『首』観た。バイオレンスとユーモアは人間の同じ領域から出てきて同じ領域に作用する、というのがよくわかってよかったです。
『北極百貨店のコンシェルジュさん』を観ました。気になったところ。
・ウミベミンクの件に対する東堂の総評コメントがよくわかっていなくて、映画では「1 ウミベミンクは毛だけでも高値で取引される」「2 毛を狙う悪党がいるかもしれない」「3 個人的な事情を聞くな」と言っていたと思いますが、2と3の繋がりが意味不明じゃないですか?
原作読んだ時には「2 自分で毛を売って換金するのかもしれない(のでもしそういう事情だったら聞かれたことに不快になるかもしれない)」だと読んでいたんですが、違ったのか? いや、その読みが正しくてもわりと意味不明なんですが……。クジャクに絡めての進化のエピソードも意図不明だし、全体によくわからない。
・カリブモンクアザラシのクレーマーを森さんが「ビシッと言って」成敗するところ、スカッとジャパンというか、インターネットの使い古された屁理屈というか、全体にダサいので勘弁して欲しいです。原作の時点でそうなのに、映画では輪を掛けて過剰に演出するものだから、正直けっこう「ウッ」となってしまいました。
『北極百貨店のコンシェルジュさん』を観ました。
原作読んでから行ったのに、脚色・再構成が上手すぎてまともに「食らって」しまい涙ぐんでしまった。1話完結のシリーズ漫画(10話)をどうやって1本の映画(70分)に脚本化するかのお手本でしたね。
・同じ線で括れるエピソードを一つに括る(ニホンオオカミ、マンモス、バーバリライオン)
・一つに括った上で「同時解決」させることでエモーションを高める
・尺も短くなる
・絶滅動物エピソードも一箇所に寄せることで説明パートを簡潔にしつつドラマフォールとしても利用する
・「主人公の成長譚」としてのテーマで全体を貫き、(店内装飾など季節感によって)時間経過も明示する
・その上で円環構造にすることで原作と同じやや据わりの悪い後味も生じさせる
など……。
映画として気になったのは、キャラクターの声の音響くらいです。全体に高音のアタックが強く、耳がキンキンする録音でキツかった。前に『からかい上手の高木さん』でも文句を言ったのですが、なんでああなるの?
アザラシのクレーマーの演出過多も気になりましたが、こちらは本質的には原作からあった瑕疵という気がしています。
作家(阿部登龍)。第14回創元SF短編賞受賞作「竜と沈黙する銀河」(紙魚の手帖vol.12)、「狼を装う」(同vol.18)。SFとファンタジーと百合とドラゴンとメギド72が好き。
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通販 http://abe-dragonslay.booth.pm