「ポピュリズムの歴史をひもとけば、ポピュリズムを『デモクラシーを危機にさらすもの』とする見方は、必ずしも一般的ではない。むしろかつてのポピュリズムは、少数派支配を崩し、デモクラシーの実質を支える解放運動として出現した。19世紀末のアメリカ合衆国、20世紀のラテンアメリカ諸国を典型として、既成の政治エリート支配に対抗し、政治から疎外された多様な層の人々、すなわち農民や労働者、中間層などの政治参加と利益表出の経路として、ポピュリズムが積極的に活用された。特にラテンアメリカにおいて、労働者や多様な弱者の地位向上、社会政策の展開を支えた重要な推進力の一つが、ポピュリズム的政治だったのである」3%
「特に本書を通じて提起したいと考えているのは、ポピュリズムとはデモクラシーに内在する矛盾を端的に示すものではないか、ということである。なぜなら、本書で示すように、現代デモクラシーを支える『リベラル』な価値、『デモクラシー』の原理を突きつめれば突きつめるほど、それは結果として、ポピュリズムを正統化することになるからである。
現代のデモクラシーは、自らが作り上げた袋小路に迷い込んでいるのではないか。
ポピュリズム研究に新境地を開いた政治学者のカノヴァンによれば、『ポピュリズムは、デモクラシーの後を影のようについてくる』という。デモクラシーの成立と発展こそが、ポピュリズムの苗床となったとすれば、ポピュリズムなきデモクラシーは、ありえないのだろうか。
本書が、『ポスト・デモクラシー(デモクラシー以後)』の時代に突入したといわれる現代における、『デモクラシーの逆説』の問題と解決の糸口を明らかにできれば幸いである」1%
水島治郎(2016)『ポピュリズムとは何か ──民主主義の敵か、改革の希望か』中央公論新社
Lenski, Gerhard E. (1967) “Status Inconsistency and the Vote: A Four Nation Test,” American Sociological Review, Vol.32, No.2, pp.298-301.
「地位の結晶化が乏しい人々は、社会の中で曖昧な位置をーー社会的相互作用の通常の行程において多くの不愉快な経験をさせられそうな位置を占める。そのような人々の間で明らかな、政治的リベラリズム・バイアスへの傾向は、そうした経験への反応として解釈された。…そのような人々は、リベラルな政治運動を支持することにより、しばしば自らの困難の源泉と見るようになった現存の社会秩序を変えようとする。そのような運動を支持することにより、彼らはまた、社会における影響力のある階級のメンバーのーーしばしば自分をかき乱す経験の直接の源泉であるかもしれない人々のーー社会的ポジションを掘り崩そうとする」pp.458-9.
Lenski, Gerhard E. (1956) “Social Participation and Status Crystallization,” American Sociological Review, Vol.21, No.4, pp.458-64.
社会学と誤用進化論😅を中心に読書記録をしてをります
(今はストーン『家族・性・結婚の社会史』1977年)
背景写真はボルネオのジャングルで見た野生のメガネザル
https://researchmap.jp/MasatoOnoue/