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すごい現代文学短編集を読んだ。ディーマ・アルザヤット著 小竹由美子訳『マナートの娘たち』(東京創元社 海外文学セレクション)、弟の遺体を浄めながら過去を思い出す「浄め(グスル)」 からいきなり素晴らしく、様々な境界の縁に立つ人の視点から描かる多声的な作品の数々に圧倒される。
アラブ系移民2世とその伯母の波乱の人生と窓から落下する女の話が交錯する表題作、障碍を持つ弟が消えて探し回る語り手の複雑な心境を描く「失踪」、ワインシュタイン事件を彷彿とさせる「懸命に努力するものだけが成功する」、そして短編集の三分の一を占める「アリゲーター」は、実際にあった移民夫婦のリンチ事件に基づいて、新聞からメールからSNSから台本から、様々な虚実をコラージュして人間社会を俯瞰的に描き異質なものを排除する暴力性を炙り出す野心作。「サメの夏」では、衛星放送チャンネルの販売員たちが仕事をしていたら、テレビのニュースでビルに飛行機が突っ込んでいく映像が映り、移民のいるその場の空気が変わるようすがリアルに描かれる。

投票してから、造幣局の桜の通り抜けに初めて行ってきました。こんなにたくさんの種類の桜を見れるとは。壮観でした。

投票を終えてから福島区へランチに行ったら、胡麻が大量に沈んだ自家製胡麻焼酎の大きなガラス容器が飲めと言わんばかりに眼の前に置かれており、昼間からお湯割りを頼まざるを得なかった。独特の風味があり美味しかった。料理も絶品。

小川公代 吉野由利 編『感受性とジェンダー 〈共感〉の文化と近現代ヨーロッパ』(水声社)、造本が美しい…。カズオイシグロ、オースティン、ウルストンクラフト、ルソー、ヒュームらの著作を通して共感とはなにかを探る論考の数々に没頭して読みました。10年間の研究成果とのことで濃密。
複数の章で言及されるデイヴィッド・ヒュームの共感の話が特に印象的でした。『ジェイン・エア』の分析にもはっとさせられる。「共感」という言葉に複雑な思いを抱いている人ほど面白い本だと思います。

アリ・スミス著 岸本佐知子訳『五月 その他の短篇』(河出書房新社)、12の月ごとの物語が連なるアリ・スミスの奇想性が色濃く出た深みのある短編集で、読むごとに季節が移り変わっていくのも相まってすごく楽しかったです。
『変愛小説集』に収録されていて印象的だった、近所の木に恋をする「五月」が好きだった人は必読。駅を歩いていたら死神とぶつかりかける、他人には見えないバグパイプの楽隊につきまとわれる、突然恋人に別の家庭があると語りだす、などの話が最高でした。ハンバーガーショップの強盗や、ネス湖のクルーズ船で空元気で働く話なども好きです。あと書店や本にまつわる話が多いのもいいんですね(『グレート・ギャッツビー』が読まれもせずあちこちの古書店を渡っていくのに笑う。ガイコツ書店員本田さん的にいろんな客がくる話も)

書くこと読むことや、ジェイムズ・スティーヴンズとの出会いについての散文詩的な訳者あとがきも良かった。

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ジェイムズ・スティーヴンズ著 阿部大樹訳『月かげ』(河出書房新社)、ジェイムズ・ジョイスの友人だったアイルランドの作家・詩人の短編集。つまりほぼ百年前の作品なんですが、一話目の「欲望」からすごくてしばし放心。車に轢かれかけた人を助けた男が「すべてを差し置いて欲しいものはありますか」と訊かれて意識に何かを灯らせて帰宅し、その妻がその夜なぜか夢で北極海へ向かう遠征隊の船に乗って凍えるような寒さを味わい――
二作目の「飢餓」は、貧困のあまりの救いようのなさに放心した。どの作品も、現実や夢をリアリズムで描く筆致がいいです。書き出し大賞は、「愛しい人」の〝四つ目おじさんは、けっこう若い〟ですね。

おんかかかびさんまいそわか
京橋にきた。

「第3回みんなのつぶやき文学賞」の国内編で『旅書簡集 ゆきあってしあさって』が、 高原英理『詩歌探偵フラヌール』、西村賢太『雨滴は続く』と共に5位でした。ありがとうございます!

宇野亞喜良さんと作家のコラボレーション、いいんですよね。千早茜さんとの『鳥籠の小娘』も素晴らしかった。

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津原泰水さんの傑作短編に、宇野亞喜良さんが数々の挿画を描いたビジュアル版『五色の舟』(河出書房新社)を手に入れた。Toshiya Kameiによる英訳も収録。改めてすごい小説ですね。

わたしも自著を水戸部さんに手掛けていただいたことがあるのです。痺れました。

沼野充義、芝田文乃、木原槙子訳『火星からの来訪者 知られざるレム初期作品集』(国書刊行会)、水戸部功さんの装訂にしびれる。
本邦初訳の六作が収録されているのですが、「ヒロシマの男」は、〝アメリカによる広島の原爆投下を主題にした、世界でもっとも早い文学作品の一つ〟とのこと。

人形もよかったです。い空間のどこに作品があるのか、という楽しみもあり。ロッカーはあやうく見逃すところだった。

北加賀屋の名村造船所跡のクリエイティブセンター大阪に「谷原菜摘子の北加賀屋奇譚」展を見に行ってきた。妖しい色彩で緻密に蠢く絵の数々が、造船所跡という舞台も相まってとてもよかったです。

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