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著者は第12回創元SF短編賞の最終選考で、受賞作と最後まで競っていた方で、その候補作の冒頭の鮮烈さがずっと頭に残っていたのでした。

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第11回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作 矢野アロウ『ホライズン・ゲート 事象の狩人』(早川書房)を頂き読みました。巨大ブラックホールを探査する者たちの物語が、詩的でいてソリッドに描かれていてよかったです。日常的に描かれるウラシマ効果のずれや、探査に伴って発生する仮想実体の狙撃(着弾までに一週間、時には一月を越える)、右脳に祖神を宿した狙撃手の女と時間を同時的に見通せるパメラ人との愛情の在り方――などの要素を面白く読みました。

今年は、『るん(笑)』文庫版、『金星の蟲』(『オクトローグ』改題文庫版)、そして宿願だった長編『奏で手のヌフレツン』の三冊も刊行できました。お読みくださった皆様ありがとうございました。

発売2日目にして重版が決まったそうです。
QT: fedibird.com/@dempow/111588609
[参照]

酉島伝法  
総解説企画では、『サンリオSF文庫総解説』『ハヤカワ文庫SF総解説2000』『ハヤカワ文庫JA総解説1500』にも参加しています。

今号の『SFマガジン』には、ディックと親交のあったシンガーソングライター金延幸子さんへのインタビュー「フィリップ・K・ディックとの日々」(聞き手・構成 高田漣)があるのですが、ディック的空間が現出するような内容でした。想像していた以上に強い繋がりがあり、ディックの方もインスピレーションを受けていたんですね。金延幸子さんがPKDとの思い出を綴った私家版回想録『インフィニティ・スカイ』って、むちゃくちゃ読みたいんですが…!

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『奏で手のヌフレツン』の電子書籍版は、12月29日に発売の予定です。
QT: fedibird.com/@dempow/111459371
[参照]

酉島伝法  
『奏で手のヌフレツン』の見本ができました。むちゃくちゃ格好いい……! 装丁は川名潤さんが手掛けてくださいました。太陽が歩いて巡る空洞世界に住む人々の、数世代にわたる物語です。河出書房新社より12月4日頃発売。

エッセイでは、『紙魚の手帖』vol. 2の「無常商店街」という短編が、panpanya作品に触発されたことに触れたのですが、「無常商店街」の扉絵を描いてくれたカシワイさんもpanpanyaオマージュ漫画を寄稿されていて、それがまた最高なんです。

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『ユリイカ 2024年1月号』の「特集*panpanya ―夢遊するマンガの10年―」に、エッセイを寄稿しました。インタビュー、往復書簡、エッセイ、論考、オマージュマンガ等々、読み応えがすごい。12月26日発売。

『SFマガジン』2024年2月号は特集「ミステリとSFの交差点」。話題の、第11回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作、間宮改衣「ここはすべての夜明けまえ」も一挙掲載。連載46回目となるイラストストーリー「幻視百景」では、機種変更の話をかきました。

短編版「奏で手のヌフレツン」の挿絵のカラー版です。

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渡辺祐真編『みんなで読む源氏物語』(ハヤカワ新書)、さっそく鼎談 円城塔×毬矢まりえ×森山恵「謎と喜びに満ちた〈世界文学〉」を読んでるが、〝分業はしていなくて、二人それぞれが全訳して〟〝絵巻だと、人が死ぬときには本文を書いている文字も崩れる〟等々いろいろ驚きや発見が。面白い…。

〝円城 「シャイニング」と訳したときの光っている感はすごいですね。〟

鼎談を読んでいて、『A・ウェイリー版 源氏物語』はオーディオブックがあれば面白そうと思った。

酉島伝法 さんがブースト

杉江松恋さんとの月例SFレビュー番組「これって、SF?」、12月号その2です。

私は、酉島伝法『奏で手のヌフレツン』(河出書房新社)を紹介しました。
4つの太陽が徒歩で(!)巡っている凹面世界を、造語やルビを駆使した文章で描き出しています。想像力をフル回転させながら読み進めると、背景となる世界の骨格や、そこで生きる者たちの姿がいきいきと浮かび上がってきます。

杉江さんが紹介されたのは、横溝正史ミステリ&ホラー大賞史上初の三冠作(大賞、読者賞、カクヨム賞)を達成した、北沢陶『をんごく』(KADOKAWA)です。
ストーリーも文章もキャラも、すべての勘所を押さえた作品で、デビュー作ですが非常に完成度が高いです。大正の町並みを再現できれば、映像化しても映えそう。

youtube.com/watch?si=uy2jlmhte

一年の振り返りも含め、様々な本の話を楽しく拝聴しました。『神と黒蟹県』は気になってた本なんですよね。やはり面白そう。

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「ポリタスTV」の「石井千湖の沈思読考 #25 2023年振り返りSP」にて、石井千湖さんに『奏で手のヌフレツン』を紹介いただきました。番組に映った「球地(たまつち)」の図はこちらです。

youtube.com/watch?v=5rdLdVHYU7

香月祥宏と杉江松恋の「これって、SF?」2023年12月号・その2で、『奏で手のヌフレツン』のヌフレツンをご紹介頂きました。〝誰でも読める酉島伝法〟との言葉を賜りました。
youtube.com/watch?v=e3-lPqOfmX

金川宏『アステリズム』(書肆侃侃房)を著者よりお送りいただきました。橋本さんのポストで知り、帯の〝猫の骨が透けてみえるようなひかりで組み立ててみる午後からのこと〟に惹かれて気になっていたのですが、幻視的な光景がうかぶ歌が次から次へと現れてやはりすごく好みでした。

見たこともない日々を啄む老婆まっさおな魚が落ちてくる村外れ

遡行する縫合線の果て昏く眼窩になだれ落つる大瀑布

いつからだろうしんとしていて台形の背鰭が浮かびあがる夜の部屋

屈葬の九月こじあけられてよりわが生国に黄金の雨降る

山尾悠子作品や『ニューロマンサー』のオマージュと思しき歌もいくつかあり。

潜水鐘が好きなので(『前日島』とか。あれはまさに鐘でしたが)、潜水鐘で若い頃に亡くなった夫に会いに海底に向かう表題作から掴まれました。身体がしだいに石になっていくのを感じながら、いろいろな用事をこなしつつ最後の一日を過ごす「石の乙女たち」、巨人の肉体感覚に囚われだした少年が仲良しの少女と巨人の墓場で遊ぶひとときを描く「巨人の墓場」、別の時間を生きる精霊たちが家に住む人々の移り変わりを見守る「精霊たちの家」、浜辺に流れ着くガラクタの手触りや、祖母と孫のやりとりがいい「浜辺にて」、老人ホームでミセス・ティボリが持ち込んだ数々の瓶が見せる幻影「ミセス・ティボリ」等々、どれも印象的でした。最後の「語り部(ドロール・テラー)の物語」は、小説を書いている者として、胸にくるものが…。

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