「首」見てきたわよー。どうせリアルなんて存在しないんだよと開き直った時代劇コントにも結構真面目に黒澤に取り組んでるようにも見えて、一貫性があるようなないような。どんな顔して見るのが正解なのか謎ではあるが、楽しく見た。演技トーンも演出トーンも統一されてないんだが、バラバラっとした見え方もこれについては正解に思うな、あらゆることが「まあ死にますけど」の虚無の笑いに接続されてるのでそのあたりなかなか面白いと思う。あとなんか特定ゾーンのオールスターズ!が過ぎてそのあたりも謎の面白さだった。
クィア映画だとは感じなかったんだけどクィアな映画にはなってると思う(わたしのクィア概念が合ってれば…違ったらごめんなさいです)トゥーマッチにパフォーマティブな身体が静にも動にも表現されるあたりはさすがの鋭さ。能舞台のとことかは一切笑わせてこないもんね。
わたしは武映画の「足して引いてゼロになります」みたいなとこが好きなんですが、そういう数学的感性はやや後退気味に思えたかな
広がってはいるけどそんなおかしい絡まれ方とかはしてないのでまあいいか
マイフレンチフィルムフェスティバルでみた「そんなの気にしない」でアデル・エグザルホプロスがLCCの添乗員で「このままやっていきたいんすけど」「いやダメ、一定期間やったらチームマネージメントとかやらなきゃ契約切る」「うー、仕方ないやります」な女子をやってて、色々面倒だなーうーん、ってなる話なんですけど、ああいう「個人の売り上げ成績」の世界ですごいちまちましたコストカットでなんとかしてる世界なんだよなーLCC。あれ、彼女の日常パートも悪くないけどお仕事パートもっとみたいなと思った映画だったんよね、あと「英語と仏語の2ヶ国語しかできんとLCCが限界だからなー」という話が出てくるのをロストフライト見ながらもなんとなく思い出してた。どこもかしこも労働者に求められるスキルが増え続ける、しんどー
ロスト・フライト、原題がplaneなんですけど、本当にplaneって映画だったので感心しちゃった。思いのほか真面目に、そっけない映画。あの娘パートがなければジャンル映画に分類しづらくなるくらい「仕事です仕事」って感じの飛行機映画。LCCの現実ー、というとこから始まってるのが妙に生々しいんだよなー。クルーや乗客の出身のバラける理由もそこと繋がってたりしてね。ひたすらに無駄を削ぎながら決して「仕事の流れ」に時間を割くことを厭わない、話運びに魅力のある映画だった。
アジア系の俳優の使い方も雑に理想化されたアジア(そのぶんロマンティックではある)なザ・クリエイターよりもだいぶ面白い気がした。アン・ヨーソンよかったな、責任感の体現者。
武装集団のコテコテさは厳しい一方、じゃあそこにぶつけるのは何かというところ、ジェームズ・ガンがスースカ(他はあんまりだけど、あれだけは好き)でやってたことにも似ているように思う。とはいえわかりやすくジンゴイスティックではないとこがタチが悪いと言えなくもないかな…とも思う。面白かったと面白いから困るんよー、のシーソー。
しかしやはり「圧倒的暴力」で上回ったもんがちの表象のえげつなさ含め、ありえなさをありえさせるプラグマティズムー、って思ってその辺も私は好きです。
昨夜見た『WEEKEND ウィークエンド』、相手が「特定のひとり」じゃない状態、まだ他人同士のときじゃないと言えない本当のことってあるよね、って話なのがなんかよかった。特に身体的に結びついた親密な一夜を過ごしたからの気安さで、それでも「他人」だから、近い人には言えない感情をぶつけられる。差別されればブチ切れるし堂々と自由に振る舞っている風のグレンは「友達といると窒息しそうになる」状態で本当はいっぱいいっぱいなのを明かせるし、物腰柔らかなラッセルでも「結婚だって反抗だよ!」と言い返せる。そういう「始まる前」だから(そして同時に「始まらない」のもわかっている)関係の気安さと、でも、だから…な感じで揺れるとこがすごく丁寧に映し出されているのね。週末だけでも刻々と変わっていくのよ。最初のセックスは映されてなくて、2回めの行為、3回目の行為で温度というより「湿度」が変わっていく感じの見せ方も好きだったな。
繰り返される「何かに映る」自分(たち)の姿というモチーフとか、編集の切れ味とか(90分台で収める美徳。アンドリュー・ヘイも編集自分でやる人なんだな←好きな傾向)被写体との距離の取り方とか(「風景の一部」となっているときと非常に近くからの距離を行き交うことで感情の揺れを映し出す)上手ー!って思いました。
昨夜見た「リタ・モレノ: 私は進み続ける」はお茶目で元気いっぱいで87歳の誕生日パーティでピンヒールでガンガン踊って今もスタジオに自分で運転して行くレジェンドのエネルギッシュな人生のドキュメンタリー、なんだけど、彼女がそういう「自分」になるには70年以上がかかった、とも感じさせるものだった。
「与えられた役柄によって自分がそのように扱われても仕方ないと思ってしまう」「常に原住民(どこであろうが同じ訛!)の娘」というハリウッドにおけるラテン系の扱いの話とかに加えて業界人からの性暴力とかマーロン・ブランドの関係とか自殺未遂とかマジでキツい話題も多い。が、今の彼女が本当に輝いていることがすべてをポジティブに向けてくれるので、こうしたドキュメンタリーが作れるくらいレジェンドの皆さんお元気でいてください、そしてたくさん話してください…って気持ちがまた強まるのだった。先人に敬意を。過去があるから今があるのよ。よいこともわるいこともいつだって過去を知らないといけないのよ。人間忘れすぎるから。
マーロン・ブランドとの関係がどう考えてもtoxicなものだったのは間違いないんだけど、彼の影響を受けて政治運動や自己主張をし始めたことをポジティブに伝えてるの好きだったな。男(女)の影響で何が悪いって思ってるよ私は
勝手がわからない