新しいものを表示

【ほぼ百字小説】(5385) 鮫の背鰭に擬態した陸生の生き物。そんなものが、いかなる進化の過程で生まれたのか。それは依然大きな謎ではあるが、とある映画スタジオが遺伝子操作で作った、という陰謀論が今のところいちばん説得力があるかな。
 

【ほぼ百字小説】(5384) 草原をかき分けて黒い三角形の背鰭がまっすぐ迫ってくる。バーベキューをしていた人々は、食材を放り出して逃げまどう。陸鮫と呼ばれるそれは、鮫の背鰭に擬態した雑食性の生き物で、あるのは背鰭に見える部分だけ。
 

【ほぼ百字小説】(5383) 放物線を描いている。ここがその放物線の頂点で、だからこの先は落ちていくだけ。まあ、ここまで来れた、と言えるし、ここまでしか来れなかった、とも言える。放物線なのだから、最初からすべてわかっていた、とも。
 

【ほぼ百字小説】(5382) 突然の夕立に、こんなこともあろうかと、と取り出し広げた折り畳み傘は骨がべきべき、片手を添えて風雨の中に出たが地図を見ることができず、でもずぶ濡れでどうにか着いた稽古始めの顔合わせ。先が思いやられるな。
 

【ほぼ百字小説】(5381) 虎に翼があったり、猫に翼があったり、亀に翼があったり、狸に翼があったりして、鳥でも蝙蝠でもないのに背中に翼のあるそれらすべてをひっくるめて、天使、と呼ぶことにしておこう。あ、ついでに人に翼があるのも。
 

【ほぼ百字小説】(5380) ひとり暮らしだった頃、なぜか雨の夜にだけ、どこからか踏切の警報機の音が聞こえてきた。妻と娘がいない雨の夜、ふとそんなことを思い出して、すると雨音の向こうから聞こえてくるのだ。なんだ、ついてきてたのか。
 

【ほぼ百字小説】(5379) 通り抜けられません、と書かれた路地なのだが、毎日通り抜けている。通り抜けられる路地なのに、そんなことが書いてあるのを不思議がるべきか、通り抜けられない路地なのに、通り抜けられることを不思議がるべきか。
 

【ほぼ百字小説】(5378) これまではずっと橋だと思っていたが、そうか、門でもあったのか。両岸を行き来する者にとっては橋だろうし、両岸のあいだの暗い流れの中にいる者にとってのこれは門だったのだ。橋から飛び降りた今、それがわかる。
 

【ほぼ百字小説】(5374) 待ち合わせ場所の西日射す天満天神繁昌亭の前には誰もおらず、しばらくして二人来たが、残り二人は一向に来ない。アカン人らやなあ。まあ本番にはちゃんと揃ったから、よしとする。そのうち揃わなくなるのだろうし。
 

【ほぼ百字小説】(5373) 鼠花火に蛇花火、くらいは知っているが、猫花火や亀花火は初めてで、へえ、そんなものが、とやってみるとなるほど猫だし亀だ。それにしてもなぜ今まで知らなかったのだろう、と首を傾げて手に持っているのは狸花火。
 

【ほぼ百字小説】(5372) 扇子を持ち歩いていて、店に着くとしばらくぱたぱたあおぐ。広げたそれが向日葵畑の柄であることに今さら気がつくが、前は違っていたような気もして、そしてあのときもやっぱり前は違っていたような気がしたような。
 

『交差点の天使宣伝用の百字』
【ほぼ百字小説】(5371) 今すぐあなたの脳に天使をインストールしてください。たった十五秒でインストールできる百字の天使を集めました。世界の見えかたが変わります。それがあなたにとって良いことなのかどうかは、神のみぞ知る、ですが。
 

『かめたいむ宣伝用の百字』
【ほぼ百字小説5370】 亀亀、亀亀亀亀亀。亀亀亀亀、亀亀亀亀亀亀亀。亀亀亀亀亀? 亀亀亀亀亀、亀亀亀亀亀亀亀亀亀亀亀亀亀亀亀亀亀亀亀。亀! 亀亀亀亀亀。亀。亀亀亀亀亀亀亀。まあだいたいそんな感じの本です。二百匹百字亀大行進。
 

【ほぼ百字小説】(5369) 朝起きると部屋の床に蝉の抜け殻が。妻と娘に尋ねても知らないと言う。いろんな偶然が重なれば起きてもおかしくないことだが、やっぱり不思議。まあ蝉の抜け殻それ自体の不思議に比べれば、なんでもない不思議だが。
 

【ほぼ百字小説】(5368) 舞台裏をさまよう夢を見ている。舞台の上にいるつもりが、いつのまにか裏側に来てしまったらしい。一刻も早く舞台に戻らねば、とは思うが、どう行けば舞台に出るのかわからない。もしかしてこの夢、覚めないのかな。
 

【ほぼ百字小説】(5367) 首提灯を手に峠道。このあたりには出るらしい。そう聞いていた通り、次から次へと首無しライダーが来ては急停車し、首を検分しては走り去る。この首ではないらしい。しかし首が無いと首を振ることはできないんだな。
 

【ほぼ百字小説】(5365) ほどよい首を貰ったので、首提灯にした。光るのは目だけだからさほど明るくないが、今どきそこまで暗い道もないから大丈夫。それより、話し相手になってくれるのがありがたい。おかげで夜道のひとり歩きも怖くない。
 

【ほぼ百字小説】(5364) 近頃は皆、やたら腹を切りたがる。切れ、なんて言ってないのに、自分から待ってましたとばかりに切る。自分の中に何か立派なものがあって、切れば出てくるとでも思っているのかなあ。相応のものしか入ってないのに。
 

【ほぼ百字小説】(5362) 日陰の地面にぺたりと貼り付くように伏せている。そこが冷たくて気持ちいいのだろう。いつもはすぐ逃げるのに、今日は逃げない。快適な場所を死守する覚悟か。湯気の立つ地面に伏せていた冬の温泉街の猫を思い出す。
 

【ほぼ百字小説】(5361) あの地面に並んでいるのは出る杭で、出る杭だから出るたび打たれるのだが、それでもやっぱりまた出てきて、そしてまた打たれる。繰り返されるうちにそれはもう儀式のようになっていて、今では打ちつ打たれつの関係。
 

古いものを表示
Fedibird

様々な目的に使える、日本の汎用マストドンサーバーです。安定した利用環境と、多数の独自機能を提供しています。