ドリス・レッシングの『生存者の回想』を少しずつ読んでいた。無政府状態となった近未来のイギリスで、初老の女性が少女を一方的に預けられ、犬とともにひと所で淡々と生き延びる物語。幻視、部族化した若者たち、少女の変化、突如現れた野蛮な子供たち――一種の社会実験としても興味深かった。

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〝私は、この時代を通じて、人類は動物たちから観察されていたのだと思う。〟
〝私たちは、へまばかりする、目の見えない、冷淡で残酷な殺戮者や拷問者として、彼らといっしょに生きてきた。そして、彼らのほうはじっと観察して、私たちの本性を見ぬいていたのだ。〟

〝私たちの国で支配階級の人々が、外で起こっている事態には目を閉じ、名声と富でできたガラスの鐘のなかでぬくぬくと暮らしていなかった時代があっただろうか?〟

〝彼らはグループになって一時間狩りをしているかと思えば、次の瞬間には仲間の一人を殺していた。彼らはそのときどきの衝動にしたがって、徒党を組んで、お互いに襲撃しあった。彼らの間に友情はなく、一分ごとに変わっていく同盟があるだけで、数分前に起こったことさえおぼえてはいないようにみえた。〟

〝水と空気、私たちの生存の基礎となるもの、私たちがそのなかで泳ぎ、動いている要素、私たちをたえず、永久に、形成し、再形成し、再創造し、再生する当の物質……その物質を私たちが疑い、避け、潜在的な敵として扱わねばならなくなってから、どのくらい経つのだろうか?〟

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