小説を書いたりしてます。
【ほぼ百字小説】(5505) 子育てをする生き物だが、育てるのは自分の子である必要はないらしく、だからうまくやれば人間でも育ててもらえる。そんなふうにして育ててもらった者は、自分の子もそうやって育ててもらいがち。それの何が悪い?#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5504) 工場に呼び出された社員は、自動人形に改造される。社内にそんな噂が流れ、呼び出されたことのある社員を見て、噂だけではないな、と感じている。もしかしたらずっと呼び出されないかも。今ではそれがいちばん怖い。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5502) 朝からの冷たい雨で亀の甲羅もすっかり冷え、何も食べない動かない。昨日の昼間には、あんなにばくばく食ったのに。甲羅の中で、夏と秋がめまぐるしく入れ替わっているようだ。いや、甲羅のない身にはわからないが。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5501) 稽古場だから本番の舞台にあるはずの階段などなくて、でもそれがある態でやっているうちに、ありもしない階段を上がったり下りたりできるようになって、本番でもそうすることになり、結局それがいちばんの見せ場に。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5500) 昨日は朝から、何年ぶりかでやってきたテント劇団の撤収の手伝いに行き、夕方からは自分が出る芝居の稽古。今日は、前に何度も出してもらった劇団の何年ぶりかの公演を観に行く。狭くて広い世界で同じ風の中にいる。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5499) 秋空の下、舞台が解体されるとぬかるみが現れた。すべては、このぬかるみの上で行われていたわけか。テントの周囲のぬかるみはもう跡形もないのに、テントの大きさのぬかるみが残っている。まもなく消えるだろうが。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5498) 言葉を転がしつつ言葉と共に転がっていく様を見ながら、いつのまにか転がされていることに気がつく。転がし転がされてたどり着くその先がどこなのかは、転がす者にも転がされる者にも、そして言葉にも、わからない。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5497) 暗い広場には傘の列ができている。足もとはぬかるんでいて、ぬかるみの向こうにはテント。テントの中から見るぬかるみは街灯を反射して銀色に光っている。満員のテントを満たす雨音は、開演前の音楽のようでもある。#マイクロノベル #小説
ほぼ百字小説】(5496) 集まったのは、骨を組み立てるため。ばらばらに梱包され運ばれてきた骨をこの広場でもとのように繋ぎ合わせる。広場いっぱいの巨大な骨組みが完成し、あとは肉付けするだけ。誰がどの部位になるのかでいつも揉める。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5495) またあのテントがやってきた。夜になると光と音と熱に満たされるあのテント。そういえばいちど、妻があれについて行ってしまったことがあったなあ。しばらく帰って来なかった。あれはもうひと昔も前のことだったか。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5494) またあのテントがやってくる。前と同じ場所に舞台が作られるところを見物がてら手伝いに。なんにもできない私でも言われるままに動けば、かちぱちきりりと見る見る世界が組み上がる。あとはここに夜をかぶせるだけ。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5493) 外に出ると満月。不思議なほど明るくて丸いそれは舞台の照明のようで、どこか作り物っぽい。そんな月の光で地面にくっきり落ちた自分の影もまた作り物っぽく感じられるのは、さっきまで芝居の稽古をしていたせいか。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5492) この長い下り坂の果てが見えないのは、そのあたりがもうすっかり夜で、にもかかわらず灯りがひとつもないから。引き返したほうがいい、という者もいるが、これは下り坂であって上り坂ではないのだから、それは無理。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5491) 路面電車のある町で、路面電車のある町のことを思い出す。路面電車のあるいろんな町のこと。そして路面電車のあった町のこと。今ではもう路面電車のある町ではなくなってしまった町のこと。路面電車の中で思い出す。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5490) この季節のこの時刻には長く伸びる巨人の影がここまで届くから、今も変わらず巨人があの場所に立っているとわかる。子供の頃、あの巨人の近くの町から巨人を見上げたことがあった。今も夢を思い出すように思い出す。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5489) 今朝も亀の甲羅を磨いた。亀の子束子と歯ブラシでがしがし磨いていく。亀はくすぐったそうに手足と尻尾をじたばた動かするが、それでも逃げずにその場にいるのだから、気持ち良くもあるのか。亀のことはわからない。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5488) 生きている粘土だ。それが取りたい形を取るのに手を貸している。手を動かして作ってみて、もっとどうして欲しいのかを粘土に尋ねてまた手を動かすが、最近ではもう尋ねなくてもわかる。だいぶ粘土に近づいたのかも。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5487) 袋の中で暮らしたい。前からそう願っていたが、じつは最初からずっと袋の中にいて、そうとわかった今では、とてもこの袋から出ることはできず、だから袋の中で袋を作っている。あれ? 前にもこんなことしたような。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5486) 絶滅する前に機械化されたが腹に袋はついている。まあそれがいちばんの特徴だからな。しかし、フクロネコなんてものがいたとはねえ。えっ、そのことはあんまり言って欲しくない? それでネコ型を名乗っているのか。#マイクロノベル #小説
【ほぼ百字小説】(5484) 涼しくなったので、ひさしぶりにきちんと磨いてやる。この夏の猛暑のせいか、物干しにいる亀の甲羅は、藻がからからに乾いたまま固くこびりついてがびがび。亀の子束子でこする。魔人は出てこないが、亀が頭を出す。#マイクロノベル #小説
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