり、薄いタオルケットをかける。昔から仲のいい姉弟だった。このふたりに最後に会ったのはいつだっただろう。昔からの飲み仲間数人で北陸へ遊びに行った。あれは確か北陸新幹線が金沢まで延伸した年だったから、八年ぶりくらいか。そのあとすぐに、行きつけだった共通の知人の店が火事で焼けてしまった。マスターには会う、と圭子さんが訊いた。いや、全然。コロナもあったしね。そういえばさ、金沢でよしくん、イカ釣ったじゃん。こんなおっさんをよしくん、などと呼ぶ自分も自分だが仕方がない。この子、あれからイカ釣りに凝っちゃって、竿からリールから全部揃えて大変だったんだから。釣れもしないのに、ねぇ、と圭子さんはもうほとんど反応しない弟に笑顔を向ける。ビギナーズラックだったのか、と僕もすっかりやせ細ってしまった友人の顔を見る。大きな耳だ。こんな大きな耳をしていたのかと、僕は泣きたくなってしまって慌てて席を立った。
すでに秋の土用入りだというのにこの日射しはなんだ。南向きの窓のレースのカーテンには熱っぽい陽光がたっぷりと溜まっている。この子すっごい暑がりですぐ脱いじゃうのよ、と圭子さんが言って黙ると、エアコンの音だけが病室に残った。六十歳を過ぎた弟のことをこの子、と呼ぶのがおかしい。圭子さんがベッドに手を伸ばし、彼のはだけたパジャマを直してやり、薄いタオルケットをかける。昔から仲のいい姉弟だった。このふたりに最後に会ったのはいつだっただろう。昔からの飲み仲間数人で北陸へ遊びに行った。あれは確か北陸新幹線が金沢まで延伸した年だったから、八年ぶりくらいか。そのあとすぐに、行きつけだった共通の知人の店が火事で焼けてしまった。マスターには会う、と圭子さんが訊いた。いや、全然。コロナもあったしね。そういえばさ、金沢でよしくん、イカ釣ったじゃん。こんなおっさんをよしくん、などと呼ぶ自分も自分だが仕方がない。この子、あれからイカ釣りに凝っちゃって、竿からリールから全部揃えて大変だったんだから。釣れもしないのに、ねぇ、と圭子さんはもうほとんど反応しない弟に笑顔を向ける。ビギナーズラックだったのか、と僕もすっかりやせ細ってしまった友人の顔を見る。大きな耳だ。こんな大きな耳をしていたのかと、僕は泣きたくなってしまって慌てて席を立った。
おやおや、この京大仏文出身の先生、私は存じ上げないのだが、随分悪い意味で「ナイーブ」なカミュ像を抱きしめておられるようだ。
しかし、問われるべきは、パレスティナのアラブ人たちを欧米の支援を受け、イスラエル軍が虐殺している今この時に、この「アラブ人に対する無動機殺人」の不条理を掲載する、毎日の見識だろう。
WWII後、アルジェリアは独立運動を展開したが、仏側は武力で鎮圧。「アルジェリアはフランス」であるから、FLN(民族解放戦線)は「テロリスト」、その行為は「テロ」とされた。パリのアルジェリア人が1961年10月に平和的にデモをした際も、仏警察はこれを襲い掛かって、1万2千人を逮捕、大量の人間をセーヌ川に突き落とし、数十人が死亡。
捕虜には一切の法的保護は与えられず、電気ショックをはじめとする拷問のマニュアルが開発され、それはその後ラテン・アメリカの軍事政権に輸出され、対ゲリラ戦に活用された。
ちなみにFNの創設者、J.マリー・ルペンはアルジェリア戦争の際の拷問担当部隊に所属。
それにしても、1960前後生の仏文学者が、まだ「不条理」の夢に浸っているのは、完全に時代遅れ。今「不条理」を感じているのは、一方的に虐殺されているパレスティナのアラブ人ではないのか?
BT
私はこのインタビューの先生については何も存じ上げないのですが、ちょっと疑問に思ったので。
通り魔殺人を起こした犯人が、
「誰でもいいから殺したかった」などと言うことがあります。最近はそういう言い方に対して、「本当に誰でもよかったのか、弱そうな相手を狙った犯行だったのではないか」と批判されることが多くなりました。
アルベール・カミュは、フランスが北アフリカで植民地にしていたアルジェリアで、植民者側のフランス人として生まれた人です。
そして、カミュが書いた『異邦人』って、「植民者が現地のアラブ人を殺す」小説なんですよね。
『異邦人』についても、本当に単なる「不条理」殺人といっていいのか、今現在の視点から見ると、問題になると思います。
(サイードも指摘していますし)。
現在のこのパレスチナの文脈のなかで、「アラブ人が無意味に殺される」話について語る際に、「殺した」側のムルソーの話ばかりを語り、「殺される側」からあらためて捉えかえす視点がないのは、おそらく無意識にフランス人・植民者側の視点に立っているからだと思います。
おそらく定年も間近な教授が、数十年の研究の果てに、未だにこうした地点からしか語りえないのだとしたら、「文学研究」の価値ってなんだろう、と思ってしまいます。 [参照]
"メタは21年、警察とパレスチナ人デモ参加者の間で激しい衝突があった際、パレスチナ人の声をシャドウバンニングしたことで非難された。その後、独立した立場で作成された報告書が、このプラットフォームがアラビア語のコンテンツを過剰にモデレートし、ヘブライ語のコンテンツを過小にモデレートしていたことを明らかにした"
https://wired.jp/article/palestinians-claim-social-media-censorship-is-endangering-lives/
来世は猫に生まれたい…
きっと100年後、米国は存在してないな…。日本は多分、もっと前になくなっているかもしれないが。 #イスラエル・パレスチナ問題
ガザの子供が2300人以上殺された。圧倒的な軍事力で空爆を続けるのはもはや虐殺です…即時停戦を求める署名をしました。他にどうしていいのか分からない…辛い。
https://chng.it/DpZwqqnPKk
銀杏の木、色づく前に散り始めた…
100億匹のズワイガニが姿消す アラスカ沖、「海洋熱波」で餓死か - 毎日新聞ニュース
https://mainichi.jp/articles/20231021/k00/00m/030/045000c
うたうたい。もの書き。著書に『異物』(英治出版)など。ルーツレゲエとキューバ音楽を愛する旅人。静岡→東京→NY→東京→宮古島→那覇→ダナン(ベトナム)→バンコク(タイ)→午前四時の国在住