第11回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作 矢野アロウ『ホライズン・ゲート 事象の狩人』(早川書房)を頂き読みました。巨大ブラックホールを探査する者たちの物語が、詩的でいてソリッドに描かれていてよかったです。日常的に描かれるウラシマ効果のずれや、探査に伴って発生する仮想実体の狙撃(着弾までに一週間、時には一月を越える)、右脳に祖神を宿した狙撃手の女と時間を同時的に見通せるパメラ人との愛情の在り方――などの要素を面白く読みました。
発売2日目にして重版が決まったそうです。
QT: https://fedibird.com/@dempow/111588609128158881 [参照]
『奏で手のヌフレツン』の電子書籍版は、12月29日に発売の予定です。
QT: https://fedibird.com/@dempow/111459371736220605 [参照]
『ユリイカ 2024年1月号』の「特集*panpanya ―夢遊するマンガの10年―」に、エッセイを寄稿しました。インタビュー、往復書簡、エッセイ、論考、オマージュマンガ等々、読み応えがすごい。12月26日発売。
『SFマガジン』2024年2月号は特集「ミステリとSFの交差点」。話題の、第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作、間宮改衣「ここはすべての夜明けまえ」も一挙掲載。連載46回目となるイラストストーリー「幻視百景」では、機種変更の話をかきました。
杉江松恋さんとの月例SFレビュー番組「これって、SF?」、12月号その2です。
私は、酉島伝法『奏で手のヌフレツン』(河出書房新社)を紹介しました。
4つの太陽が徒歩で(!)巡っている凹面世界を、造語やルビを駆使した文章で描き出しています。想像力をフル回転させながら読み進めると、背景となる世界の骨格や、そこで生きる者たちの姿がいきいきと浮かび上がってきます。
杉江さんが紹介されたのは、横溝正史ミステリ&ホラー大賞史上初の三冠作(大賞、読者賞、カクヨム賞)を達成した、北沢陶『をんごく』(KADOKAWA)です。
ストーリーも文章もキャラも、すべての勘所を押さえた作品で、デビュー作ですが非常に完成度が高いです。大正の町並みを再現できれば、映像化しても映えそう。
https://www.youtube.com/watch?si=uy2jlmhteC30oVhH&v=e3-lPqOfmXg&feature=youtu.be
「ポリタスTV」の「石井千湖の沈思読考 #25 2023年振り返りSP」にて、石井千湖さんに『奏で手のヌフレツン』を紹介いただきました。番組に映った「球地(たまつち)」の図はこちらです。
香月祥宏と杉江松恋の「これって、SF?」2023年12月号・その2で、『奏で手のヌフレツン』のヌフレツンをご紹介頂きました。〝誰でも読める酉島伝法〟との言葉を賜りました。
https://www.youtube.com/watch?v=e3-lPqOfmXg&t=879s
潜水鐘が好きなので(『前日島』とか。あれはまさに鐘でしたが)、潜水鐘で若い頃に亡くなった夫に会いに海底に向かう表題作から掴まれました。身体がしだいに石になっていくのを感じながら、いろいろな用事をこなしつつ最後の一日を過ごす「石の乙女たち」、巨人の肉体感覚に囚われだした少年が仲良しの少女と巨人の墓場で遊ぶひとときを描く「巨人の墓場」、別の時間を生きる精霊たちが家に住む人々の移り変わりを見守る「精霊たちの家」、浜辺に流れ着くガラクタの手触りや、祖母と孫のやりとりがいい「浜辺にて」、老人ホームでミセス・ティボリが持ち込んだ数々の瓶が見せる幻影「ミセス・ティボリ」等々、どれも印象的でした。最後の「語り部(ドロール・テラー)の物語」は、小説を書いている者として、胸にくるものが…。
とりしまです。Dempow Torishima 絵と小説をかきます。最新刊は長編『奏で手のヌフレツン』。著書に『皆勤の徒』(英訳版、仏訳版も)『宿借りの星』『オクトローグ』『るん(笑)』、高山羽根子さんと倉田タカシさんとの共著『旅書簡集ゆきあってしあさって』。SFマガジンで「幻視百景」連載中。