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「ストレスは生命にとっての危険であって適応機構によって制御され、中立化されるべきものであると同時に、より高次の生命を生みだすものでもある。もし、生命に外から干渉を加えても、その後簡単にいわゆるホメオスタシス的平衡に戻るのならば、アメーバ以上の進歩はけっしてなかったにちがいない」187頁

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「生物学的にいうと、生命とは平衡の維持とか回復ではなく、生物開放システムの教義が明らかにしているような、非平衡の維持が本質的なものである。平衡に達したということは死とそれに続く崩壊を意味する。…行動には——またおそらく進化にも——個体の適応とか種の生存といった効用原理には還元できない広い領域がある」187頁

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「現代の技術革命ほどには喧伝されていないが同程度に将来の可能性が約束されているものとして、生物科学と行動科学の最近の発展にもとづく革命がある。端的に表現するならば、それは<有機体論革命>といってよいであろう。その核心をなすのは<システム>の概念である。…
…いま私たちは根本的に別の世界観をさがし求めつつある——<世界をオーガニゼーションとして>見ようとするのだ」183頁

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「開放システム・モデルとフィードバック・モデルはともに生理学における広い範囲の現象に適用されるが、それは物理学の理論の本質的な拡張を示すものである。この二つの概念は明白に区別しなければならない。フィードバック・モデル(ホメオスタシス)のほうは一般の生理学的調節のすべてを網羅したものではない。つまり『システム理論』とこれを同一視してはならない」180頁

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「私自身も、生物学でのそのものの見方からして、生理学的過程の動的な秩序の中に固定して動かないものを予想するにはほど遠い者である。私の生物学に対する見方全体からすると、私はむしろ古いヘラクレイトス流の〔万物流転の〕考えに共鳴しているのであって、永遠なものはただ法則と変化の秩序にだけあると考える。…
…真に不変なものは、一定の関係によって表わされる諸過程のオーガニゼーションである」176-7頁

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「開放システムの動力学とフィードバック機構とは二つの異なったモデル概念であって、それぞれに適した範囲がある。開放システム・モデルは基本的にいって非機械論的であり、伝統的な熱力学を越えるばかりか伝統的な物理学理論で基礎となっている一本道の因果関係をも越えるものである…サイバネテイクス的アプローチは生物体のデカルト的機械モデルと一方向の因果関係と閉鎖システムを保持している。後者で新しいのは伝統物理学を越えた概念を持ちこんだこと、とりわけ情報概念の導入である。結局この一対のものは『過程(機能)』と『構造』という古来の対立物を現代ふうに表現したものだ。…
 生理学的にいえば、フィードバック・モデルは代謝その他の領域でのいわゆる『二次調節』、すなわち神経内分泌制御の例のように、既存の機構と固定した経路を用いての調節を説明する。その機械論的な性格からして特にそれは器官と器官系の生理学に特によく適用できる。その反面、開放システムにおける諸反応の動的な相互作用は、より一般的かつ根本的な開放システム制御が認められる、細胞代謝…のような『一次制御』に適用される」157-8頁

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「フィードバック・システムと『ホメオスタシス』制御は重要ではあるけれども自己制御システムと適応現象のうちの特別な種類のものであるということを強調するのが、たいせつである。…
…典型的なフィードバック・システムあるいはホメオスタシス現象は、入ってくる情報にかんしては『開いて』いるが物質とエネルギーに関しては『閉じて』いる。ゆえに情報理論の諸概念は——特に情報と負のエントロピーが同等であることから——開放システムの不可逆熱力学よりもむしろ『閉じた』熱力学(熱静力学)に対応する。ところがもしシステムが(生物体のように)『自己組織的』…なものであれば、すなわち高度の分化に向かって進んでいくものであれば、不可逆熱力学が前提とならなければならない」157頁

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「この国[米国]の生物学は、サイバネティクスの概念の影響を受けて、むしろ細胞や生物体の機械概念に戻ってしまい、したがって開放システムの理論が与える重要な諸原理を無視してきたのである」155頁

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「開放システムの時間的な変化を眺めてみても、いちじるしい特徴がみつかる。そういう変化が生じうるのは、生物システムが初め不安定な状態にあって、それから定常状態に向かうからである。生長や発生の現象は大ざっぱにいえばそうしたものである[😅]。あるいは別の場合としては、定常状態が外部の条件の変化、いわゆる刺激によって攪乱を受けることもある。そうしてこれが——今度も大ざっぱにいってのことだが——適応や、刺激ー反応ということの内容である。ここでもまた閉鎖システムに対して特徴的な違いが出ている。閉鎖システムは一般に漸近的な仕方で平衡状態に向かう。これと対照的に開放システムでは、出足の遅れとす行きすぎもおこる…換言すれば、もし行きすぎや出足の遅れを見たときには——多くの生理現象でよくあるように——これは一定の予測可能な数学的特徴をそなえた開放システム内での過程であろうと予期してもよいのである」154頁

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(承前)「生物システムはその要素の多少ともすみやかな交換、変質と再生、異化と同化の中で維持される。生物体は開放システムの階層的な秩序である。あるレベルでは持久的な構造のように見えるものも、実際には、すぐ下位のレベルの成分がたえまなく交換することによって維持されている。こうして、多細胞生物体は自らを維持するのに細胞の交換によっているし、細胞は細胞内構造の交換によっており、また細胞内構造はそれを形づくる化合物の交換によっている、等である。一般的な規則としては、かかわっている要素が小さいほど代謝回転速度が速い…これは生物体がその中で、またそれによって維持されているヘラクレイトスふうの流れ[😅]を示すよい実例である」154頁

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「閉鎖システムが最後には時間に依存しない化学的、熱力学的平衡に<かならず>到達するのに対して、開放システムは一定条件下では、時間に依存しない定常状態と呼ばれる状態に到達する<ことがある>。20年ほど前に私が導入した言葉を使えば、流動平衡に到達することがある。定常状態では、たえず成分が交代していてもシステムの組成は一定のままである。定常状態あるいは流動平衡は等結果性をもつ…。開放システムを扱うためには拡張と一般化が必要であった。これが<不可逆熱力学>として知られているものである。その結論の一つとして、古い生気論の謎が解明される。…[熱力学の]第二原理に対し、あるいはこれと『激しく対立して』…生物体は自己を思いもよらないほどありえそうにもない(確率の低い)状態に維持し、たえまない不可逆過程にもかかわらずその秩序を保ち、あまつさえ胚発生や進化では、より高度の分化のほうへ進みさえする。この見かけ上の謎は、古典的な第二原理が定義により閉鎖システムにのみかかわると考えることによって消えうせる。高エネルギーに富んだ物質をとりこむ開放システムでは、高度の秩序の維持や高度の秩序への進展さえも、熱理学的に許される」153-4頁→

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「細胞と生物体はいわゆる定常状態(流動平衡Fliessgleichgewicht, von Bertalanffy)の中でほぼ一定に保たれる。これが生物システムの一つの根本的な神秘である[😅]。代謝、生長、発生、自己調節、増殖、刺激ー反応、自律的な活動などのような他のすべての特徴は結局のところこの基本的な事実からの結果である。生物体が開放システムであることは今や生物システムのもっとも基本的な規準の一つとして、すくなくともドイツの科学に関するかぎり、認められている…
…合衆国の生物物理学や生理学では同じようにいえないのは残念である。私は代表的なアメリカの教科書をのぞいてみたが、『開放システム』とか『定常状態』とか『不可逆熱力学』という言葉さえ見つからずむだであった。これはつまり、生物システムを普通の無機的なそれから根本的に区別するまさにその規準が一般に無視され、もしくはすり抜けられているということである」😅 152-3頁

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「<開放システムと定常状態>
 現代の代謝と生長に関する研究ならばどれも、生物体およびその成分がいわゆる開放システムであること、すなわち環境とたえず物質交換をする中でみずからを維持しているシステムであることを考えに入れなければならない…その本質的な点は開放システムが在来の物理化学の限界を、その二つの主分野である反応速度論と熱力学において越えていることにある。言いかえると在来の反応速度論と熱力学は生物体内の過程の多くのものには適用されない。生物物理学——生物体への物理学の応用——にとって、理論の拡張が必要である」151頁

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「これまで支配的であった自然の機械論的な概念は、物事を線形(一直線)の因果連鎖に分解すること、世界を機械的事象と物理学的またダーウィン的な『サイコロ遊び』(Einstein)の結果と考えること、生物学的過程を無生物的自然から知られた法則に還元することを強調してきた。これに対して開放システムの理論(および一般システム理論としてそれがさらに一般化されたもの)では、多変数相互作用の原理(たとえば不可逆熱力学における反応速度論や流束や力)が浮かびあがってくる。それは過程の動的なオーガニゼーションということであり、また生物学領域の考察のもとで物理学法則を拡張していく可能性があるということである。それゆえこうした展開は、新しい科学的な世界観定立の一部分をなすものである」😅 149頁

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「遺伝的調節に関するある種の実験は、遺伝の基礎にそのようなオーガニゼーションが存在することを示している。そうした効果は進化の巨視的な法則においても研究されるべきものであろう…私はそれゆえ現在一般に受けいれられている『進化の総合理論』はせいぜい部分的な真理であって、完全な理論ではないと信じている。さらに生物学的研究を積み重ねること以外に、開放システムの理論やそれの現在の境界線上の問題の中で、物理学的考察がとりいれられなければならない」148頁

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「ここで私たちがとりあげている根本問題は、私の信ずるには、こんにちの生物学の信条が『じゅうたんの下に敷きこんで隠してしまった』たぐいの問題である。…
 これに対しては、淘汰(選択)とか競争とか『最適者の生存』とかはすでに自己維持システムの存在を<前提>していることを指摘しなければならない。それゆえ自己維持システムは淘汰の<結果>ではありえない。…最大の子孫を生みだす遺伝子型の選択というようなことは、ほとんど助けにならない。増殖力の差によるのならば、いったい進化が増殖率ではかなうもののないウサギ、ニシン、それどころか細菌を越えてなぜ進んだか理解することはむずかしい[😅]。局所的に高度の秩序(および低確率性)をもつ状態を作ることが物理学的に可能なのは、ある種の『オーガニゼーションの力』が場面に登場しているときに限る。…けれどもそういうオーガニゼーションの力は、ゲノムを『タイプの打ちまちがい』の蓄積と考えるときには、あからさまに否定されているのだ」147-8頁

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(承前)「開放システムは『能動的に』より高度のオーガニゼーションの状態へ向かってゆくことがある。すなわち、システムの条件に従って秩序の低い状態から高い状態に移ってゆくことがある。フィードバック機構は『学習』によって、すなわちシステムに供給された情報に『反応』して、より高いオーガニゼーションの状態に達することができる。
 要するに、フィードバック・モデルはもっぱら『二次的』な制御、すなわち、言葉の広い意味での構造配置に基礎をおく制御に適用されるものである。けれども生物体の構造は、代謝と成分の交換との中で維持されているのであるから、『一次的』制御は開放システムの動力学から由来するものでなければならない。生物体は発生の過程でだんだんと『機械化』される。そのため後期になっての調節は、特にフィードバック機構に対応したものとなる(ホメオスタシス、合目的的行動その他)」145-6頁

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「<開放システムとサイバネティクス>…
 開放システム・モデルの基礎はその要素の動的な相互作用にある。サイバネティクス・モデルの基礎はフィードバック・サイクル…にあり、このサイクルは情報のフィードバックによって、望む値(目標値)を維持したり、標的に到達したりする。開放システムの理論は一般化された反応速度論と熱力学である。サイバネティクスの理論はフィードバックと情報に基礎をおく。…
 反応速度論的および熱力学的形成の開放システム・モデルは情報については語らない、[ママ]他方、フィードバック・システムは熱力学的および反応速度論的には閉じている。それは代謝をもたない。
 開放システムでは秩序の増加とエントロピーの減少が熱力学的に可能である。その大きさである『情報』は、負のエントロピーと形式的に同じ式で定義される。けれども閉鎖的なフィードバック機構の中では情報は減少する一方であり、けっして増加しない。すなわち情報は『ノイズ』に変換されうるが、その逆はない」145頁→

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「何年か前に、生命の基本特徴となる、代謝、生長、発生、自己調節、刺激に対する反応、自発的な活動、等々は結局は生物体が一つの開放システムであるという事実の結果からくると考えられることを指摘した。それゆえ、このようなシステムの理論はいろいろな面の異質の現象を同じ一般概念のもとに結びつけ、定量的な法則をひきだすべき統一原理となるであろう。私はこの予言がほぼ正しいことがすでに証明されて数多くの研究によって検証されていると信じている[😅]。
…開放システムの理論は<一般システム理論>の一部分である。この分野は、要素の性質やそれらを支配する力のいかんにかかわらずひろく一般のシステムに適用できる原理を論ずるものである。一般システム理論はもはや物理的、化学的な実体がどうであるということは論じない[😅]。完全に一般的な性質をもつ全体というものについて議論をするレベルに達する。だが開放システムのある種の原理は、種間の競争と平衡を扱う生態学から、人間の経済学その他の社会的分野まで、広い範囲に依然としてなりたち、成功裏に適用できるものである」144-5頁

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「開放システムは普通の閉鎖システムに対して通常の物理法則に矛盾するようにみえる特徴を示す。こうした特徴はしばしば、生命の生気論的特徴、すなわち物理法則に従わず、生命事象に生気の類とかエンテレキー的要因をもちこんではじめて説明できると考えられた。生物的な調節の等結果性などはたしかにそうであって、たとえば、同一の『目標』である正常な生物体が、正常な卵からも分割された卵からも、二つくっつけ合わせた卵からも作られるというようなことがある。じっさいにこれはドリーシュによれば、もっとも重要な『生気論の根拠』であった。同じように、物理的自然においてエントロピーと無秩序が増加していく傾向と、発生や進化での負エントロピー傾向のみかけ上の矛盾は、しばしば生気論の論証として用いられた。そうしたみかけ上の矛盾は、物理学理論を開放システムへ拡張、一般化するとともに消えてしまうものである」140頁

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