水島治郎(2016)『ポピュリズムとは何か ──民主主義の敵か、改革の希望か』中央公論新社

「特に本書を通じて提起したいと考えているのは、ポピュリズムとはデモクラシーに内在する矛盾を端的に示すものではないか、ということである。なぜなら、本書で示すように、現代デモクラシーを支える『リベラル』な価値、『デモクラシー』の原理を突きつめれば突きつめるほど、それは結果として、ポピュリズムを正統化することになるからである。
 現代のデモクラシーは、自らが作り上げた袋小路に迷い込んでいるのではないか。
 ポピュリズム研究に新境地を開いた政治学者のカノヴァンによれば、『ポピュリズムは、デモクラシーの後を影のようについてくる』という。デモクラシーの成立と発展こそが、ポピュリズムの苗床となったとすれば、ポピュリズムなきデモクラシーは、ありえないのだろうか。
 本書が、『ポスト・デモクラシー(デモクラシー以後)』の時代に突入したといわれる現代における、『デモクラシーの逆説』の問題と解決の糸口を明らかにできれば幸いである」1%

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「ポピュリズムの歴史をひもとけば、ポピュリズムを『デモクラシーを危機にさらすもの』とする見方は、必ずしも一般的ではない。むしろかつてのポピュリズムは、少数派支配を崩し、デモクラシーの実質を支える解放運動として出現した。19世紀末のアメリカ合衆国、20世紀のラテンアメリカ諸国を典型として、既成の政治エリート支配に対抗し、政治から疎外された多様な層の人々、すなわち農民や労働者、中間層などの政治参加と利益表出の経路として、ポピュリズムが積極的に活用された。特にラテンアメリカにおいて、労働者や多様な弱者の地位向上、社会政策の展開を支えた重要な推進力の一つが、ポピュリズム的政治だったのである」3%

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