阿波座にある大阪府立江之子島文化芸術創造センター(enoco)で開催中のEmerging Artists Osaka 2024。
中崎町にあるアトリエ三月、西天満にあるgekilin.、現在は特定のスペースを持たずキュレーションやプロデュースに特化しているサロンモザイクという三つのアートスペースのユニットTRI-FOLDによるアンデパンダン形式の公募グループ展。数年前から開催されてますが、今回、改めてアンデパンダン+コンペティションという形にリニューアルしています。
さておき、会場には100名(!)の出展作家の作品がところ狭しと並んでおり、大半は絵画・平面ではあるものの立体やインスタレーションも散見され、画風やメディウムなども多種多様で、ほとんどカオス状態。似たような傾向のをピックアップしてシュッとまとめるのが近年のグループ展においてトレンドとなっているものですが、まったく真逆を志向しているわけで、見飽きない。自分で描かない者としては、うゎそう来たかと思ったり、ぁこれはヤバいなぁと思ったりと、楽しい。
そんな中で個人的に最も瞠目したのは、岩井さとみ《或る日のこと》(画像参照)。160cm四方という大画面に、ほとんど子供の落書きのような趣で人物や猫が描かれているという、かなり全振りしたような作風ですが、しかしもう少し見てみると背景の色使いや、何より線画によるモティーフの描き方に今井俊満(1928〜2002)の最晩年の絵画──それまでの、今井も領導していた(アンフォルメルに代表される)フランス現代絵画の潮流やメソッドを全て擲ってギャルを描き、多くの現代美術マニアを呆然とさせたのでした──にもつながるものがあるように思われ、キャラクターアートやイラストレーションに対する、モダンアート側からのカウンターパンチとして、非常に出来が良かったです。特に今回の場合、隣にきゃらあい女史の非常にウェルメイドなキャラクターアートが展示されていただけに、余計に際立っていたわけで。岩井氏は2001年生まれだそうで、個人的にはまったく存じ上げないのですが、願わくばこれがビギナーズラックではないことを切に祈る。明日まで
「泉茂1950s 陽はまた昇る」展|2024.6.14〜7.28|市立伊丹ミュージアム https://itami-im.jp/exhibitions/izumishigeru2024/
折も折(?)、泉のデモクラート美術協会時代の仕事に焦点を当てた展覧会が伊丹市で開催されますね。この市立伊丹ミュージアム(旧伊丹市立美術館)や和歌山県立近代美術館が割と継続的にデモクラート美術協会についての研究を蓄積させていっている──で、そんな蓄積の上に泉をアクチュアルな美術家として再生させようとしているのが、先ほどあげた稲葉氏や山中氏の活動である──ことに注目すべきでしょう。こういった潮流と合わせてデモクラート美術協会について見ていく必要がある
「岡本太郎に匹敵」前衛美術家・瑛九の記憶つなぐ 芸術家が集い妻が守ったアトリエ惜しみ展覧会企画:東京新聞 TOKYO Web https://www.tokyo-np.co.jp/article/324401
瑛九(1911〜60)の自宅&アトリエって、昨年まで残ってたんですね(驚)。惜しくも解体されてしまったものの、保存運動から始まった「瑛九アトリエを生かす会」が今秋にさいたま市で展覧会を開催するとのこと。彼が率いていた「デモクラート美術協会」については、関西ではその有力なメンバーのひとりだった泉茂(1922〜95)の再評価作業が稲葉征夫氏や山中俊広氏といったギャラリストによって進められており、そういった動きともリンクしたら面白くなるかも……
序 「アニメーション監督」としての富野由悠季を語りたい|富野由悠季論|藤津 亮太|webちくま https://www.webchikuma.jp/articles/-/3465
美的感覚に訴えかけるコンセプチュアル・アート。ヤン・ヴォー インタビュー https://bijutsutecho.com/magazine/interview/28625
美術の窓5月号、
先日国立新美術館で開催されていた白日会100周年(!)記念展について30ページにわたって展評が組まれてました。中山忠彦(1935〜)御大らの尽力もあってか、今や写実絵画の巨大な牙城というイメージが強い白日会ですが、これは写実絵画とは言い難い(けど、無論抽象画ではない)なぁという絵画も意外と多かったのが、誌面からも十分伝わってきます。
当方「白日会といいますと、(ホキ美術館に所蔵されているような)写実絵画軍団というイメージが強いですが、写実絵画とは違った趣の絵を描いてらっしゃるんですね」──という会話をかつて大阪の某画廊でしていたものですが、誌面ではその彫刻部門の作品も紹介されており、これが白日会の彫刻か…… となることしきり。当方、日展に行ったことがないので、日展がかつてどんな美質を得て、そして失われたのか、全く想像もつかないのですが……
白日会の中堅画家氏「私はずっと具象を描いています。実際のところ、会員は写実と具象と彫刻がそれぞれ⅓ずつといったところですね」
当方「彫刻部門ってあるんですか? それは全く存じ上げませんでした」
中堅画家氏「あります。白日会の彫刻部門は日展がかつて持ってたけど失われた美質を受け継いでいると高い評価を得ていますよ」
当方「へぇ〜…… (日展がかつて持ってたけど失われた美質……? いささか解せぬ……)」
丸紅ギャラリー「和フリカ ―第三の美意識を求めて―」について(2024年5⽉8⽇〜6⽉8⽇) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000062542.html
カメルーン出身でフランスで活動しているセルジュ・ムアングなるアーティストがアフリカの布地を使って着物を作ったりして〈(和風+アフリカで)和フリカ〉と称しているらしい──というのはうっすら仄聞したことがありますが、そのムアングの個展が開催されるそうで。シアスター・ゲイツvsセルジュ・ムアング、〈アフロ民藝〉vs〈和フリカ〉というマッチアップが勝手に実現しているこの時期に並べて見るのが正解かもしれない
待望の日本初個展「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」が森美術館で開幕 https://www.timeout.jp/tokyo/ja/news/afro-mingei-042524
開催中〜2024.9.1。「アフロ民藝」って、何だそのアフリカン・カンフー・ナチスみたいなのは!? となるところですが ←← 常滑での作陶経験があったり、今回の展覧会に合わせて自身の持つ巨大アーカイブを美術館内に展示したりしているのを見ると、確かに──職人ないし職人芸の発見から始まる──アーカイビングとコラボレーションが二大実践であった民藝運動と照応関係があると見ることができるかも。なかなか上京の機会がつかめないのでアレですが……
好事家、インディペンデント鑑賞者。オプリもあるよ♪