池垣タダヒコ「リボンと角柱」展|2024.2.29〜3.9|京都精華大学ギャラリーTerra-S
フライヤーを拾いました。いわゆる「関西ニューウェーブ」のひとりとしてデビューし、1995年からは京都精華大学の版画専攻の教員を務めてきた池垣タダヒコ(1955〜)氏ですが、今年度で退任するそうで、その退任展として開催されるとのこと。1980年代から現在までの作品による回顧展となるそうで、「ニュー・ウェイブ 現代美術の80年代」展(2018、国立国際美術館)や「関西の80年代」展(2022、兵庫県立美術館)あたりで断片的にしか作品に接したことがない者としては、展覧会という形では未だ十分に開示されているとは言い切れない池垣氏の全貌を知る良い機会になりそう。
ところで教育者としての池垣氏の名伯楽ぶりは、2010年代の一時期、京都精華大の版画専攻が関西における若き版画家たちの梁山泊状態となっていた──「THE COPY TRAVELERS(特に迫鉄平氏と上田良女史)や松元悠女史を輩出した」と言えば伝わるでしょうか──ことからも窺えるでしょう。ゼロ年代に井田照一(1941〜2006)が亡くなり、木村秀樹(1948〜)御大率いる運動体なマキシグラフィカが終了した(2008)ことで、少なくとも関西においては現代版画のムーブメントは終わったかと思われていた時期に、京都精華大の版画専攻は時ならぬ隆盛を見せ、その中心人物として池垣氏がいたわけですから、これはもう。
山種美術館で見る「Seed 山種美術館 日本画アワード 2024」。日本画の新たな表現を探る(美術手帖) https://news.yahoo.co.jp/articles/90b9d9d32eb2a00aeeacd3f4b219eeae413d0255?source=sns&dv=sp&mid=other&date=20240221&ctg=lif&bt=tw_up
数日前の記事ですが、さっき見つけた Seed展だけに、種死とか種割れとかSEED FREEDOMとか言われてそう?
フェリックス・ゴンザレス=トレス、梅津庸一の展覧会が開催。大阪・国立国際美術館の2024年度スケジュールが発表 https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/nmao-news-202402
(現在開催中の古代メキシコ展の次に開催される)梅津庸一氏の個展は氏本人が 上で宣伝してたのを瞥見したから知ってましたが、フェリックス・ゴンザレス=トレス展は初耳。2025.2.15〜6.1(予定)とのことですが、(大阪だけに)これに合わせてミュージアムショップで特製飴ちゃんの販売ワンチャン?
京都市立芸術大学の跡地活用 民間から事業者募るも決まらず https://www3.nhk.or.jp/lnews/kyoto/20240221/2010019579.html
昨年京都駅から徒歩数分の場所に移転した京都市立芸術大学ですが、それまでの西京区のキャンパスはどうなるんかなぁと思ってたら、なかなかこじれてるようで。《1社から応募があったものの、今月(2月)に入って取り下げられたため、決まらなかったということです》──そりゃあまぁあんな実質亀岡市みたいな場所ではねェ…… 周りに集落とかあまりなかった記憶がありますし、音楽学部ノイズ専攻とか美術学部パフォーマンス専攻とか、洛中だと迷惑行為になりかねないアレコレ専用にするしかなさそう?
アンゼルム・キーファーの大規模個展、二条城で開催へ(美術手帖) https://news.yahoo.co.jp/articles/42338b4aca395bfe2bccb9767b91cbe563ada646?source=sns&dv=sp&mid=other&date=20240221&ctg=lif&bt=tw_up
来年3月下旬から6月下旬に開催予定とのことですが、キーファーというととにかくアホほど鉛を使った巨大作品というイメージがありますから、そんなん展示したら床抜けてまうで?
京都市京セラ美術館、2024年度の展覧会スケジュールをご紹介! https://www.tokyoartbeat.com/articles/-/kyoto-city-kyocera-museum-of-art-2024-news-202402
既に開催中(村上隆「もののけ 京都」展)だったり、個別に情報公開されている(キュビズム展)のもありますが、全体のスケジュールが公開されてますね。実際はここに諸々の公募団体展や京都会館に隣接する別館での展示が加わります。
個人的には今回新発表された中では、(京都市立芸大の移転記念展という位置づけの)「巨匠たちの学び舎 日本画の名作はこうして生まれた」展(2024.10.11〜12.22)やザ・トライアングルでの迎英里子展(2025.3.29〜6.1)、コレクション展の「女性が描く女性たち」展(2024.7.19〜9.27)あたりが気になるところですが、さて……
21美、6月下旬全館再開 800枚超のガラス天井撤去 開館20周年展は秋以降|社会|石川のニュース|北國新聞 https://www.hokkoku.co.jp/articles/-/1320673
先だっての大地震のために依然として部分営業にとどまっているらしい金沢21世紀美術館。ガラス天井を全撤去って、意外と被害が大きかったようですね。「21世紀美術館は天井が落ちたらしい」「ジェームズ・タレルの展示室の?」──という現代アート漫才が当方の周囲でもまことしやかに言われてましたが そして2026年度以降に長期休館していろいろメンテナンスを行なうとのこと。
ところでこういった実践が紹介されることで、日本における運動の過去/現在/未来が遂行的に逆照射されていることに注目しなければならないでしょう。日本においては──特に東日本大震災以後、「新しい社会運動」と称されていた諸運動に顕著だったのですが──むしろ圧倒的に不利な状況下における対抗的な運動・実践の当意即妙ぶりこそが抑圧されてしまい、特定の党派性(および彼女/彼らがパターナリスティックに設定したアジェンダ)への従属が全面化していったからです。一般論として2010年代においては日本の社会運動は内向化、一国(平和)主義化が、自民党政権がグローバルな権力ブロックの構成に最適化されていった(ex.安保法制)ことと同時に進行していったのですが、言うまでもなくかかる平和主義とミャンマーにおける民主化運動は構造的に逆立しているわけでして、これは日本、特に東京における社会運動(の一国主義化)が組織的構成的に欠落させてきたことにほかならない。私たちがミャンマーにおける諸実践に接することによって見るべきなのは、かかる視野の欠落であり、それに対する対抗運動としても、これらの運動は再読されなければならないでしょう。明日まで。
京都芸術センターで開催中の「当意即妙 # 芸術文化の抵抗戦略」展。
2021年に軍事クーデターが起こり国軍による圧政が続くミャンマーにおいて、それでもなお続いている民主化運動の中でもとりわけアートという形を取ってなされている諸実践を紹介するというものとなっています。紹介されている運動はMasking / Unmasking Life、3AM Performance Art Collective、WART、Docu Athan、Yangonかるた。
https://www.kac.or.jp/events/34900/
それぞれの運動の詳細については上のリンク先を参照していただきたいのですが、「ミャンマーのクーデターがもたらした暴力やその実態を知ること」「アートをはじめ文化実践(Cultural Practice)を通じて、絶望的な世界や社会的・政治的課題や困難と向き合い、それらを活用・応用したいと思うひとたちとともに。世界と向きあう方法─戦略─を見出していきます」(居原田遥(企画者)氏によるステイトメントより)と掲げられていることもあって、どの運動も軍政を一刻も早く終わらせ、民主化運動の最終的な勝利を希望・展望するものとなっています。
特に個人的に強烈だったのはMasking / Unmasking Lifeでして、軍による老若男女問わない市民への弾圧によって殺された人々のデスマスクを折り紙によって制作し続けているのですが、今回の展覧会ではそのデスマスクたちが展示室内で一堂に会していた。他にもミャンマーにおける宿痾となっている少数民族問題をも視野に入れたパフォーマンスを行なってきたものの現在はメンバーそれぞれがバラバラに散っている(ディアスポラ)3AM Performance Art Collective、イラストやひとコマまんがによって軍政下の実態や国際社会の不正を告発するWART、映像ドキュメントによる告発をプラットフォームとして構築しているDocu Athan( https://youtube.com/@DocuAthan?si=q_bKAeGuFShdI26q )──「Athan」とは現地の言葉で「声」を意味するという──、そもそもミャンマー人とは何者でどういう暮らしをしてきたかを伝達するYangonかるたと、現地における力学的・構造的に圧倒的に不利な状況下における対抗的な運動・実践の当意即妙ぶりが様々に紹介されていたのでした。
好事家、インディペンデント鑑賞者。オプリもあるよ♪