まず書店現場もしくはチェーン内部で「女/非正規の言うことなんて」が発動し、それを突破しても次は書店-出版社という上下関係のなかで「女/非正規の(もしくは書店の)」が発動するため、搾取構造が維持され続けている。
こういったことを書店員たちのなかで(あるいはSNSで)言うと「心ある出版社社員もいる」などと言われるのだが、これは構造の問題であってあなたの知り合いに心ある者がいるとかどうとかは関係なく、構造そのものをどうにかしなければ搾取する者/される者が生じ続けるだけなのだ、ということが理解されないため、その点でも改善が見込めないでいる。構造自体が問題を抱えている場合、構造内部にいる個々人の性格のよさだとかなんだとかは無効化されるのだから、問題は切り分けて考えなければならないのだけど、搾取構造に慣れきってしまっている(つまり「思いやり」「情緒」で問題を乗り越えてきている)書店員たちは、その切り分けができない。
そしてそのような見下し=下請けとみなす行為は、往々にして無自覚になされているし、見下されているほうもそれに気がついていない。あるいは日々の労働をこなすのに精一杯で気がつける余裕がない。このような環境なので、当然、書店現場および出版業界全体が反差別のようなありかたを追求構築維持などできやしない。特に書店現場でどうにかやっている者らは、そもそも自らが搾取される側にいるため、まずかれらが救われる=反差別の実践が自らを救うということを自覚しなければならないが、その壁を突破できないでいる。反差別を訴える=自らの労働環境を搾取であると批判することなど、身の程をわきまえない傲慢な要求だと思わされている。