渡辺 一史『なぜ人と人は支え合うのか 「障害」から考える』(筑摩書房、2018)読了。
『こんな夜更けにバナナかよ』の著者による、「ちくまプリマー新書」。
「相模原障害者施設殺傷事件」の植松聖被告は「障害者なんていなくなればいい」という趣旨の供述をした。その考え方を高みから全否定するのではなく、その主張をわが身に照らして、じっくり吟味してみる必要があると著者は書く。
和光大学名誉教授で哲学者・生物学者の最首悟氏にはダウン症で重度の知的障害がある娘と暮らしている。あるとき拘置所にいる植松被告から手紙が送られてきた。「大学で指導する人が、社会の負担になる重度障害者と暮らすなんてありえません」と。最首氏は「八つ裂きにしたい」怒りを堪えて、植松被告と接見を始める。そして、植松被告の人物像が浮かび上がる。
本書にはさまざまな「活動」する重度障害者が描かれる。そして、彼彼女ら「支えられる」だけの客体ではなく、介助者や行政も彼彼女らに「支えられる」様子もつぶさに描かれる。
〈人と人が支え合うこと。それによって人は変わりうるのだということの不思議さに、人が生きていくことの本質もまた凝縮している〉
#読書
今晩は鶏肉のハニーマスタード焼き、出汁漬けの数の子のマヨネーズがけ。
鶏肉のハニーマスタード焼きは小林まさみさんのもの( https://www.ntv.co.jp/3min/recipe/20141002/ )
蜂蜜がどっさり入るのが美味しい。我が家では、たっぷりレタスに、追いマスタード。ぅう、ぅう、ぅ旨いっっ!!薩摩芋も優しい……。
数の子はおせち的な意味はどうでもよく、味が好き。塩抜きして、我家出汁(田中屋醤油、昆布、干椎茸)で漬けて、マヨネーズ!!と、七味!!旨い!!大好き!!
お酒は亀泉 純米吟醸 生原酒 CEL-24。
静かな晩がゆっくりと進んでいきます……。
#幻聴と闘う晩御飯
#fedibird
斎藤環『「自傷的自己愛」の精神分析』(KADOKAWA、2022)読了。
「自傷的自己愛」とは自己否定的な言葉で自分を傷つけ続けながら、自分自身について、あるいは自分が周囲からどう思われるかについて、いつも考え続けている状態。「自分がダメであることに関しては、誰よりも自信がある」という意識、プライドが高く自信がない。
承認依存が「キャラとしての承認」への依存であるのと同様に、自傷的自己愛は「キャラとしての自分」に対する否定。
創造的な営みは、低い自己肯定感からもたらされる場合も多く、無理に上げられた自己肯定感は反作用も大きい。
自己愛とは「自分が好き」という感情ではなく、「自分自身でありたい」という欲望。
自己愛そのものは「人間が生きていくための必須条件」で、自傷的自己愛は治療が必要と断定できないまでも、なんらかのケアや支援が必要であるような問題をもたらす。
自傷的自己愛の緩和にはまず「自覚」が必要。
読んでいて、私自身にもある気質だなと思った。心の脆いところはなかなか成熟しない。緩和策として挙げられている「オープン・ダイアローグ」は有効かもしれないが、安全に参加することへのハードルの高さも感じた。
#読書
『澤』2023.12月号「澤俳句鑑賞283」を担当しています。
今回も良い句が沢山あり、楽しく鑑賞を書かせて頂きました。
今月号が拙担当の最終回です。
半年間、とても充実した読句時間を頂きました。お付き合いくださり、ありがとうございました。
お手にとってご覧頂けると嬉しいです。
#俳句
『窓際のトットちゃん』、「真実の物語」という惹句はどうかなと思いました。かなりの美化が入っているし、主観的なファンタジーも入っている。そして、その主観的ファンタジーが、素晴らしい!!
プロの植物監修が入ったなと思わせる自然描写も素晴らしかった。四十雀に捩花に、凌霄花、桐の花、藤の実。歳時記的な四季の描き方だった。
暁方ミセイ『青草と光線』(七月堂、2023)読了。
良い詩集でした……。
感想を書くのは難しいのですが、どうにも攫っていく世界と「鬼」を見せてくれる。
ゆっくりと読後を味わいたい詩集です。
青草と光線 - 暁方ミセイ ─ 七月堂
https://www.shichigatsudo.co.jp/info.php?category=publication&id=aokusatokousen
#読書
田野大輔 ・ 小野寺拓也【編著】 香月恵里 ・ 百木漠 ・三浦隆宏 ・ 矢野久美子【著】『〈悪の凡庸さ〉を問い直す』(大月書店 、2023)読了。
ベッティーナ・シュタングネト『エルサレム〈以前〉のアイヒマン』は、「歯車」「考えることを放棄」「他人の言うなりにやり過ごす」といった「街場」のアイヒマン像に決定的なダメージを与えた。この世に存在する彼に関する資料を博捜し、自覚的なアイヒマン像を徹底的に裏付けたのだ。
果たして、ハンナ・アーレントの説いた〈悪の凡庸さ〉は、改訂すべき表現なのか。この問題を巡る歴史研究者とアーレント研究者とでは、見解が異なる。本書では、それぞれの論を並べた上で、両者の討論が記録される。
アーレント研究者は、シュタングネトの見解はアーレントの見解を覆してはいないのではないかとみる。
一方で、歴史研究者からは「〈悪の凡庸さ〉ではなく、〈悪の浅薄〉と改めるべきではないか」と提案がなされる。
両研究者の視座が交差する興味深い討論であった。
歴史研究者が〈悪の凡庸さ〉という言葉が、一人ひとりは凡庸な人間だから悪くないんだという歴史修正主義的な意味合いを込めて使われるケースが目立つようになってきたこと。ある種の価値相対主義が蔓延していることに警鐘を鳴らしていたのも印象深かった。
#読書
今晩は鯛のマリネ、鯛骨の吸物、柿と鴨のローストと水切ヨーグルト、原木椎茸の醤油炙り。
柵で買った鯛はちゃちゃっと捌いて、玉葱(塩で流して辛味抜き)・パプリカ・ピーマン・セロリ・人参の千切りと合わせて自家製ホエイドレッシングで和えます。ホエイの乳臭さが鯛の旨味に絡んで美味しい……!!野菜どっさりなのも嬉しい……!!捌いて出た骨身は吸物に。安らぐ味……。
柿はジャジャっと切って、薄切り鴨ローストと水切ヨーグルトで頂きます。水切ヨーグルトが濃厚さとサッパリ感を併せ持っていて、美味しい……。
美川の道の駅で買った原木椎茸はチリチリ炙って、ジュワッっと焦がし醤油に。あぁぁあぁ、本当に美味しい椎茸!!旨味が濃い!!
お酒は『石鎚 グリーンラベル』。本当に食事に合う素晴らしいお酒です!!水切ヨーグルトにも合うよ!!
#幻聴と闘う晩御飯
#fedibird
俳人・岡田一実。俳句とか考えごととか。美味しかった話とか、読んだ本の記録とか、香水(主に量り売り)とか、旅のこととかいろいろ揺らぎつつ。幻聴があり、人生はだいたい徐行。リブ返しはちょっと苦手。体調によっては返せません。
HAIKU,for its own sake. she/they
句集に『境界ーborderー』(2014)、『新装丁版 小鳥』(2015)、『記憶における沼とその他の在処』(2018) 、『光聴』(2021)、『醒睡』(2024)。単著に『篠原梵の百句』(2024)。