ジェイムズ・スティーヴンズ著 阿部大樹訳『月かげ』(河出書房新社)、ジェイムズ・ジョイスの友人だったアイルランドの作家・詩人の短編集。つまりほぼ百年前の作品なんですが、一話目の「欲望」からすごくてしばし放心。車に轢かれかけた人を助けた男が「すべてを差し置いて欲しいものはありますか」と訊かれて意識に何かを灯らせて帰宅し、その妻がその夜なぜか夢で北極海へ向かう遠征隊の船に乗って凍えるような寒さを味わい――
二作目の「飢餓」は、貧困のあまりの救いようのなさに放心した。どの作品も、現実や夢をリアリズムで描く筆致がいいです。書き出し大賞は、「愛しい人」の〝四つ目おじさんは、けっこう若い〟ですね。

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書くこと読むことや、ジェイムズ・スティーヴンズとの出会いについての散文詩的な訳者あとがきも良かった。

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