あの『方形の円──偽説・都市生成論』(ギョルゲ・ササルマン著 住谷春也訳 東京創元社)が、単行本の装いのまま文庫になりました。〝紙上に生みだされ、崩壊してゆく36の空想都市たち〟を描く珠玉の掌編集。解説を再録いただいています。9月29日頃発売。
むちゃくちゃ面白いです。
『るん(笑)』が集英社文庫になりました。装丁は単行本に続いて松田行正さん、解説は久坂部羊さんです。9月20日頃発売。
帯裏にはなんと、10月発売の『金星の蟲』(早川書房)の情報を載せていただいています。
WIREDの50号(30周年記念号だそうです)、アルゼンチンの作家マリアーナ・エンリケス氏との異文化交流的な往復書簡企画を担当しました。
劉 慈欣×池澤春菜
マリアーナ・エンリケス×倉田タカシ
N・K・ジェミシン×高山羽根子
ウォレ・タラビ×藤井太洋
という座組みになってます。
めちゃくちゃに緊張しましたが、率直で真摯なお返事をいただき、深く心に刻まれるやりとりになりました。
〝私は、この時代を通じて、人類は動物たちから観察されていたのだと思う。〟
〝私たちは、へまばかりする、目の見えない、冷淡で残酷な殺戮者や拷問者として、彼らといっしょに生きてきた。そして、彼らのほうはじっと観察して、私たちの本性を見ぬいていたのだ。〟
〝私たちの国で支配階級の人々が、外で起こっている事態には目を閉じ、名声と富でできたガラスの鐘のなかでぬくぬくと暮らしていなかった時代があっただろうか?〟
〝彼らはグループになって一時間狩りをしているかと思えば、次の瞬間には仲間の一人を殺していた。彼らはそのときどきの衝動にしたがって、徒党を組んで、お互いに襲撃しあった。彼らの間に友情はなく、一分ごとに変わっていく同盟があるだけで、数分前に起こったことさえおぼえてはいないようにみえた。〟
〝水と空気、私たちの生存の基礎となるもの、私たちがそのなかで泳ぎ、動いている要素、私たちをたえず、永久に、形成し、再形成し、再創造し、再生する当の物質……その物質を私たちが疑い、避け、潜在的な敵として扱わねばならなくなってから、どのくらい経つのだろうか?〟
『異常論文』で注目していた青島もうじきさんの初単著『私は命の縷々々々々々』(星海社)をお送り頂きました。人類が様々な生物の生殖方法を取り入れるようになった近未来を舞台に、ドウケツエビの生態を持って生まれた性が未分化な語り手の学園生活を描く、極めて思弁的なSFで非常に面白かったです。優れた自分はひとりで増えるべきと考えているミジンコの生活環を持った幼馴染がいたりする。
はじめて「夜は千の眼を持つ」(1948)を見たが、えらい面白かった。エドワード・G・ロビンソン演じる奇術師が透視術のショーをするうちに、本当に未来が予知できるようになるが、婚約者に訪れる不幸を知って20年もの隠遁生活を送り、再びある未来を目にして――
『フェルナンド・ペソア伝 異名者たちの迷路』刊行記念対談 澤田直×山本貴光「人はなぜペソアに惹かれるのか」
https://www.bungei.shueisha.co.jp/interview/pessoa/
ドリス・レッシングの『生存者の回想』を少しずつ読んでいた。無政府状態となった近未来のイギリスで、初老の女性が少女を一方的に預けられ、犬とともにひと所で淡々と生き延びる物語。幻視、部族化した若者たち、少女の変化、突如現れた野蛮な子供たち――一種の社会実験としても興味深かった。
とりしまです。Dempow Torishima 絵と小説をかきます。最新刊は長編『奏で手のヌフレツン』。著書に『皆勤の徒』(英訳版、仏訳版も)『宿借りの星』『オクトローグ』『るん(笑)』、高山羽根子さんと倉田タカシさんとの共著『旅書簡集ゆきあってしあさって』。SFマガジンで「幻視百景」連載中。